共演は黒羽麻璃央や蓮佛美沙子ら、音楽は曽我部恵一が担当
髙木雄也がロックスター役で山本卓卓と再タッグ、白井晃演出『ジン・ロック・ライム』上演決定
2025.11.20 04:00
2025.11.20 04:00
髙木雄也の主演舞台『ジン・ロック・ライム』が2026年3月10日(火)よりPARCO劇場にて上演されることが決定。東京公演の後は広島・愛知・大阪・福岡で巡演される。
近代演劇の父とも称されるノルウェーの劇作家イプセン(1828〜1906)が1890年に発表した『ヘッダ・ガブラー』は、封建的な社会規範に縛られた人妻ヘッダが頑迷な社会と人間関係の中で自らを貫こうと希望と絶望に揺れ動き、ついには破滅に突き進む姿を描くリアリズム演劇の傑作。今回はそんな19世紀を代表する戯曲を大胆に再構築し、今に響くリアルな会話劇として上演する。
今作の主人公は、人気ロックミュージシャンのジン。彼はライブで我を失い、そのことでネットをにぎわせていた。所属事務所の社長はジンの妻でもあるショウコで、ある日母のアキコが新人マネージャーのトゴシに付き添われて事務所にやってくる。また、ジンの元恋人で、今や事務所を背負う存在になったエートはライター・コマによる独占インタビューをその日の午後に受けるという。そんなエートはノンバイナリーのタレントとして人気を集めているホムラと最近親しいようで、ジンとショウコ、エートを巡る過去と現在、さらには自らの立場と将来への見通し、世間からの眼差しと自身とのギャップが絡み合い、事態は思いがけない方向に動いていく。
当時の道徳観や常識を破壊する作品を発表し続けたイプセンへの現代的返歌として本作品を書き下ろすのは、演劇集団「範宙遊泳」を率いる山本卓卓。2024年上演の『東京輪舞』(演出:杉原邦生演出/出演:髙木雄也、清水くるみ)では、オーストリアの作家シュニッツラーが1900年に発表した『輪舞』を現在の東京に生きる多様な人々の刹那の恋をスケッチする2人芝居に生まれ変わらせた。本作では『ヘッダ・ガブラー』を下敷きに、現在の日本の芸能界で愛すること・愛されることを求め、ありのままの自分自身でありたいともがく人々を描く。
演出は白井晃。2022年上演の『2020』(作:上田岳弘/出演:高橋一生)など常に意欲的な作品を世に問い続けている白井が、今回は自身のキャリア史上最年少の作家である山本とタッグを組み、世代の異なるそれぞれの視点から現代社会を見つめ一つの物語を織り上げる。
そして音楽を担当するのはサニーデイ・サービスの曽我部恵一。2024年「範宙遊泳」に楽曲提供をし、その音楽性と演劇との相性の良さを証明した曽我部が山本と白井からのラブコールを受け、劇中歌をはじめ全ての楽曲を作曲する。
主演は、山本作品『東京輪舞』で8役を演じた髙木雄也。息苦しい現代社会で、アーティストとして、夫として、そして一人の人間として苦悩するジンを演じる。共演には、ジンの元恋人である人気アーティスト・エートに黒羽麻璃央。人気ミュージカル『エリザベート』でルイジ・ルキーニを演じるなど、ミュージカルを中心に活躍する黒羽が久々のストレートプレイに挑む。また、ジンの妻であり所属する芸能事務所の社長でもあるショウコ役には蓮佛美沙子。映画やテレビドラマでの活躍目覚ましく、その透明感と繊細な感情表現に定評のある蓮佛が現代劇としては5年ぶりに舞台に立つ。
事務所の若手タレントでノンバイナリーのホムラを演じるのは、ミュージカルや2.5次元作品での躍動感ある演技のみならず、近年ではストレートプレイや映像での活躍も注目される永田崇人。さらに大手出版社のライター・コマ役は個性派俳優として映画・ドラマ・舞台で活躍する駒木根隆介。事務所の若手マネージャー・トゴシ役は、舞台を中心に活動し、ナイーブな役柄からコミカルな役柄まで幅広くこなす小日向星一。ショウコの母であり、ジンやエートが所属する事務所の先代社長の妻であるアキコ役は、舞台を中心に長年活躍してきた実力派俳優の銀粉蝶が演じ、深みのある表現と華やかな存在感で劇世界に奥行きを与える。

イプセンの時代から100年以上の時を経て、すっかり相貌を変えた現代。しかし人々は変わらず愛を求め自分自身であろうと苦闘しており、『ジン・ロック・ライム』ではそんな私たちの姿をリアルに繊細に描いていく。
コメント一覧
山本卓卓(作)
『東京輪舞』に続き、PARCOさんと髙木さんとのご縁に感謝です。
