9月23日公開、海辺の町で出会う「喪失」を抱えた男女の物語
福地桃子、岡山天音、井樫彩が過ごした濃密な瞬間、3人で振り返る映画『あの娘は知らない』
2022.09.24 12:00
2022.09.24 12:00
福地桃子が主演、岡山天音が共演する映画『あの娘は知らない』が、9月23日に公開された。本作は、海辺の町でひっそりと旅館を営む中島奈々(福地)と、喪った恋人の足跡を辿り、その町に行き着いた青年・藤井俊太郎(岡山)の新たな紐帯と希望を描く物語。映画『真っ赤な星』の井樫彩が、脚本・監督を手掛けたオリジナル作品だ。
取材当日、半年以上ぶりに顔を合わせたという福地、岡山、井樫監督は「お久しぶりです。元気でした?」「元気でした」と懐かしそうに頬を緩める。自分の想いを言葉にするのが苦手だという福地を、井樫監督は姉のように、また岡山は兄のように柔らかな瞳で見守る中、ゆったりと行われたインタビュー。そこはかとなく似た雰囲気を持つ3人に、撮影を振り返ってもらった。
これまで経験のないことばかりでした(福地)
──まずは完成した映像をご覧になった感想をお願いします。
福地 この作品は、監督と初めてお会いしたときから映画ができるまでの時間を一緒に歩んできました。撮影が一つひとつ終わっていったときにも不思議な気持ちになりましたし、鑑賞前は今までに経験したことのない、「ちょっと観るのが怖いな」という気持ちもあって。でも、楽しい気持ちや嬉しい気持ちももちろんあったので、いろいろな感情を抱きながら映像を観ました。(試写会などで鑑賞してくださった方から)「良かったよ」「救われた」といった言葉をいただいたときに、自分にもできることがあったのかなと感じて、たくさんの人に観てもらいたいなと思いました。
──ふだんと違う感情があったというのは、携わった時間の長さや濃さによるものでしょうか?
福地 そう思います。まず初めに監督とお話をして、そこから脚本ができていく、ということも初めてでした。監督にちょっとずつ自分のことを話していく中で、何かを感じてもらったり、それを言葉で伝えてもらったり。これまでに経験のないことばかりでした。
──岡山さんはいかがでしたか?
岡山 最初の感想としては、「ああ、こんな感じになってるんだ」って。そういった意外性が、他の作品よりも大きかった気がしますね。僕は福地さんと2人の場面がほとんどでしたし、作品の内容的にもすごい濃く、その瞬間、瞬間に没入しながら撮影していたので、本当に自分の人生を場面場面で切り取られているような感覚があったんです。みなさんも、もしそれを試写で観たら不思議な気持ちになると思うんですけど、まさにそういう感じというか。自分のお芝居を振り返ってみても、コントロール内で取り組んでいた割合が少なかったですね。俯瞰で見てデザインしたお芝居というよりも、その瞬間に強く居た。だから、映像としてすべてが繋がったものを観たときには不思議な気がしましたし、2人ですごい喋ってるなと思いました(笑)。
──たしかに、すごくたくさん喋っていました(笑)。井樫監督は映像をご覧になって、いかがでしたか?
井樫 難しい質問ですね。自分の作品だと、なかなか感想って……。
──では、質問を変えますね。今回はオリジナル作品ということで、このテーマを描こうと思われたきっかけをお願いします。
井樫 そうですねぇ……うーん……。
岡山 いやもう今日、何も答えないんですか?(笑)
井樫 違う違う違う(笑)。脚本を書く前に、福地さんと結構お話ししたんですよ。パーソナルな部分というか、「この人はどういう人なんだろう」みたいな質問をしていったんですけど、福地さんは周りの人の話ばかりするんです。家族や友人の話ばかりで、全然、本人が出てこない。そこでちょっと意地悪ですけど、今回はわざと誰も身内がいない“一人ぼっち”という状況に置くことにしました。とはいえ、作品を作っていく中で自分に近いものがなければ距離が生まれてしまうので、福地さんが持っているものと、私が実社会で感じていることを混ぜ合わせて。そこから、脚本を考え始めた感じです。
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