上演中の『マリー・キュリー』で初共演した互いの印象は?
「本読みでこんなに感情が高ぶったのは初めて」昆夏美と鈴木瑛美子が語る“寄り添える”ことへの感謝
2025.11.04 17:00
2025.11.04 17:00
『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』をはじめ数々の大作ミュージカルに出演、今や日本ミュージカル界においてなくてはならない存在である昆夏美。歌手として活動する傍ら、2025年だけでも『SIX』『LAZARUS-ラザルス』と話題作への出演が続く鈴木瑛美子。現在公演中の『マリー・キュリー』で昆はラジウムの発見で知られる女性科学者マリー・キュリーを、鈴木はマリーの親友・アンヌ役を演じている。
伝記などでも知られる「キュリー夫人」の生涯をフィクションを交えて描いた韓国創作ミュージカルの傑作であり、今作では2023年の日本初演からキャストを一新しての再演。稽古中におこなった二人のインタビューでは初共演ながら和気あいあいとした雰囲気で、ミュージカルでの“演じ方”やルーティン、趣味など、話はいろいろと広がっていって──。

ミュージカルでは感情をコントロールしているように見えるのが正解
──昆さんは今回、マリー役のオファーが来た時に意外に思ったというコメントを他のインタビューでされていましたね。実際に稽古に入られて、その印象はどうですか?
昆 まだ少し意外ですね。やればやるほど、元々の自分のキャラクターは絶対アンヌに近いと思うんですよ。だから今回は「挑戦」だなと思っています。
鈴木 昆ちゃんはそう言うんですけど、私は意外と昆ちゃんがマリーなのは「わかる」って思うんですけどね。昆ちゃんが持っているエネルギーって本当に明るくて、そこがイコールマリーだなって。アンヌの方は架空の役ですけど、私はマリーの分身だと思ってるんですよ。ただ一人の人間の出ている部分が違うみたいな。だから脚本を読めば読むほど、考えれば考えるほど、マリーもアンヌも結局は似た性質を持っているんじゃないかなと。

──アンヌとの関係性も切ないですね。
昆 実はアンヌと二人のシーンはそんなに多くなくて、でも一つ一つが濃いんですよ。瑛美子ちゃんのアンヌは、新しいというか……本当に明るいけれど、すごくしっかりしている子という印象。本読みをした時に感じたのは、アンヌはマリーを「しっかりと怒ってくれる人」だったんだなと。対等にマリーにしっかり「何でこんなことしたの?」ってまっすぐ言ってくれる人って、アンヌが親友だったからなんですよね。だから瑛美子ちゃんとも素敵な関係性になれたらいいな、と最初から思っていました。
鈴木 劇中で、明るくて温めてくれるというラジウムの特性の説明をマリーがして、アンヌが「それってマリーみたいだね」という場面があるんですけど、私はそれを心から言えているんですよ。もう昆ちゃんの性格とか明るさも含めて、それってめちゃくちゃマリーだよね、と思ってます。
──この『マリー・キュリー』は、内容的にも演じる方は相当エネルギーが必要な作品では?
昆 そうですね。最初、本読みだけでも感情が高ぶってしまって。今回ダブルキャストですが、組み合わせは固定なんですね。もう1チームの本読みを見ていたら瑛美子ちゃんが横で泣いていて、私も泣いていて……こんな本読みは初めてでした。

──そのくらい、感情を揺さぶられる作品ということですよね。ミュージカルを観ていていつも思うことなのですが、感情をコントロールしつつ歌いながら演技もして、というのはすごく難しくないですか?
鈴木 やり方は「作品と表現による」という感じですね。コントロールしているように見えて正解というか、泣いているのを我慢している芝居でいいんですよ。歌っている方がめちゃくちゃ泣いている状態になったら、コントロール不足だなって見えてしまう。感情を出さない努力をする、でもそれでも出てしまう……そこのギャップが重要なのかな、と思います。
昆 そうなんですよね。「泣く」にしてもそのままやるといかにも「泣いている」という、熱演している! となっちゃうのが、お芝居の難しいところで。だからといって「泣かないようにしよう」と思うとこっちも冷めちゃったりするし、それも違う。お客様もそういうのって絶対わかると思うので、そこの感情と表現、中間のところを狙いたいというのもあります。
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