乃木坂46での経験も糧に舞台『醉いどれ天使』では新境地へ
「みなさんが私の居場所を教えてくれた」阪口珠美が“自分らしく”あるために守りたいこと
2025.11.11 18:00
2025.11.11 18:00
乃木坂46卒業から1年余り。阪口珠美は、より多彩に活躍のフィールドを広げている。
11月からは舞台『醉いどれ天使』に出演中。“世界のクロサワ”による伝説の名作の舞台化で、阪口は主人公・松永(北山宏光)の恋人でありダンサーの奈々江を演じている。その妖艶な佇まいは、アイドル時代とは別人。私たちの知らない“たまちゃん”が舞台を華やかに彩る。
なぜ阪口珠美はこんなにものびやかに自分の居場所を拡張し続けられるのか。そこには、自分らしくという信念と、居場所を見失いかけたときに支えてくれたファンへの感謝の気持ちがあった。【記事最後にプレゼント情報あり】

私がこの時代にいたら「くた……」ってなります(笑)
──黒澤明監督の名作映画『醉いどれ天使』が舞台となります。(※取材は稽古期間中)
初めてお話を聞いたときは、私で大丈夫なのかなって、もう不安100%でした(笑)。でも徐々に現実味が出てきて、すでにもう稽古に入っているのですが、今はもうやるしかないなって、不安と同じくらい頑張ろうという気持ちでいっぱいです。
──稽古に入る前にどんな準備をされましたか。
まずは映画のDVDを購入しました。黒澤明監督のお名前はもちろん知っていたんですが、作品を拝見したことはなくて。DVDを再生したらモノクロだったんですね。私からすると、もうその時点で異次元。観慣れなくて、ちょっと慣れるまでに時間がかかったんですけど、映画の中で描かれる荒々しくも人間らしい雰囲気にどんどん惹き込まれていきました。
──この作品に出てくる戦後の男性たちは、令和の男性とはまったく違いますよね。
「男!」って感じがしますよね(笑)。きっと松永や(渡辺大が演じる)真田みたいな人がいたらモテるんだろうなと思います。強いんだけど、その中に弱々しさもあって。それも含めて男らしいというか。
──どこか破滅的な匂いがしました。
少なくとも私は今まで出会ったことがないタイプの男性たちでした。彼らの弱々しくて子どもっぽいところが、女性からすると可愛く見えちゃうんでしょうね。
──女性たちも、今の時代とはまた違う感じがします。
むしろ男性たちより女性のほうが強いですよね。生きたいというエネルギーがすごくて。当時はまだ戦争が終わって間もない時代。みんな生き延びるのに必死だった。闇市が舞台ですが、私自身、どういうものか直接見たことがないので、とにかく資料をたくさん見て、少しでも当時の雰囲気を掴めるように勉強しました。
私からするとすごく遠い世界ではあるんですけど、自分がまったく知らない時代にこうして入らせていただくというのは、すごい経験だなってワクワクしています。

──ちなみに、この時代にタイムスリップしたら生きていけそうですか。
すぐ「くた……」ってなっちゃう気がします(笑)。私の演じる奈々江とか、尊敬するくらい気力も体も強いんですよ。私にあのエネルギーはない。たぶん圧倒されて、「くた……」ってなっています(笑)。
──改めてですが、奈々江をどんな人物だと捉えていますか。
奈々江は自分がナンバーワンでいたいという強い気持ちを持った人。そのためにも、より強い男の人の女になろうと立ち回っていて。上を目指そうとする執着心や欲の強さが彼女の特徴ではあるんですけど、彼女がそんなふうに強く振る舞っているのは、弱い自分を隠すため。そんな奈々江の奥にある心情をうまく表現してお客さんに伝えられたらと思っています。
──きっと奈々江がそんな性格になったのは、台本だけではわからない様々な背景があるんだろうなと思います。
きっと裕福な家庭環境ではなかったんだろうなって。そこから抜け出すためには、権力を持っている男性にすがりつくしかなかった。勝手に見えるかもしれないけど、そうしないと生きていけなかったんだと思います。そこは私から見ると、ちょっとかわいそうだなという気もしますね。
──パンチのある台詞も結構ありますね。
「この野郎!」とか人生で言ったことがないので、こんなにストレートに言える奈々江は清々しいなと思いました(笑)。最初はこんな台詞、本当に言えるのかなと心配だったんですよ。でも、深作(健太)さんの演出を受けていると、スッと自然に台詞が出てくる。ファンのみなさんが見たことない姿をいっぱい見せることになると思うので、びっくりさせられるように頑張りたいです。
──やっぱり口調はいつもの阪口さんのものとはまったく違うものになりそうですか。
口調も言葉遣いも全然違います。あとは歩き方もガラッと変えていて。歩き方一つとっても、男の人を誘惑するような雰囲気を出せたらなって今勉強中です。
──ここまで色気を求められる場面は、これまでの芸能活動の中でもほとんどなかったのではないでしょうか。
なかったですね。ダンスの種類も、今まで踊ってきたものとは全然違って、女性らしい振り付けがたくさん入っています。ダンサーさんたちを見ていると、本当に気持ちいいくらいのびのび踊られているんですね。私もみなさんからいっぱい吸収して、妖艶な雰囲気を出せるようになりたいです。
──阪口さんも踊るシーンがあるんですね。
ちょっとですけど、あります。今回、ヒールで踊るんですよ。それがまた難しくて。ヒールも結構高さがあって、足をバンと上げたいんですけど、まだうまくできないので、練習しているところです。ドレスもすごく本格的なものなので、きっとこれを着て踊ったら映えるんじゃないかなと思います。どれくらいできるようになるか、プレッシャーはありますけど、本番が来るのが楽しみです。
──奈々江は上昇志向が強いですが、阪口さんはどうですか。
上昇志向はありますけど、それで他人に怒りをぶつけることはないです。私が超えたいのは、周りのライバルじゃなくて、私自身。自分が、過去の自分を上回ることができていたら、それで満足なんです。そこは奈々江と違うところですね。
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