2022.09.14 12:00
2022.09.14 12:00
島本理生の恋愛小説を映画化した『よだかの片想い』が9月16日より公開される。顔にアザのある主人公・アイコが、幼い頃のトラウマから恋や遊びに消極的な日々を過ごすなか、映画監督の飛坂に出会い初めて恋をする。自分と距離を置くアイコと、まっすぐ心に入ってくる飛坂。物語では、不器用ながらも距離を縮めていく2人の恋愛模様とともに、アイコが人生と向き合う様を繊細に描き出す。
本作の公開を間近に控え、主人公・アイコ役の松井玲奈と相手役の中島歩に話を聞いた。まずは劇中でアイコの人生を変える存在、若き映画監督の飛坂を演じる中島歩のインタビューをお届けする。
まさに“自然体”という言葉がよく似合う中島。その空気感、仕草は時折まるで映画の飛坂がそのまま飛び出てきたかと錯覚するほどだが、話せば話すほど底の見えない魅力に惹き込まれることに気付く。そんな彼に映画制作の裏側について聞くと、ブレない芝居との向き合い方が見えてきた。
──最初に台本を読んだときの印象を教えてください。
とてもモダンなモチーフだなと思いました。それは、人の見た目をテーマにしていることだったり、結末の仕方だったりっていうことに関してですね。
──飛坂という役についてはどう思いましたか?
冷たいヤツだなと思いました。
──ご自身とは遠い役柄?
それはどうでしょうね(笑)。自分が冷たいと僕は思っていないですけど、人がどう感じるかはわからないので。ただ、飛坂は仕事も含めてすごく忙しい人なんだなと。それくらい忙しかったら、自分もこうなるのかな、とは思いましたけどね。
──飛坂になるために、どんなアプローチをされましたか?
もともと、僕には“役になる”という感覚があまりなくて。“役を自分のものにしていく”というアプローチをしています。飛坂に関していえば、どうやって彼女に愛を伝えて、彼女の愛を獲得できるかっていうことですよね。
──その感情を、一番の芯にして。
そうですね。彼の表現方法はわりと言葉で整理されていて、彼女への思いをちゃんと伝える人だったんです。でも、言葉が整然としているほど、意外とその言葉が薄く見えちゃったりもするので、そうならないように気をつけました。
──役者を始められた当初から、“役を自分のものにしていく”というアプローチをされているんですか?
言葉にできるようになったのは最近ですけど、感覚的には初めからそういう表現に惹かれていたと思います。国内外の映画を観ていても、セリフとかを通してその人のパーソナリティが見える俳優に魅力を感じていて。結局、僕は劇映画とドキュメンタリーはそれほど変わらないものだと思っているので、僕自身のアイデンティティとか、パーソナリティとか、そこで感じていることとかをちゃんと表現できるように、とはいつも思っています。
──今回は制作発表時に「それぞれの恋愛観を持ち寄った」とコメントされていましたが、どんなふうに作品が作られたのでしょうか。
なんて言えばいいんだろうなぁ……それぞれの恋愛観っていうのは、監督と松井さんと僕のことなんですけど、セリフはセリフであるわけですね。それを自分だったらどう伝えるか。たとえば「好きです」という言葉があるとしても、笑いながら言う人もいるだろうし、目を合わせて言う人もいるだろうし、向こうを見ながら言う人もいるだろうし。そういうところに、それぞれの感性が出るんじゃないですかね。
──作品全体が、現場で作られていった感覚というか。
やっぱり映画は現場で作られていくものですし、俳優がやることについては特にそう思います。僕も準備はたくさんするんですけど、現場で起きること、相手との芝居を通して生まれること、しかも、そこでは何でも起こり得るんだっていうことを一番大事にしています。
──ご自身の感情を乗せてお芝居されているんですね。
それは、この作品に限らずいつもしているつもりです。その上で、役からはみ出ちゃったときに、演出というものがあって。監督と、お相手の方と、もっと違う表現はないかと探っていくのが現場だと思っています。
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