キックオフの際に髙木さんが「死について考えさせるような内容のものをつくりたい」と話してくれた時「ああこの人はアイドルとして俳優として、芸術家として、本当に誠実に世界と向き合っているんだな」と思いました。そこに白井晃さんの力強くも柔軟に世の中に問いかける演出が加わること、曽我部恵一さんの音楽、彩り豊かなキャスト陣、総合芸術としての底力が立ち現れるでしょう。この世の中を、この生命を、私はまだ諦めていません。この劇と、観客と、未来を信じているので。
白井晃(演出)
劇作の山本卓卓さん、主演の髙木雄也さん共に初顔合わせのお二人です。ですので、この作品を演出する事自体が、私にとっては大きな挑戦です。むしろ冒険と言っても過言ではありません。演劇の形は、さまざまに変化を遂げています。そんな中、自分自身のイメージを自ら解体するような振り切った考えでこの作品に臨みたいと思います。現代における閉塞感とは何なのか。そもそも私たちの閉塞感自体が簡単に言葉にできるものではありません。そんなもどかしさの中にいる登場人物たちと私は語り合っていきたいと思います。
曽我部恵一(音楽)
主人公が自我をとことんまでえぐり闘っていくというヘビーな主題。
自分も音楽でとことん付き合っていきたい。
最後には疲れ切って倒れ込んでしまうくらいに。
髙木雄也
来年は『ジン・ロック・ライム』と云う舞台に出演させていただきます。
白井晃さんに演出していただけるのは初めてなのですが、以前白井さん演出の舞台を見た時に、物凄く世界観に引き込まれるし、役者さんの素晴らしいところをすごく引き出される方なんだなと思ったので、色々な刺激をもらい、新たな自分を皆さんに見ていただけるように、精一杯楽しみます!!
山本卓卓さんに本を書いていただけるのは『東京輪舞』以来なので、沢山話し合いながら理解を深めて、自分なりに表現させていただきますので皆さん遊びにきてくださーい!待ってます!
黒羽麻璃央
この度、『ジン・ロック・ライム』エート役で出演させていただきます。
黒羽麻璃央です。
白井晃さんが演出を手がける作品に参加できること、とてもとても嬉しく思っております。
そして頼もしい共演者の皆様、スタッフの皆様と共に、個性豊かな登場人物達が悩みもがき、苦しみながら進んでいく新たな愛の物語を稽古場から頑張って作り上げていきたいと思います。
よろしくお願い致します!
蓮佛美沙子
私たち人間のエゴや脆さが、少し怖いくらい宿っている作品になる気がしています。
自分らしく生きること。死ぬこと。
心の底から、愛したい、愛されたい、認められたいという願い。
ジンの心の叫びの根源は、決して珍しいものではなく、誰もが聞き覚えのある声なのかもしれません。
生きていたらどうしたってついてくる様々な感情を、刹那的なパワーでお届けできたらと思います。
永田崇人
『ジン・ロック・ライム』にホムラ役で出演させていただきます。
初めて脚本を読んだとき、鳩尾にずしんと響くような“痛み”を覚えました。脚本だけでここまで心を揺さぶられる作品に携われることを嬉しく思います。ホムラは、男性にも女性にも見える難しい役ですが、丁寧に稽古を重ね、その繊細さと強さを魅力的に演じられるよう努めます。劇場でお待ちしています。
駒木根隆介
ここ数年、いわゆる古典と呼ばれる演劇作品に携わる機会が増え、なるほど40代とはこういうものかと思っていたのですが、リアリズム演劇の古典+最新現代演劇の融合という、濃密な創作が必要な企画に参加できて身の引き締まる思いです。初めてご一緒させていただく髙木雄也さん、10年以上振りになる演出の白井晃さんはじめ、舞台では初めてとなる共演者の皆さまも多いので、身を引き締めつつ楽しみたいと思っています。
小日向星一
いつか立ってみたいと思っていたPARCO劇場に素敵な皆様とご一緒に立てること、とても嬉しく思います。
山本さんの脚本が白井さんの演出で、どんな舞台に作られていくのか、今からワクワクしています。
先輩方のお芝居からたくさん学びながら、楽しみながら誠心誠意に頑張ります!劇場でお待ちしております。
銀粉蝶
遠い昔、『ヘッダ・ガーブレル』を読んで印象的だったのは、登場人物のだれにも共感や感情移入ができなかったこと。理不尽な感情と常軌を逸した行動の連続に「なんでそうなるの!?」と心で叫んだ挙げ句、気づくとスッカリ作品世界に捉えられている。わたしにはかなりショックな文学体験でした。
さて、その衝撃作を下敷きにした今回の作品、「稀代の悪女」ヘッダを「男性」に置き換えるというトンデモな異常事態が進行中なのであります、SHOCK!!!