関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第1回
ロイド・カウフマン監督と『悪魔の毒々モンスター』の思い出
2022.07.08 12:00
2022.07.08 12:00
関根勤がマニアックな部類にあたるお気に入り作品を紹介する連載『関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ!』。記念すべき第1回目は、本人も続編に出演したという思い入れの強い1作、ロイド・カウフマン×マイケル・ハーツ監督の『悪魔の毒々モンスター』だ。1984年に公開されて以来カルト的な人気を誇る本作は、いじめられっ子のひ弱な主人公メルヴィンが、ある事をきっかけに超人的な力を持つ毒々モンスター(通称トキシー)となり、街に蔓延る悪を一掃していくという物語。トロマ・エンターテイメントにおける最大のヒット作であり、その後も続編が作られただけでなくミュージカルや子供向けのテレビシリーズ、さらにはマーベルにてコミックスも製作されたという愛されっぷり。しかも、なんと米レジェンダリー・エンタテインメントがメルヴィン役にピーター・ディンクレイジを迎えたリブート作を現在製作中である。
公開当時、日本で布教活動もしていたというお気に入りの1作を続編に出演した時の思い出と共に語っていただいた。
第1回『悪魔の毒々モンスター』
連載の最初に紹介する作品として、まずは『悪魔の毒々モンスター』を選びたかったんですよ。本作を僕が観に行ったのは、30歳くらいの時かな。めっちゃくちゃ面白くって。とにかく、メルヴィンって青年が本当に情けない顔しているんですよ。アメリカの中で言う、いじめられやすいキャラ。そのメルヴィンがね、本当にくっだらないイジメに遭うわけです。そんな彼があることでモンスターになって、“悪”を嗅ぎつけるようになる。そこで、悪漢から助けた盲目のヒロインと仲良くなってね。本作は登場する女性もみんな綺麗なのが魅力的でした。
なんでこの作品が面白いかというとで、悪い奴をやっつけるやり方が実に細かいから。あらゆる方法でギャグを入れながら、メルヴィンが悪と対峙していくんです。そして最後はハッピーエンド。くだらないのに、恋愛要素やグロテスクでエロティックな部分もあって、僕の大好きな作品です。とにかく、メルヴィンの情けなさがすごい。その情けない彼が、強いモンスターになる。このギャップがいいんですよね。
この作品には後日談がありましてね。当時僕がレギュラーでやっていたニッポン放送のラジオ番組『TOKYOベストヒット』で絶賛していたんですよ。「最高だ! 最高だ!」って。その後、監督のカウフマンさんがファンタスティック映画祭に出席するために来日しました。当時は日本がアメリカの次に映画界で市場価値が高くて、日本の興行収入の存在が大きかった。そしてカウフマンさんはイェール大学出身ということもあり、実はかなりのビジネスマンで頭が良い。だから彼は、そういった当時のマーケットを考えた結果「続編を日本で撮りたい」と考えて、「日本のキャストを紹介してくれ」と映画祭を開催していたニッポン放送に頼みました。
しかし、ニッポン放送は困ったわけですよ。「あんな映画に、日本の俳優で出演したがる人はいるのか」って。そこで誰かが「いや、関根勤がとにかく褒めていましたよ」と言う。「じゃ関根勤に聞いてみよう」ということで、僕のところに話が来たんですよ。「いやもう、出ますよ出ますよ!」って言って、カウフマンさんに会ったら「こういう役があるんだ!」って忍者の役とか、色んな役柄が書かれたイラストを見せてくれました。「どの役やりたい!?」って聞いてくれるんです。「やっぱりうちの映画はみんなやりたい役をやるから、みんな伸び伸びしているんだ」と言うので、僕は「ちょっと待ってください」と彼を制した。「普通の人間が毒々モンスターに遭遇し、びっくりして『わーっ!』ってなる役がやりたいんだ」って言ったら、「わかった! 新しく作る!」と言ってくださって。さらにニッポン放送の中で収録したいということもあり、その結果僕は『悪魔の毒々モンスター 東京へ行く』にニッポン放送のアナウンサー・伊集院勤役として出演したんです。
東京タワーで僕が修学旅行生に「これが東京タワー、333メートルです」とか説明していたら毒々モンスターが近くにやってきて、生徒が悲鳴を上げて逃げる。他所を見ていて気がつかなかった僕はパッと彼を見て「しぇえ〜〜!」みたいな反応をするんです。それから、劇中ことあるごとに遭遇していくわけですが、僕はアメリカの監督だし「なんだその演技」って怒られたらどうしようかと思って前日も寝られませんでした。だけどまあ、第1作目を見ているから「このくらい弾けちゃっていいんじゃないかな」と思って「しぇえ〜〜!」ってやったら、カウフマンさんが「エクセレント!!」って褒めてくれました。
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