実現困難な“ループもの”がウォーリー木下演出で見事舞台化
これぞ演劇ならではのライブ感!薮宏太主演の音楽劇『MONDAYS』で体感する“気持ちよさ”とは
2025.10.08 17:00
2025.10.08 17:00
PARCO PRODUCE 2025 音楽劇『MONDAYS/このタイムループ、まだまだ終わらない!?』が10月5日(日)、東京・渋谷のPARCO劇場で開幕。それに先立ち前日、公開ゲネプロと記者会見が行われた。
タイトルでピンと来た人もいるかもしれないが、今作は2022年に公開された映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(監督・竹林 亮)を原作としたもの。上映が3館からスタートしたものの、口コミでその評判が広がり最終的に80館超の映画館で上映され、ロングランヒットを記録したことでも話題となった作品だ。

公開ゲネプロより
さて、そんな作品が舞台化。しかも音楽劇に!? 脚本・演出を手掛けたウォーリー木下は会見で「これを舞台化することで、映画を作った方たちに迷惑をかけないかなということは最初に思いました。やるならまるっきり反対の方向性でやろうと。二度と同じことができない“ライブ”で『毎日同じことをしなくてはいけない』という設定のタイムループものを作ることで何か新しいことができないか、と思って作ってみました」と語ったが、舞台上で観られたのは、まさに「演劇ならではの『MONDAYS』」だ。
物語の舞台となるのは小さな広告代理店「Zコミュニケーション」。「チーム永久」のメンバーは、部長の永久(梶原 善)、事務の神田川(大空ゆうひ)、クリエイティブディレクターの平(岡田義徳)、デザイナーの森山(森田甘路)、プランナーの吉川(南沢奈央)、プランナー兼営業の村田(薮 宏太)、プランナー見習いの遠藤(平間壮一)の7人。遠藤と村田は同い年だが、入社は2年村田が早く、遠藤は村田のインテリっぷりを敬愛している。先輩の吉川が自分のキャリアアップ転職のためにとってきた案件「味噌汁炭酸タブレット」のプレゼン資料作りの手伝いと、1ヵ月後に迫ったショッピングモールのクリスマスイベントの打ち合わせで時間に追われ、トラブルも重なり土日も休日出勤して働く彼ら。そしてまた月曜日が来て、慌ただしい1週間が始まるのだが……。

やがてある日、遠藤が村田に「この1週間がループしているのでは?」と言い出す。最初は信じられない村田だが、遠藤のアドバイスに従うことで自分たちが同じ1週間を繰り返す「タイムループ」の中にいることに気づき驚愕する。少しずつ他の社員に「タイムループ」のことを気づかせ、どうにか脱出する方法を探る「チーム永久」。新しい月曜日は、果たしてやってくるのか……!? というストーリーだ。


観終わってすぐに浮かんだ感想は「もう一度最初から観たい!」だ。ゲネプロ前の記者会見で「地獄の稽古」という言葉が出てきていたが、幕が上がってからほどなくその意味を完璧に理解する。音楽は、□□□(クチロロ)の三浦康嗣によるエレクトロポップ。しかしそのサウンドには、登場人物たちの生活音……電気のスイッチをONにしたり、コーヒメーカーのスイッチを入れたり、なにかものを落としたりぶつかったりという音が見事に盛り込まれているのが最大の特徴だ。

音楽に合わせて舞台上では月曜日から火曜日、水曜日……と1週間が過ぎてゆき、慌ただしいオフィスの様子をリアルに描写しながらも、要所要所で俳優陣の動きとサウンド、ビートがシンクロする。演劇でありながら、とてもパフォーマンス性の高いこのシークエンス、なんとも見ていて気持ちが良い! 近年では2.5次元作品からミュージカル、2020東京パラリンピックの開会式まで幅広く演出家として活躍するウォーリー木下だが、もともとは音やリズムに合わせたパフォーマンス演出を得意とする人だ。このあたりの演出は、彼の面目躍如といったところだろう。
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