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INTERVIEW

映画『楓』劇中歌カバーを経験して語る新たな意欲と制作観

「声は偽れないと気づいた」十明が迎えた変化、歌に秘める“素”の気持ちとは

2025.12.22 18:00

2025.12.22 18:00

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自分の秘密を曲にすることで暴いてほしい

──映画『楓』は登場人物たちの抱える「秘密」が描かれています。十明さんがこれまでテーマにしてきた「変身」とも通じる部分があると思いますか?

普段言えないことを音楽にする、それが自分の秘密なんです。言えない醜い気持ちや、ねじれてしまった気持ちを、秘密としてずっとしまってきました。でも音楽にすることで、それが曲になって、「暴いてほしい」という気持ちにもなるんです。

この映画の秘密とは少し違うかもしれませんが、秘密を抱えることの苦しさや、逆に秘密があることで自分自身が濃くなっていく部分もあると思っていて。誰にも話せないことがあるからこそ、深みが増していく部分があると感じています。

自分の制作でも、言えないことや秘密はすごく大事な要素になっています。優しい人であるために、何でもかんでも話すのではなく、心の内にそっとしまい込むような思いがあってもいいと思うんです。

映画『楓』ファイナル予告映像

──「嘘をつくこと」と「秘密を抱えること」は違う、という話が映画の中でも重要なポイントになっていますね。

『楓』の主人公、涼と亜子の2人も、私も、日々嘘をついて生きているわけではなくて。でも、抱えているものはある。だからこそ、秘密と向き合う時間が生まれたり、言えないことがあるからこそ相手のことを慮ることができたりする。秘密があることがすべてマイナスではないんだと、この映画を観たり、自分と向き合う時間を取ることで、改めて思うことができました。

──スピッツの草野マサムネさんの歌詞は、ミクロからマクロまで飛ばせるような広がりを持っていますよね。十明さん自身もソングライターとして、そのあたりで共鳴するものはありますか? すごく平易な言葉なんだけど、この言葉とこの言葉を組み合わせると、行間の間を照らすような、あるいは真理に触れてしまったような感情が浮かび上がる、みたいな。

そう思います。草野さんの歌詞は、気持ちをそのまま分かりやすく言葉にするのではなく、そっとしまい込んだ瞬間の気持ちを言葉にすることで、広がりが生まれるんだと思いますし、同じ気持ちを抱えている誰かを救うような言葉になっているんだと思います。

具体性がありすぎず、かといって抽象的すぎることもない。そのバランスがすごく絶妙で。聴いた時に、自然と自分を重ねてしまうような言葉を選んでいらっしゃるなと感じます。私も曲を聴いてくれる人に重ね合わせて聴いてほしいと思っているので、歌詞と音楽との距離感の取り方は、本当に尊敬しています。

──改めてスピッツは十明さんにとって、どういう存在でしたか? 80年代、90年代の音楽がルーツにあるということですが。

両親が聴いていた音楽が、自分の土台になっています。80年代だと、アイドルの曲も聴いていました。松田聖子さんとか。父が好きで車で流れていた曲を、自然と受け取っていたんです。

スピッツの曲も、今思い返してみると、父が好きだと言っていたアルバムの曲が自分の中に記憶として残っているんです。例えばアルバム『ハチミツ』の「あじさい通り」は車で流れていたなって。自分の記憶だけじゃない部分で、自然と体に染み込んでいる音楽が、父の影響としてルーツになっているんだと思います。

──お父さんのカーステレオが、十明さんの音楽的土台を作っていた。

そうですね。長距離移動の時は、ずっと父の好きな曲しか流れないんです(笑)。それが無意識のうちに自分の音楽的な土台になっていたんだと思います。

日本の曲だと松田聖子さん。洋楽だとビリー・ジョエルがずっと流れていて、クイーンやパット・メセニーも。日本の音楽にくくらず、いろんな音楽が流れていました。ボサノバもよく流れていて、小野リサさんとか。ジャンルが統一されていなかった分、自分もいろんな音楽を聴くことができたんだと思います。

──それが今の十明さんの音楽の多様性につながっているんですね。今回のEPもアレンジが本当に多面的ですし。

本当にそう思います。歌謡曲への憧れもあるし、逆に洋楽のように音を楽しむ感覚も取り入れたい。日本人が洋楽を聴く時って、音を楽しんでいると思うんです。その感じをやってみたいとか、いろんなことに挑戦したいと思うのは、聴いてきた音楽が雑多だったからだと思います。父の影響で言うと、松田聖子さんは本当に好きなんです。直接的に同じような曲を作っているわけではないですが、私も女の子の可愛らしいところを歌っているので。現代に通じるあざとさというか、それに対して自分のひねくれてしまう女の子の心情がイメージしやすくなったり。逆に聖子さんのような女の子がいるからこそ、反発してしまう女の子も描けたり。

歌謡曲のメロディーがすごく好きで、みんなが歌えるようなメロディーを自分の曲にも活かしてみたいと思っています。直接的ではないですが、松田聖子さんや菊池桃子さんからは、すごく影響を受けていると思います。

