2026.02.19 18:00
2026.02.19 18:00
立たせていただいている場所は、自信がないと戦えない
──作品が切れ目なく続けば続くほど、必然的に役づくりのための期間が削られていきます。今、改めて役づくりというものをどう考えているのか聞かせてもらえますか。
僕にとって役づくりの期間がいちばん大切なんです。そこでしっかり役をつくり上げることができれば、現場に入った後も自然と役として生きられる。特に僕は追求したくなる性格なので、凝りはじめるとキリがなくて……。
僕の中でいちばん役づくりにちゃんと時間を設けられたのが、『ひだまり〜』と『あんぱん』でした。この二つは本当にしっかり役に入ることができたなと思っているんですけど、おっしゃる通り2025年に入ってからは準備期間が少ない中でやらなければいけない場面も増えてきて。いかに短い期間の中で役を掘り下げられるかは今後の僕の課題になってくるところだと思います。

──おそらく多くの俳優さんが直面する課題でしょうね。
期間が長ければいいというわけでもないと思うんです。大事なのは、クオリティ。だから瞬発力というか、役を掘り下げるスピードをもっと上げていくことを、特に2026年は意識してやっていきたいです。
──そもそも役づくりをそれだけ大切にするのは、中沢さんがどういう人間だからだと思いますか。
性格として追求しがちなのもあるし、やってないと不安になるからというのもあると思います。でもいちばんは、役づくりの時間が深ければ深いほど、濃い血が通った感じがするから。特に『あんぱん』のときはあれだけ錚々たる方々の中にいたので、ほっとくと飲まれそうになるんです。でも、これだけやってきたんだから大丈夫という自信が、自分を支えてくれました。
もちろん現場でしか生まれないものもあるし、自分の中だけで完結させず、そこをちゃんとキャッチできる余白を持っておくことも大事です。その上で、役づくりをしている時間がいちばんちゃんと役に寄り添えている感じがして、たぶんそれが好きなんだと思います。

──じゃあ、ちょっとここからはお芝居の話から離れて、中沢さん本人のことを聞いていきます。蒼太は夢中になれるものを失ってしまった人間です。今、中沢さんにはお芝居という夢中になれるものがありますが、ご自身の人生を振り返ってみて夢がわからなくてストップしている時期はありましたか。
そこで言うと、僕はずっと夢がない人間だったんですよね。特に学生の頃は授業でなりたいものを調べましょうみたいな課題が出ても、よくわかんないなと思いながら、適当に警察官とか書いてました(笑)。うちはスポーツ一家だったから、なんとなくスポーツ関係の方向に進むのかなとか、それくらいしか考えていなかったです。
それが、高校2年生のときに小栗(旬)さんの『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』というドラマを観て、すごく面白いなと思って。そこから少しずつ役者という仕事に興味を持ちはじめて、今こうしてお仕事にさせてもらってるんですけど、全然表に出る性格でもなかったから、きっと親がいちばんびっくりしていると思います。
──確かご家族のみなさんはわりとスポーツで実績をあげていたんですよね。周りにそういう人がいると、卑屈な思いになることはありませんでしたか。
そうですね。すごい人が身近にいたので、弟に対しても、父に対しても、引け目を感じている部分はありました。家族の中で僕だけ何もない、みたいな。そこは蒼太と重なるかもしれない。

──今はその引け目はもう払拭できましたか。
はい。家族の中でこの世界に飛び込んだのは僕だけですし、いろんな作品をやらせていただいて、人並みに自信はついてきたかなと。
──ああ、よかった。ついてきたんですね。
ついてきました。それに、つかないといけない場面に立たせていただいているという自覚もあるので。
──よかったです。『下剋上球児』の頃から、同世代がいる中でいつもちょっと控えめにされている印象があったから。
『下剋上球児』のときは自信なんて全然なかったです。エースの役をやらせていただいていたんですけど、僕自身は「何がエースだ」みたいな感じだったから(笑)。あの頃は、うん、全然なかったです。
ただ、自信はなかったけど、内に秘めている野望みたいなものはあったと思うので。それが徐々に徐々に出しやすくなったというか、出さないと戦っていけない場所に立たせていただいている感覚が最近はあります。
──間違っていたらごめんなさい。「自信がついてきた」とおっしゃるのも、いつまでも「自分なんて……」みたいなことを言っていたら戦えなくなるから、あえて言葉にしているところはありますか。
それは確実にありますね。特に真ん中を目指していこうとするなら、芯というか、軸のようなものをしっかり育てていかないといけないというのは先輩方を見て感じていました。自分の中でブレない強さをつくっていくためにも、言葉にすることは大事だなと思います。

──では、そんな中沢さんに聞きます。自己評価で構いません。自分にしかない武器があるとして、中沢元紀はどういう役者だと信じて、これからの道を進んでいきたいですか。
そこがきっと役づくりなんだと思います。役づくりにおいてはいちばんでありたい。愛情を持って役をつくっていく作業だけは、同世代はもちろん、先輩方にも負けたくない。そこで戦っていける役者でありたいです。
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