ドラマ『シナントロープ』の2人が若者として抱える本音とは
水上恒司&山田杏奈が語るZ世代観 “夢を言いづらい時代”に20代俳優はどう生きる?
2025.10.20 18:00
2025.10.20 18:00
夢を聞かれても答えるのに腰が引けてしまう
──ここからはお二人で自分たちの世代について語っていただきたいと思います。水上さんは26歳。山田さんは24歳。自分たちの世代をどういう世代だと認識していますか。
水上 今、我々の業界でもリスペクトトレーニングというものが浸透してきていて。上の世代の方々からすると、誘いづらい、ふれづらい世代だと思うんです。実際、同世代の間でも踏み込みにくさみたいなものは、僕だけかもしれないですけど感じていて。仲良くなりたい、話を聞きたいといったことから、自分の人間性をわかってほしいということまで、意思表示がすごくしづらい。
山田 はっきり物事を言わない世代ですよね。
水上 だと思う。
山田 私も「今後どんな役がやりたいですか」とか「夢はありますか」と聞かれても、答えるのに腰が引けてしまうところがあって。これを言ったら怒られるかなとか、この一言だけを切り取って自分を判断されたら怖いなとか、そういう気持ちが前に出ちゃって、なかなか思っていることが言えなかったりします。

水上 よく上の世代の方から「夢はあるか」って聞かれるんですけど、たぶんその質問をするのって、その人たちの世代では夢を持っていることが当たり前だったからだと思うんです。でも今は夢がなくても生きていける時代だから。実際のところ蓋を開けてみたら今の社会はボロボロだなって僕なんかは思いますけど、それでもそれなりに生きてはいける。そういう時代を生きてる身からすると、夢って聞かれても答えにつまるだろうし、夢がない=悪いことって言われているように感じる人がいるのもわかる気がします。
山田 だから、私は水上さんってすごいなと思うんです。いい意味で時代に逆行しているというか、なんでもはっきり言うところが素敵だなと思います。
水上 たぶん僕たちの世代って、上の方たちからすごい真面目だって思われてると思うんですよ。
山田 実際、みんな真面目だと思います。
水上 うん。真面目であることが大前提。毎日ちゃんと現場に行って、しっかり役と向き合うのが僕らは当たり前になってるから。逆に言うと真面目ってだけじゃ個性にも褒め言葉にもならないんですよね。さっき僕は杏奈ちゃんのことを「したたか」って言いましたけど、「したたか」をマイナスに捉える人もいるかもしれない。でも、僕は真面目より「したたか」のほうが絶対個性になると思ってる。
山田 うんうん。
水上 真面目をベースに、そこにプラスオンで何かないと突き抜けられない。そういう武器を一人ひとりが求められる世代だと思います。

──お二人の世代の感じている踏み込みづらさって、おそらく人を傷つけたくないという配慮や優しさがコミュニケーションのベースになっているからだと思うんです。実際どうなんでしょう。お二人は、もっと他人に踏み込みたいし、踏み込まれたいですか。
水上 僕は好きな人だったら、男女問わず、恋愛関係なく、仲良くなりたいです。ただ、嫌いな人に踏み込まれてきたら拒否しますけど(笑)
山田 私もそうかもしれないです。もっと知りたいと思っている相手ならうれしいけど、そうじゃなかったら「はい、終わり」って(と、シャッターを閉める仕草をする)。
水上 僕は仲良くなりたい人なら、閉められても行きます。こじ開ける(笑)。
山田 私はなかなか自分から行けなくて。先輩のほうが行きやすいです。
水上 僕も先輩にはガンガン行けるけど、同級生とか年下はちょっと難しい。なんでなんだろう。杏奈ちゃん的にはどう思う?
山田 年上が楽というより、年下の人との関わり方がちょっと苦手っていうほうが大きいのかもしれない。どうですか?
水上 ちょっと自分のことを棚に上げたような発言をしますけど、僕は年齢問わず、自分と視座や志が近いというか、同じ匂いがする人といるのが心地いいんですね。その確率が年上の人たちのほうが高いっていうのがあると思う。だから、今回の現場は僕の中ですごくレアで。同世代ですけど、杏奈ちゃんもだし、マモちゃんもだし、もっちー(望月歩)とか、同じ匂いがする人たちが多い。こういう現場はなかなかないので、すごく楽しいです。

──劇中に「目指してみると、必ずその世界にすごい人がいて、自分の才能のなさに落ち込むんだよね」という台詞が出てきます。お二人も仕事をしていて、すごい人と自分を比べて落ち込むことはありますか。
水上 普通にありますけどね。
山田 ありますよね。いつも周りを見て「すごいな」って思います。でも、その次に自分と比べたところで意味があるのかと思うんですよね。
水上 今まで比べたことはある?
山田 どうだろうなあ……。
水上 考えるってことは、ないんだよ、きっと。
山田 この人にはこの人のいいところがあって、私には私のいいところがあるって思わないと、こんな仕事やっていられないじゃないですか。
水上 確かに。
山田 比べるたびに落ち込んでたら、この仕事は続けられないと思う。
水上 俺も頭ではそう思ってて。でもバカだから、やっぱり勝ちたいって思っちゃうんだよ。この人の「これがいい」というところを見つけてマネしてみるんだけど、結局うまくできなくて、ちくしょうってなる毎日ですね、僕は。

──そういう自分は嫌ですか。
水上 嫌ですよ。そうなりたくないのに、そうならざるを得ないんですから。でもそれが自分だなとも思うし。モノマネしたところでその人にはなれない。そうわかっているんだけど、すべてにおいて勝ちたいというギラギラしたものが自分の中にある。昔よりはだいぶマシになってると思いますけど。
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