2022.09.14 12:00
2022.09.14 12:00
松井さんが“恋愛映画”としてのポテンシャルを上げてくれた
──今回、監督からの印象的だった演出はありましたか?
飛坂の持っているオラオラ感みたいなものが、僕には出せる自信がなかったんです。周りから見たら、「十分持ってますよ」って言われる可能性もありますけど(笑)。「ここはもうちょっとオラッとしている部分を出してね」というリクエストについては僕がジャッジできなかったので、「そこはお願いします」と監督にお伝えして、演出していただきました。
──オラオラ感を引き出してもらった。
具体的には、もっと冷たくするとか、突き放すとかっていうことですね。芝居の性質上、冷たくしたり、突き放したりっていうのは、ひとつの逃げなんじゃないかと僕は思っていて。芝居は相手と関わって生まれるものが多いので、突き放すことはそれと相反する行為だったりもして、なかなか自分ではそっちに行かないのかなと。だから、その辺りをコントロールしてもらいました。
──アイコを演じた松井さんの印象についても聞かせてください。
松井さんは、この映画の“恋愛映画”としてのポテンシャルをかなり上げたと思っています。もともと恋愛映画でもあるとはいえ、アイコのコンプレックスが主題になった作品で、台本を読んだときにも“そのための恋愛”として描かれているように感じました。でも、松井さんが演じたことで彼女を応援したくなるし、彼女が笑ってくれたらすごく嬉しいし……そういった恋愛映画に膨らんだというか。松井さんの芝居に対してのアプローチが、しっかりコントロールされているなと思っていて。ここでアイコは笑わないだろう、笑ってもこのくらいだろう、といった表現から生まれる緊張感が漂っているように感じたんですね。それが、彼女を応援したくなる一因になっているなと思いました。
──松井さんと対峙することで、ご自身の中にはなかった新たな感情が生まれるようなことも?
こういう距離の近い映画ですから、それはたくさん……というか、全瞬間あったと思いますね。家では想像し得ない、準備では想像し得ないことが、現場ではたくさんありました。
──なかでも、印象的だった撮影は?
2人でボートに乗っているシーンですかね。カメラもついて来られないですから、本当に2人きりの空間になったのは印象的でした。
──具体的に、どう撮影されたんですか?
僕がボートを漕いでいて、それを遠くからカメラで撮影する。画面上でも、(指で1cmくらいを示すジェスチャーをしつつ)このくらいのちっちゃい2人がゆっくり横切っていくみたいな(笑)。でも、そういう時間って、あるようでなかなかないんです。基本的に、撮影現場には絶対に誰かいるので。
──たしかにそうですよね。松井さんとはどんなお話を?
いや、大した話はしてないと思います。松井さん自身というよりも、役同士の関わりのほうが深まっている感じがしますよね。
──松井さんとして、というよりは、アイコとして見ているわけですね。その方が、ご自身の中で自然でいられる?
そうかもしれないです。いろいろ知っちゃうと、なんか恥ずかしくなっちゃいますもん。そう考えると、友達の俳優とかと恋愛映画をやるのは嫌ですね(笑)。「お前何言ってんの?」という気分になっちゃうなって、今ふと思いました。
──でも、その作品も観てみたいです(笑)。ふだんから、お相手の方と積極的にコミュニケーションを取るタイプではないですか?
いや、取りますよ。その場が楽しく過ごせるくらいの会話ってありますよね。その方が居心地がいいし、近い距離にいるのに何も喋らないって逆に辛いじゃないですか(笑)。だから自分がリラックスできる程度には話します。もちろん、その中でものすごく仲良くなることもありますよ、男女問わず。
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