2022.10.24 19:00
2022.10.24 19:00
4thアルバム『glow』を引っ提げて全国5都市で開催された、「Inori Minase LIVE TOUR 2022 glow」。「より自然体の自分らしさを表現したい」という思い、「輝き」や「日常の小さな宝物を集めた光」という意味を込めて名付けられたタイトルなど、アルバムの軸となるメンタリティが健やかに発揮されたライブだった。本レポートではセミファイナルとなる横浜アリーナ公演の模様をお届けする。
オープニングムービーとともにバンドメンバーがステージへ現れる。アルバムの幕開けともなる「sunrise glow (overture)」の演奏を経て、ステージ中央の高位置に設けられた円形のセットの上に、チェックのセットアップに二つ結びでシルクハット姿の水瀬が登場。「僕らだけの鼓動」でライブの幕を開けた。時計やリボン、星、カメラフィルムなど様々なモチーフで彩られた舞台上は、ファンタジックでありながらどこかリアリティも帯びる。『glow』同様に彼女の内面からあふれる世界を味わうようだ。
観客と目を合わせたり手を振ったりとコミュニケーションを取りながら「Catch the Rainbow!」など2曲を可憐に届けると、無観客公演を含め3度目の横浜アリーナ公演を迎えられた喜びや、「皆さんが作ってくれる景色も含めてライブだと感じるとても素敵な光景をありがとうございます」と感謝を語る。テンポのいい真摯で快活なトークに、ちょこちょこと彼女流のユニークな言い回しが挟み込まれるのも小気味よい。衣装は彼女の意見をもとに衣装スタッフが手掛けたものとのことで、「私生活ではこんな上級者なお洋服着られないけど、この服を着ているときは“自分ってもしかしてイケイケ?”と思えるので、衣装の力ってすごい」とはにかんだ。
アコギとウッドベースで異国情緒あふれるサウンドを醸す「Wonder Caravan!」で颯爽と楽曲の世界へ連れ出すと、「風色Letter」ではデスクの前の椅子に腰かけ、穏やかに語らうような歌を響かせる。楽曲になぞらえて手紙をポストに入れると、登場したセットに戻り姿を消した。ミュージカルのような演出は、観客を『glow』の世界のより奥深くへといざなった。
バンドメンバー紹介の後、アップスタイルの水瀬が白いオフショルダーのトップスと紅白のボーダースカートに着替えてステージに帰還。ポップかつ意志の強さを感じさせる「We Are The Music」、ジャズテイストを盛り込んだシティポップナンバー「Melty night」と、ナチュラルな歌唱で楽曲のムードを引き立てる。その後のMCでは楽譜が読めない、地理に疎いなどの弱点を隠さず、「空気が読めたらなんとかなります!」「でもこんな大人にならないで、学生の皆さんはお勉強頑張ってください」と笑いに昇華。この虚勢を張らない姿勢も、彼女が愛されている所以だろう。
「夏の約束」と「八月のスーベニア」で終わりゆく夏をセンチメンタルかつエモーショナルに届け、夏のきらめきとロマンを優美に描くと、暗転した会場には「水瀬いのり MELODY FLAG出張版」と題し、文化放送でのレギュラー番組を模したムービーが流れる。「いのりお姉さんがズバリ解決!お悩み相談室」のコーナーで、水瀬はRN・佐倉綾音おじさんこと佐倉綾音、RN・むぎまるのママこと大西沙織からのお悩みに回答。
ふざけ倒す佐倉のお便りには一つひとつ的確かつ辛辣なツッコミを淡々と入れ、大西の「30歳になる自分へのちょっといいプレゼントには何を買ったらいいか」という質問には自身の二十歳を祝って背伸びしてブランドのバッグを買ったエピソードを交えながら「車と言いたいところだけど、むぎまるのママさんは免許を持っていなかった気がする……。自分をねぎらうボディケア用品をご購入されてみてはいかがでしょうか」とアドバイス。両者との親交の深さを感じさせるひとときだった。
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