イナズマロック フェス 2022 特集 第1回
西川貴教ロングインタビュー【前編】──イナズマの進化がもたらした変化、滋賀に築き上げたもの
2022.09.10 18:00
2022.09.10 18:00
昨年5月にソロプロジェクト「T.M.Revolution」のデビュー25周年を迎え、今年8月には本名名義でのセカンドアルバム『SINGularity II -過形成のprotoCOL-』をリリース、同作を引っ提げたライブツアーを9月7日に完走した西川貴教。
そんな彼が次に登る山は、自身が発起人として2009年より主催する『イナズマロック フェス 2022』だ。ヴォーカリストとしてのみならず、俳優、声優、地上波TV番組MCなど、その活躍は文字通り多岐に渡り、日本を代表するエンターテイナーとしてのポジションを確固たるものにする西川だが、2008年より地元・滋賀の「ふるさと観光大使」の顔も併せ持っていることは多くの人が知るところだろう。
その就任翌年に旗を揚げた「イナズマ」は、琵琶湖の環境保全と地域振興をテーマに、年を追うごとにその唯一無二性を研ぎ澄ましながら発展してきた。西川自身が当初「どこからもフォローされなかった」と語るイベントが、いかにして現在のような全国区のフェスまで上り詰めたのか。
その答えを、西川の生の声を詰め込んだ当インタビューから紐解いてほしい。(インタビュー/庄村聡泰)
究極のごった煮を目指している
──「イナズマロック フェス」は2009年からですよね。僕も[Alexandros]時代、ちょうどメジャーデビューした2015年に出演させていただきまして。
立ち上げてやっと5年過ぎたってときですね。他のいわゆるロックフェスで考えると、ある程度のメンツはここでも会ってるしここでも会ってる、また来週みたいな感じだけど、うちは良くも悪くもごった煮。しかも毎年ごった煮加減が増してて、もう味が分からないフェス(笑)。その究極を目指していこうと僕的にはもう振り切ってて。
もうどこのフェスとも交わらない、どこのメンツとも被らない独自性をある種売りにしたフェスになっている。出てもらったあたりから、コロナ禍を経て、まただいぶ味変しちゃったけど(笑)。
──元々は滋賀県を元気にというところから始まって、立ち上げの時点から「T.M.Revolutionが」「西川貴教が」などではなく。そういった意味では初心はブレてない、戦い方は変わってない、それがイナズマの素敵なところですよね。
アーティスト主導型って言われてるようなフェスでは、近年の走りに近いイベントなんじゃないかな。人知れず始めたフェスで、場所も滋賀県。そういった催し物がない地域だったので、我々も模索しながらで。認知していただけるものになるまでに多少時間はかかったし、ある意味全国区になったきっかけが、どっちかというとネガティブなニュースだったので。落雷でフェス中止っていう。イナズマロック フェスって言ってるのに落雷でイベント止まるのかよっていう洒落みたいなのが全国ニュースになって(笑)。
その翌年はDAY2がまるまる飛ぶっていう。そういったニュースでご存知いただけたということもあったのかなと。明るいニュースでお届けしたかったけど、そういった形でも片田舎のイベントが全国の方に認識してもらえたのはすごく大きなことだったと思うし。
──でもトラブルの回収の仕方がとてもエンターテイニングでしたよね?2016年をリカバーするような。
残り3組が僕を含めて、UVERworldとMAN WITH A MISSIONで。たまたま近いし話しやすいってこともあったけど、それぞれのアーティストにリカバリーしたいという気持ちがあって。中途半端にやるよりは同じ場所でみんなに返したい、となって本来リハーサルをやる開催前日をその3組だけのライブの日にした。だから1年の中断を挟んで再開します、っていう。非常にドラマチックでしたね。
──中止じゃなくセーブだったんだと。
そう。長い中断だったんだと。ちょっと長すぎる中断でしたけど(笑)。
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