ドラマ『シナントロープ』の2人が若者として抱える本音とは
水上恒司&山田杏奈が語るZ世代観 “夢を言いづらい時代”に20代俳優はどう生きる?
2025.10.20 18:00
2025.10.20 18:00
バブル世代に氷河期世代。ゆとり世代にミレニアル世代。いつの時代も、生態不明の新世代の解像度を上げようと、社会は各々の世代に名前をつけてきた。現在20代──令和の若者とされる彼/彼女らもまた「Z世代」とラベリングされ、そのライフスタイルや価値観を分析されている。ならば当事者であるZ世代は自分たちのことをどう認識しているのか。
この10月から放送中のドラマプレミア23『シナントロープ』は、まだ何者でもない8人の男女による青春群像ミステリー。8人のバイト先であるバーガーショップ「シナントロープ」で起きた強盗事件をきっかけに、若者たちの日常は思いがけない方向へと転がっていく。
主人公のさえない大学生・都成剣之介を演じるのは水上恒司。都成がひそかに想いを寄せるヒロイン・水町ことみには、山田杏奈。Z世代の二人が語る、自分たちの時代とは。

杏奈ちゃんは自分の芯を持っている強い女性
──まずはこの作品の魅力について聞かせてください。
水上 この物語は「シナントロープ」というバーガーショップで働く8人の男女の青春群像劇です。みんな永遠に「シナントロープ」という場所にとどまり続けるわけではなくて。それぞれが、それぞれのタイミングで、それぞれの向かう先へと散っていく。でもきっといつかどこかで「シナントロープ」で過ごした日々を振り返るときがやってくる。それも感慨に浸るというほどではなくて、なんでもない瞬間の出来事を、あのときは楽しかったなって懐かしむような、それくらいだと思うんですけど。そんなふうに楽しかった、戻りたいなと思える時間のことを、人は青春と呼ぶんだと思う。だから、僕はこの作品を青春群像劇と呼びたいし、彼らにとって「シナントロープ」での日々は青春だったと思っています。
山田 此元(和津也)さん脚本ということで、会話のテンポがすごくいいんです。その中にいろんな要素がちりばめられていて、話が進んでいくにつれて「あそこがここにつながっていたのか」と驚くような展開が待っている。場面と場面のつなぎ方もオシャレで、面白い作品になるだろうなという予感がするし、演じていてもすごく楽しいです。
──舞台設定がバイト先というところが絶妙ですよね。お二人はバイトの経験はありますか。
水上 僕は高校卒業間近から上京するまで八百屋でバイトをしてました。
山田 え。八百屋さんで働いてたんですか。
水上 期間で言ったら3〜4ヵ月と本当に短くて。レジ打ちもできなかったので、このDNAを活かして、おばちゃんたちに「安いよ」「うまいよ」って野菜を売るしかできなかったですけど。
山田 いいですね。野菜の知識とかつきそう。
水上 働いてた当時は結構覚えてたけど、もう完全に忘れました(笑)。杏奈ちゃんはバイトしたことあるの?
山田 ないんです。だから憧れはあって。家具屋さんで家具とかつくってみたかった。
水上 職人のほうなの? 売るほうじゃなくて?
山田 そう。つくりたい。
水上 それはもうバイトじゃないね。正社員ですよ(笑)。

──8人のメインキャストには、同世代の実力派が揃いました。ぜひお二人にはこの中から一人、この人は面白いぞという人を紹介していただきたいのですが。
水上 これはたぶん2分の1の確率で答えが揃う気がするな。
山田 2分の1? えー、誰だろう。
水上 じゃあ、せーので言おっか。せーの!
水上&山田 マモちゃん!(萩原護)
水上 やっぱり揃った(笑)。面白いよね。
山田 面白い。志沢という役も、彼自身もすごく魅力的。水上さんは別の現場でも共演したことがあるんですよね。そのときからあんな感じだったんですか。
水上 基本的にあんな感じでした(笑)。キャスト発表のときのコメントでも「持ち前の静かさを最大限活かせるチャンスが来た」と言ってましたけど、あの年にしてもう自分のキャラクターをよくわかっているところがまず面白いよね。マモちゃんは、底が知れない人。今までの経験上、僕から年下の方にアドバイスを求めることはあまりないんですけど、マモちゃんには「ここ、どう思う?」って聞きたくなる。まあ、マモちゃんは「そうっすね」しか言わないんだけど(笑)。
山田 言わなさそう(笑)。私はまだあんまり二人で直接話したことがなくて。みんなといるときに、「じゃあ、マモちゃんって呼ぼう」と坂東(龍汰)くんが言い出したんです。それで、この間、迷いつつも勇気を出して「マモちゃん」と呼んでみたら、すごい「え…?」という顔をされて。あの顔が忘れられません(笑)。
水上 「え! 山田さんにマモちゃんって呼ばれた…!」っていう顔してたよね。そのときのリアクションとか最高でした(笑)。
山田 他の人もみんな面白いですよね。
水上 面白い。これからの映画・ドラマ界を担う役者が揃っていると思います。その中の一人としていられることが光栄ですし、ここで僕たちが面白いものをつくって、また次の世代へとバトンを渡していかなきゃなって自分を奮い立たせながら撮影に臨んでいます。

──ちなみにお二人は過去に共演経験がありますが、お互いどんな人だと認識していますか。
水上 以前ご一緒したのが5年くらい前で。そのときと僕は名前が変わって、やりづらいところもあったと思うんですけど(笑)、変わらず向き合ってくださって、すごくいい子だなと。
山田 5年ぶりですけど、根本となる部分はあんまり変わらないなという印象です。以前ご一緒したときも、自分の仕事に責任を持ってやってらっしゃるイメージがあって。その地に足のついた感じはまったく変わらないですね。
水上 僕の中の杏奈ちゃんは、自分の芯を持っている強い女性。やっぱり女優さんですからね。ちゃんとしたたかなところがあって。
山田 したたかさも大切だと思っています(笑)。
水上 さすが。これがアミューズさんですよ(笑)。
山田 たくましく育ててもらいました(笑)。

水上 この仕事をやる上で、そういう強さは大事なんですよ。どうしても僕たちの仕事って人間性を搾取されるところがあって。そこを肥やしにしていかないといけない職業だと思うんです。杏奈ちゃんは自分の中の削っていいところは削るけど、でも絶対に削りたくない部分はしっかり守っている。すごくタフな女優さんです。
山田 ありがとうございます。
水上 俺はどう?
山田 水上さんは全体像が掴めない人ですね。たぶんご本人も自分のことを全部打ち明けようとはしてないんじゃないかな。だから、こうやって人にあれこれ勝手に言われるのも嫌なんだろうなと思いつつ(笑)。
水上 いやいや、杏奈ちゃんなら大丈夫よ(笑)。なんの関係値もない人から言われたら、それは嫌だけど。
山田 手の内を見せようとしないから、つい何を考えているのか気になっちゃう。そこが魅力だと思います。
水上 基本的に、何を考えているのかわからないっていろんな人から言われます。でも、まあ僕もわからないんですよ、自分が何を考えているのか。もうそれでいいのかなって感じでやらせてもらってます(笑)。
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