十明「GRAY」Music Video

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「楓」カバーの経験がくれた新たな思い

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作品情報

©2025 映画『楓』製作委員会

©2025 映画『楓』製作委員会

2025年12月19日(金)全国公開
配給:東映/アスミック・エース

2025/日本/カラー/120分/シネスコ/Dolby5.1c

公式サイトはこちら

キャスト&スタッフ

出演:福士蒼汰 福原遥
宮沢氷魚 石井杏奈 宮近海斗
大塚寧々 加藤雅也
監督:行定勲
脚本:髙橋泉
原案・主題歌:スピッツ「楓」(Polydor Records)
音楽:Yaffle
プロデューサー:井手陽子 八尾香澄
製作:映画『楓』製作委員会
制作プロダクション:アスミック・エース C&Iエンタテインメント

十明 2ndデジタルEP『1R+1』

『1R+1』ジャケット

『1R+1』ジャケット

十明 2ndデジタルEP『1R+1』

2025年10月15日(水)リリース

配信はこちら

収録内容

01. 月並
02. クズ男撃退サークル
03. GRAY
04. ねぇねぇ先輩
05. ねばーえばーらんど

映画『楓』オリジナル・サウンドトラック

『楓』オリジナル・サウンドトラックジャケット

『楓』オリジナル・サウンドトラックジャケット

映画『楓』オリジナル・サウンドトラック

2025年12月17日(水)発売
UPCH-2288/¥3,000(税抜)

収録内容

1. Butter Melts and Flows In
2. Beginning or End
3. KAEDE
4. Ordinary Day
5. Through the Lens, Her
6. Can You See That Astral Field?
7. What Bounds Us
8. Stellar Observatory
9. 「楓」 渋谷龍太
10. Her Decision, His Secret
11. The Observer
12. substitute
13. When the Act Is Over
14. 「楓」 十明
15. My Pelican
16. My Celestial Expedition
17. I love this photo.
18. Where the Stars Shine Bright
19. 「楓」 スピッツ

イベント情報

十明のすもーるわーるどつあー2026

十明のすもーるわーるどつあー2026

2026年
3月14日(土) 東京・三軒茶屋GrapeFruitMoon
3月20日(金) 兵庫・KOBE QUILT
3月21日(土) 広島・LIVE café Jive
3月28日(土) 新潟・ジョイアミーア
3月29日(日) 石川・金沢もっきりや
4月4日(土) 福岡・fragile(旧:大名スクエアガーデン)
4月5日(日) 熊本・熊本NAVARO
4月11日(土) 愛知・Live & Lounge Vio
4月12日(日) 岡山・城下公会堂
4月19日(日) 北海道・札幌くう
4月25日(土) 大阪・iiie
4月26日(日) 香川・SUMUS cafe
4月29日(水) 宮城・retro Back Page
5月9日(土) 静岡・LIFE TIME
5月19日(火) 東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

チケット:
・全席自由 ¥4,200円(ドリンク代別・整理番号付)
・全席指定 ¥4,700円(ドリンク代別)※SHIBUYA PLEASURE PLEASUREのみ

十明のすもーるわーるどつあー2026

2003年生まれのシンガーソングライター。
中学時代はブラスバンドにてオーボエを担当。高校生になり軽音楽部に入部。念願だったバンドを結成したものの、1年も経たずに解散。仕方なく一人で弾き語りを始める。音楽への熱い気持ちを人知れず育みながら、自室のクローゼットで撮影した弾き語り動画をTikTokに公開し始める。
オリジナル曲に加え、カバーはボカロ、邦ロック、昭和歌謡、アニソン…とジャンルを超越した個性あふれる選曲センス、楽曲によって全く違った表情を魅せる変幻自在のボーカルに、じわじわとフォロワーを増やし続ける。それらのTikTok動画がきっかけとなり、2022年春、映画『すずめの戸締まり』ボーカルオーディションに参加。未だ何色にも染まっていないまさに原石といえるその天性の才能は、野田洋次郎と新海誠監督を魅了し、その歌声は世界中に響くこととなった。
2023年7月、満を持して配信シングル「灰かぶり」にてメジャーデビュー。作詞作曲を自身で手がけ、プロデュースは野田洋次郎。2024年、Spotifyが躍進を期待する次世代アーティスト「RADAR: Early Noise 2024」に選出され注目の国内新進アーティストとして注目が集まる中、4月には国際ファッション専門職大学の新TVCMに新曲「NEW ERA」が決定、さらに6月公開の映画『違国日記』のインスパイアソングにも新曲「夜明けのあなたへ」を書き下ろすなど、ソングラインティングの多才さが開花、アーティストとしての評価が高まる。2024年12月11日に満を持してファーストフルアルバム「変身のレシピ」をリリース、2025年3月には初のワンマンライブを東京・大阪で開催した。
2025年、各地フェスやイベントへ出演するなか、7月に「月並」、8月に「クズ男撃退サークル」と、立て続けに新曲をリリース。10月6日から放送スタートしたフジテレビ月9ドラマ枠『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』の主題歌に自身初のドラマ主題歌として新曲「GRAY」が大抜擢され、10月15日にはその主題歌を含む全5曲収録のセカンドデジタルEP「1R∔1」をリリース。11月に開催した東名阪クアトロワンマンツアーが大盛況のうちに終了した。

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