2022.10.03 17:00
2022.10.03 17:00
改編された台詞から伝わる、作品が大切にしたいテーマ
初演・再演でローラを演じた三浦春馬のこの役への思い入れはよく知られていただけに、新たにローラを演じるには相当な覚悟が必要だったに違いない。そして再演への葛藤は、作品内の「プライス&サン」のように“家族”も同様だったカンパニー全員が感じていたことだろう。それでも前を向き、作品の素晴らしさとメッセージを届け続ける、その選択には拍手を送りたい。初日に向けて公開された演出のジェリー・ミッチェルからのコメントは、下記のとおりだ。
3回目のキンキーブーツと共にまた東京に戻ってくることができて嬉しいです。
徹平、ソニン、成美、勝矢、あらた、そして今回は優が率いるカンパニーのステージを見てとても興奮しています。
徹平演じるチャーリー・プライスとそれぞれの登場人物の関係性がキンキーブーツのストーリーの中で完成されていて、全てのエンジェルスとファクトリーワーカーがこの作品に魔法をかけています。
そして城田優は美しく、背が高く、ローラとしてとても感動的な存在です。彼の歌声は一流で、そして素晴らしい俳優でもあります。彼のローラを日本の皆様に紹介できることを楽しみにしています。改めてまたこの東京で、特に私たちが一緒に耐え忍んだこの2年間の後に、皆様をこの作品で元気づけることができて(=Raise everybody up)とても嬉しいです。
愛と共にみんなで前に進みましょう。素晴らしい公演になりますように。
舞台は、一度たりと同じものは再現できない“生き物”。今回の再演はまだ幕が開いたばかり、新たなローラを迎えた“新生・日本版『キンキーブーツ』”は、これからさらなる進化を遂げていくはずだ。
そうそう、進化と言えば。今回の再演では、台詞にもアップデートが行われている。顕著なのは、「Ladies、Gentlemen〜」から始まる、舞台上から客席へ問いかけを行う作品の中でも重要な台詞。この部分に今回、「they/them」というノンバイナリ(性自認・正表現に男性・女性といった枠組みを当てはめないジェンダーアイデンティティを持つ)の人々を表す代名詞が使われているのだ。
『キンキーブーツ』という作品が、何を大切にしているか、何を伝えたいか。この台詞変更ひとつとっても、よくわかるエピソードと言えるだろう。多くの人に愛と、笑顔と、勇気を与えてくれる作品が再び日本で観られる喜びを、まずは噛み締めようではないか。