関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第6回
タランティーノに謝りたくなった『イングロリアス・バスターズ』
2022.10.16 12:00
2022.10.16 12:00
もしもブラッド・ピットの人生を歩めるなら
『イングロリアス・バスターズ』関連で少しブラピの話をしますが、彼ってタランティーノ作品も2作に出ているし、他にもさまざまな映画に出ているけど、元々(演技が)うまいのに顔が抜群に良いじゃないですか。なので、彼のハンサムが邪魔をして、演技力が評価されてこなかった気がするんですよ。しかし、やはり作品を観直してみると、素晴らしい演技力なんです。ロバート・デニーロにも負けないくらい。『セブン』もうまかったですし、『スナッチ』や『バーン・アフター・リーディング』ではバカな役をやっていて。自分の顔を理解した上で、逆に軽薄な白人像を表現することができる。『ファイト・クラブ』ではかなりセクシーで、エドワード・ノートンも名優だから、とにかく2人の演技の掛け合いがすごかった。
もしもブラピになったら彼の人生を辿るわけじゃないですか。彼になったら『イングロリアス・バスターズ』でタランティーノ監督とどういう役作りをするか2人で話し合いたいですね。千葉真一さんに『キル・ビル』の撮影時のことを以前お聞きしたことがありますが、タランティーノ監督は、絶対人前では俳優さんに対して色々言わないらしいんですよ。加えてあの人映画オタクだから資料としての映画をいっぱい持っていて、俳優に「これ観ておいてください」って配って、その後は個別に呼んで「こうしてほしい、これはやりにくいですか?」ってものすごく丁寧にコミュニケーションをとるらしい。現場で怒鳴ることもないとか。ものすごく神経質な人のようです。千葉さんはタランティーノから何か言われるもなく、とにかく「千葉さん千葉さん!」って好かれていたらしいです。だって、タランティーノにとって、千葉さんはスターですからね。そして千葉さんは監督に頼まれて現場に入る前からルーシー・リューに剣の指導をしていたようです。千葉さん、その時のことを「いやあ、ハリウッドスターはすごいよ」って言っていました。剣の流派が違うから、違うことを教えていると「先生、なんで私にはあれを教えてくれないの」と聞かれるから、「いや、あなたは違う流派だ」と答えるとルーシー・リューも引かない。「先生、私もあの流派を教わりたいんですけど」って、バチバチだったらしいです。向こうは役者の入れ込み方が違うって話していましたね。
そういう空気感の現場に、ブラピとして参加したい。いや、もう自分でもいい。偽・千葉真一役で出たいです(笑)
タランティーノは次の作品が最後と言われていますが、もったいないですよね。コンサートみたいにアンコールがほしい、あと2作品くらい。だって、映画を途中でワンシーンだけ切り取って、1分2分観るだけで「タランティーノの映画だ」とわかるんですよ。そんな監督、なかなか珍しい。ちなみに『イングロリアス・バスターズ』に関しては僕が監督した『騒音』という映画で小話がありまして。5人のダメなおじさんたちがいつも奥さんに叱られていて、その叱られた辛みが実はものすごい免疫力になっていて地底人と戦える、という話なんです。その映画で、『イングロリアス・バスターズ』でブラピがやっていたスピーチのカットをオマージュしたのですが、自分の映画を観たら全然俳優が違うから同じに見えないんですよね。なので、タランティーノには僕も影響を受けてきました。どの作品もよかった。
彼の最終監督作品には、ぜひウィレム・デフォーに出てほしい。大好きな俳優だから。ブラピも、もちろん出てほしい。あとジェイソン・ステイサムにも出てほしいですね。