2026.02.10 18:00
2026.02.10 18:00
その姿をはじめて目にした日から、ずっと追いかけていたくなる存在感。古川琴音といざ言葉を交わしてみると、想像していた以上に俳優として熱い想いを秘めていることが分かった。物腰は柔らかだが、映画や舞台作品の魅力について語る彼女の言葉は、しだいに熱を帯びていく。
そんな古川が出演中の舞台が、世界中で愛される『ピーター・パン』と『不思議の国のアリス』 のモデルになったふたりが奇しくも数十年後に出会い、それぞれの半生を語っていく物語を描いた『ピーターとアリス』だ。
台本を読み進めるうち、自分自身の歩んできた時間と向き合うことになったのだという古川。いまの彼女は何を考え、これからどこへ向かおうとしているのだろうか。

自分が大人になったことを実感しました
──『ピーターとアリス』は、『ピーター・パン』と『不思議の国のアリス』の世界が出会う、ファンにとっては夢のような作品ですよね。出演が決まったときの心境はどのようなものでしたか?
それはもう純粋に、ときめきました。
──やっぱり。そうなりますよね。
『ピーター・パン』も『不思議の国のアリス』も子どもの頃から大好きで、この作品ではあのアリスを演じさせていただくことになる。私の中の女の子の部分が騒ぎ出すような感覚がありました。でも実際に台本を手にしてみると、そこに記されているのは私が想像していなかった『ピーター・パン』と『不思議の国のアリス』の世界。このふたつの物語の背景に肉薄していく作品なので、一度読んだだけではうまく掴めませんでした。
でも、ふとこんなことを思いました。自分はどうやってここまで成長し、大人になったのだろうかと。

──というと?
『不思議の国のアリス』のお話に改めて触れてみると、わけが分からなかったんですよ。物語をうまく説明できないというか。でも幼い頃から繰り返し触れてきた物語だから、印象に残っているイメージやモチーフはある。白ウサギとか、マッドハッターとか。
──チェシャ猫とか。
ええ。でもこの断片的なイメージたちは、物語を思い出そうとしたときにうまくつながらないんです。あまりに突飛すぎて。けれども子どもの頃は、これを変だとか、不思議だとか思わずに楽しんでいました。ルイス・キャロルは子どもたちに対して、どんなことを思い、どんなメッセージを込めてこの物語を書いたのか。これまで考えてもみなかったことを考えるようになりました。
──それが古川さん自身のこれまでを振り返る契機にもなったわけですね。
そうなんです。
──たしかに、『不思議の国のアリス』の物語には数えきれないくらい何度も触れていますが、作品に対するイメージはあっても、うまく説明できないかもしれない。幼い頃は無垢だからこそ、あの不思議な世界に没入できたのかもしれませんね。
よくよく考えると、怖いシーンだらけですしね。アリスが自分の涙に溺れちゃうのももちろんですが、道に迷ってしまうシーンでさえすごく怖い。しかもそれが連続します。子どもの頃はなぜかあの不気味な世界観を受け入れられていたけれど、いま改めて振り返ってみると、いくつもの引っ掛かりがある。自分が大人になったことを実感します。
──人生経験によっても、物語の捉え方やシーンの見え方は変わってくるのかもしれませんね。
だと思います。そして『ピーター・パン』に関しても、改めて触れてみると感じるものがありますね。この物語って、大きな寂しさが残るんですよ。
──寂しさとは?
自分が大人になってしまったってことを、強く思い知らされる作品なんですよね。子どもの頃はピーターたちと一緒に冒険に出る感覚があったのですが、いま共感するのは大人たちのほう。そしてこの大人たちにだって、子どもの時代があった。もう二度と、ネバーランドに行くことはできません。そんなことを思うと、すごく寂しい気持ちになるんですよ。
──ああ、たしかに……。
大人である親が『ピーター・パン』を観せてくれたことを思うと、またさらに言いようのない寂しさが込み上げてきます。

──このインタビュー時点ではまだ稽古前ですが、すでに多くの発見があるんですね。
本当に。そうなんですよね。稽古がはじまったらさらにたくさんの発見があるはずで、とても楽しみです。
──しかもこうやってお話を聞いていると、すでに古川さんの中で作品に関する理解が深められ、整理されている印象があります。
え、本当ですか……。自分の中ではまだ探り探りの感覚を、いま持ち合わせている言葉でどうにか表現しているところなんです。ちゃんと伝わっているようなら嬉しいです。
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