出演中の劇団☆新感線公演への思い、34歳迎えた現在地とは
“誰も見たことがない自分”でいたい。早乙女太一が演じ手・作り手として目指す演劇像
2025.11.07 18:00
2025.11.07 18:00
ドラマや映画などで“静”の役柄を演じていたかと思えば、舞台上では一転、目にも止まらぬスピードの鮮やかな殺陣で観る者を魅了する。かと思えば、自身が育ってきた「劇団朱雀」を復活させてからは、大衆演劇の世界で「座長」としての顔も見せる。そんな彼、早乙女太一が今出演しているのは、劇団☆新感線の45周年興行・秋冬公演 チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』だ。
17歳のとき『蛮幽鬼』に出演して以来、今作で8作目となる新感線参加。常に新感線作品では新たな一面を見せてくれる彼だが、今作は劇団のお祭り的な興行シリーズ「チャンピオンまつり」へ初参加となり、歌舞伎一座の跡取り息子で、女形である夜三郎を演じる。インタビュー時は、作品の稽古中。劇団☆新感線への思いや、自身のルーツともいえる大衆演劇について、この先やりたいこと……今年34歳の彼が今考えていることを、たっぷりと語ってもらった。

今回は“原点”的な役どころかもしれない
──これまでも劇団☆新感線作品にはたくさん出演されていますが、とうとう「チャンピオンまつり」への出演ですね。
気持ちとしては、こういう劇団員の皆さんが集まった舞台をやると聞いた時から「お客さんとして観たいな」というのがまずあったんですけど(笑)。でもそれよりも劇団の中に入れて、皆さんが作っていく稽古場が見られるというのがとにかく嬉しかったですね。
──今回は劇団員の方が多いだけに、新感線の作品の魅力の1つである「わちゃわちゃしているところ」が増している感じでしょうか?
本当にそうですね。新感線というもう揺るぎのない色があるんですけど、そこにいる皆さんはそれぞれ個性がバラバラで、出ている人によってその場の空気も変わるし。上演時間が長いは長いんですけど、劇団員の皆さんが順番に出てくるのを見ているだけで、すごく楽しいんですよ。

──新感線作品における早乙女さんといえば殺陣がふんだんにあるのがおなじみですが、今回は珍しく「人を殺さない役」と。それを最初に聞かれた時はどう思いましたか?
いやこれが、最初のオファーでは聞いてなかったんですよ。今回は「役者」の役で、命をかけるところはあるんだけども、そのかけ方がこれまでの作品と違うというか、役者としての戦い方になるんです。だからそこらへんはいつもとは違うかなと思いつつ、僕に関しては役どころとしての新鮮味はないかもしれないですね(笑)。でも女方役者という役どころなので、ある意味“原点”的な感じかもしれないです。
──太一さんの大衆演劇での姿を知っている人と、新感線や他のメディアから知った人では捉え方が違うかもですね。
そうかもしれないですね。普段劇団朱雀でも女形はやってますけど、踊りがメインなんですよ。お芝居で女形というのはあまりやらないので、そういう点ではいつも観に来てくださっている方も新鮮かもしれないです。ただまあ、女性ではなく「女方もやる役者」という役柄なので、あまり“役”という感じがそんなにないというか……ほぼほぼ“自分”なんですよ。
──今回の役柄のキャラクターとしては、素の太一さんに近いところがあると。
役のポジションもそうですよね。親が座長で、その息子で看板役者をやっている……というところとか。他の方たちが濃いので、僕が一番「さっぱりしている」役だと思いますよ(笑)。
──プレスリリースのコメントで、2011年の『髑髏城の七人』の時に小池栄子さんにご迷惑をかけた……みたいなお話があったのが印象的でした。久しぶりに一緒に共演されてみていかがですか?
いや、もうほとんど前のときの記憶がなくて、どういうふうに稽古が進んでいったかとか、僕自身が覚えてないんです。今回、やっと初めて共演しているような感覚で。あのときは僕自身がいっぱいいっぱいだったし、今思い返すと本当にひどい態度だったんですよ、僕が。人と喋らないし、今の自分だったらあんまり共演したくないようなタイプで。当時19歳で、なんかこう、思春期的な感じのものもあったんだと思うんですけど……だから公演が終わったときは「もう二度と新感線には呼ばれないだろうな」と思ってましたし、だからこそ次に『蒼の乱』で呼んでいただいたときには本当に嬉しかった。同時に、しっかりと期待に応えたいという気持ちがありました。

──当時観ていた観客からすると、現場の早乙女さんがそうだったというのが驚きです。
本当は周りの人と喋りたかったけど、どう喋ればいいかわからない……という感じだったんですよね。だから今は色々皆さんと喋れるようになって楽しいし、むしろ「なにも考えずに稽古場にいられる」くらいの域になりました(笑)。
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