2022.11.08 15:00
写真:Press Association/アフロ
2022.11.08 15:00
11月1日にテキサス州ヒューストンで撃たれ、亡くなったミーゴスのテイクオフ。ミーゴスはアトランタ出身のヒップホップトリオで、ヒップホップのサウンドを変えたと言われるほどの影響力を持ったグループである。クエイヴォ、オフセット、そしてテイクオフの3人からなるミーゴスは、今までに2部門でグラミー賞にノミネートされており、2010年代で最もポップカルチャーに影響を及ぼしたグループのひとつと言っても過言ではないだろう。血縁関係にある3人のメンバーから繰り出されるフロウとアドリブは多くのフォロワーを生み出した。そんなテイクオフのトリビュートとして、ミーゴスの功績、そしてテイクオフのヴァースが特に光っているヴァースを紹介したい。
ヒップホップサウンドのトレンドの中心地であるアトランタで2008年に結成された彼らにとってブレイクスルーとなったのが2013年の「Versace」である。「Versace」は近代のラップのフロウの変えた非常に重要な楽曲と言っても過言ではない(後述)。ドレイクも「Versace」のリミックスに参加し、2016年にリリースされた「Bad and Boujee」は全米1位になる。1stアルバム『Culture』は全米1位を獲得し、グラミー賞にもノミネートされた。『Culture』に収録された「T-Shirt」、そして全米1位を獲得した2ndアルバム『Culture II』に収録された「Motorsport」「Stir Fry」「Walk It, Talk It」はビルボードトップ10入りをした。
影響はケンドリック・ラマーからアリアナ・グランデまで
ミーゴス、そのなかでも特にテイクオフの功績としては三連符のラップフロウを流行らせたことであろう。今ではJ. コールのような硬派なラッパーからアリアナ・グランデのようなポップスターまでが使用している三連符ラップであるが、特に「Versace」は近代のヒップホップにおけるフロウを変えた楽曲と言える。緩急をつけた三連符のラップ・フロウは後に「ミーゴス・フロウ」や「Versaceフロウ」とも呼ばれるようになり、2010年代にはあまりにも定番になりすぎてスヌープ・ドッグが「今はみんな同じようにラップしようとしている。ミーゴスかフューチャーが作ったのかはわからないが、全員同じように聞こえる」とコメントしていたほどだ。
三連符のフロウでラップをしたのはミーゴスが初ではなく、以前からスリー・6・マフィアや8 Ball & MJGなどのメンフィスのグループが三連符ラップを頻繁に披露していた。しかし、トラップのハイハットと連動し、エネルギーを溜めて一気に解放をするような三連符はミーゴスのシグネチャー・スタイルとして現代に広まったと言えるだろう。ミーゴスの一つ前の世代とも言えるグッチ・メインやヤング・ジーズィーのようなトラップは、大きくリズムを取り、ダイナミックに揺らすようなフロウが印象的であったが、ミーゴスのフロウはそれまでのアトランタのラップとは全く違うスタイルであった。ケンドリック・ラマーが2017年にリリースした『DAMN.』に収録されている「DNA.」でも、ビートスイッチ直後の最も盛り上がるパート、そして最新作『Mr. Morale & The Big Steppers』のシングル「N95」でも2ndヴァース(1:10〜)と3rdヴァース(2:03〜)から三連符が頻繁に使用されている。
ファッションに与えた影響
ミーゴスの功績は三連符のフロウを流行らせただけではない。彼らのラグジュアリーブランドを纏ったファッションは、多くのラッパーに影響を及ぼし、ヒップホップファッションのイメージを変えた。もちろんミーゴス以前からハイブランドについてラップするラッパーは多かったが、特にミーゴスは楽曲「Versace」をヒップホップコミュニティに広めたように、ファッションアイコンとしての存在感も大きかった。ルイヴィトン、プラダ、カルバン・クラインなどのデザイナーズ・ブランドを着こなし、ラッパーのパブリック・イメージを変えたとも言えるだろう。BET Networkが公開している下記の動画では、いかにミーゴスがファッションアイコンとして影響力を持っていたかがわかる。
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