俳優としての変化を楽しみながら念願の蓬莱竜太作品へ挑む
どんな役柄でも任せてよかったと言われたい。桜井日奈子が今、さまざまな“顔”を見せる理由
2025.12.12 17:00
2025.12.12 17:00
舞台はやっぱり役者として鍛えられる
──でも、桜井さんがこの作品を読んで「自分もそうだったかも」と思うのが凄いと思いますよ。多分、気づかない人はそのまま気づかないと思います。
確かに(笑)。でも、大人になっていくと気づかざるを得なくなったりもするのかな、とも思いますよね。この作品の金田も、学生時代は輝いていたけど、社会人になってだんだんその輝きを失っていて……というところから始まるキャラクターなんです。一応私は輝いているつもりなんですけど……。

──輝いてます! 今回、桜井さんが演じる「白澤」は、物語のキーマンになる役柄ですよね。
そうですね、私が演じる白澤の死をめぐって過去と現在が交差していく、他の人たちが「あれ、この人はどうだった?」と謎を解いていくポジションのキャラクターです。その白澤の印象が二転三転していくと面白いです、みたいなコメントも蓬莱さんからプロットの段階ではいただいていて。なんかこう、つかみどころのないキャラクターを目指して、役を作っている感じですね。
──そういうキャラクターだと、演じる方としては大変では?
大変です(笑)。今は稽古中なのでまだふわっとしているんですけど、ここから蓬莱さんが固めてくださると思うので。楽しみですね。
──実際稽古に入ってみて、蓬莱さんの演出はいかがですか?
稽古場で、吉高さんがときどきポップに弱音を吐いたりとかするんですよ(笑)。それは多分、私たちがやりやすいように……難しい時は難しい、大変だったら大変って言っていい空気を作ってくださっているんですけど。そういう時も蓬莱さんは「大丈夫、大丈夫だから!」って励ましながら演出をつけていて。多分、蓬莱さんの頭の中では完成形ができているんじゃないかな、と。だから安心感がありますし、楽しいですよ。
──でも、こういう作品を書く方なんだよな……と思うと、稽古場で何を見られているんだろう? と思ったりしませんか?
本当にそうですよ、恐ろしい(笑)。あの静かな微笑みで私たちをどう見ているんだろう、とは思いますね(笑)。
──稽古場の雰囲気はどんな感じですか?
とてもいいですよ! こういう女性ばっかりの現場、私初めてなんですよ。最初は結構気を張っていたんですけど、主演の吉高由里子さんと、キャストでは最年長の山口紗弥加さんのお二人がとにかく明るくて楽しい方で。だからなんか私たちもあんまり肩肘張らずにいられて、ありがたいです。フットサルのシーンがあるので、稽古の最初にフットサルの練習をしてアップしたりするんですね。そしたらボールがあちこち飛んで、「キャー!」みたいな(笑)。みんなで足が痛い、腰が痛いって言いながら頑張っています(笑)。
──そんな中で、名村辰さんが男性一人でいて。
名村さん、本当に素敵で。言い方が難しいんですけど、「男性がいた」っていうことを忘れてしまうぐらい女性陣に馴染んでらっしゃる(笑)。やっぱり女性ばっかりで会話していると、ときどきすごい話もしちゃうんですが。で、「やべ! そう言えば名村くんいた!」みたいに、パッと見てみんなで我に返る、そんな感じです(笑)。

──「1年に1本」のペースで舞台に出演されているのも凄いなと思います。そのペースや、舞台出演を続けているのには何か理由があるんでしょうか?
できればもっとやりたいな、とは思っているんですけどね。私、デビューが舞台だったというのもあって、舞台が好きなんです。なので、今後もやり続けたいなと思っています。
──ただ、舞台作品だと稽古期間もありますし、1年に1本でもかなりの時間を割くことになりますよね。
確かに。舞台だと、稽古で1ヵ月、公演で1〜2ヵ月と、だいたい3ヵ月くらい同じ台本に向き合い続けるんですよね。そうやって向き合い続けた先に、また新しい発見みたいなのがあるから、やっぱり役者として鍛えられるような気がしています。
──桜井さんの舞台出演の記録を改めて見てみると、さまざまな演出家の方とお仕事をされていますよね。また、皆さん割と世界観がはっきりしている、個性的な方たちが多いような気がします。
もう本当にありがたくて、みなさん大好きな演出家さんたちです。参加している期間中もとても幸せでしたね。元々好きだった舞台が、もっと好きになるような体験をさせてくれる演出家さんたちばかりで。今回ご一緒する蓬莱竜太さんもそうなんですけど、みなさん作品に対する愛と、役者に対する愛と芝居に対する愛が半端ないんですよ! 演出家の方にも色々なタイプの方がいて、本番が始まったらもう現場はお任せで……という方もいらっしゃる中で、私がご一緒した方はそうじゃない。去年の『138億年未満』でご一緒した福原充則さんとか、毎公演観に来て、毎回ノートをくださいましたし。もう、こんな幸せなことないですよね。
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