2022.09.15 12:00
2022.09.15 12:00
視点を変えればコンプレックスも長所になる
──コンプレックスに対して、松井さんどう捉えていますか?
『よだかの片想い』を読んだ時に発見だったのは、コンプレックスって自ら気づくものではなく、人に指摘されて初めて認識するものだと思ったんです。アイコは同級生や先生に「顔にアザがあって可哀想」と言われて「私は人と違うんだ、変なんだ」と悩んでしまう。思い返すと、私も人から指摘されたことで、コンプレックスになったことが多くて……私は自分の左目がすごく嫌いでした。
──え、どうして?
元々すごく奥二重だったので「キツい印象に見えて怖い」と言われていて。そこから自分でも気になってしまい、前髪で隠すようになったんです。でも、お芝居の世界に入って「左右で表情が違うのは素敵だね」と言ってもらえた瞬間に、一つの顔で二つの表情が見せられるのってお得だなと思ったんですよ。視点をちょっと変えれば、コンプレックスって自分の長所にもなり得るんだなと気づいて、今はすごく前向きに考えられるようになりました。
──アイコの人生を映画にしたいと飛坂が言った時、「あなたは私のことを可哀想に撮ったりとか、感動的に作ったりしない」と言うシーンがありました。これまでアイコは周りから勝手なイメージを持たれていたことに、悲しい思いをしていたわけですよね。自分はそう思っていないのに、周囲から一方的な見られ方をする。それって、芸能界でもよくあることだと思うんです。
そうですね。アイコって芯の強さは持ちつつも、「私はアザがあって可哀想そう、と思われてる。じゃあ、そういう人でいなきゃいけないのかな?」と型にハマりに行こうとしてしまう一面があって。私も周りから「玲奈ちゃんってこういう人だよね」と言われると、そのイメージにハマりに行かなきゃいけないのかな、と思うことがあるんです。
──「松井さんって真面目でおしとやかだよね」みたいな。
そうです。それが義務になると苦しくなってしまう。なので、最近は応援してくれてる方たちに「私も同じ人間なんだよ」と言うようにしています。
──僕も含めて、一般の人はそんなことをわざわざ言わないですからね。
悪い意味じゃないんですけど、表に出てる人って、どこか人だと思われてない所があるんです。電車に乗っただけで「電車に乗るんですか?」「いやいや生活があるから乗るよ」みたいな。「コンビニでサンドウィッチを買いました」って言うと、「え! コンビニに行くんですか?」と驚かれることもあって(笑)。
──ただ、そう思う人の気持ちもわかるんですよ。芸能人は非日常の存在って印象がありますから。
「同じ世界線を生きてるんです、私は」みたいな(笑)。そこのズレが少しでもなくなると嬉しいのにな、とは思いますね。
──芸能界に入ったら一般人として見られなくなった、と感じたのはいつ頃ですか?
17歳で芸能のお仕事を始めて、18歳ぐらいから「世間のイメージと本当の自分にギャップがあるな」と感じるようになりました。しかも、こうやって素直に自分の言葉で喋れるようになったのは、ここ5年ぐらいなんです。でもなかなか変わらないし、難しいことだなとは思っていますけど。
──普通の“イチ人間”として見てほしいと。
とはいえ憧れられる存在であることも必要だし、でも親近感も持ってほしい。要するに欲張りなんです。キラキラしていたい気持ちもあるけど、みんなと同じように見てほしい。それはそれで欲張りで、押し付けがましいですね(笑)。
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