2025.09.16 18:00
2025.09.16 18:00
母に「面倒くさい」とよく言われます(笑)
──普段から伊東さんのお芝居は、思考の部分と感覚の部分が何対何くらいで構成されていますか。
あんまり考えるのが得意じゃないんです。だから本当、3対7ぐらいで……。
──なるほど。メソッドを意識したり積極的に学ぶタイプではない?
ないですね。勉強するために、人のお芝居を観ようとは思うんです。でも、気づいたらお客さんの気持ちになって楽しんじゃう。で、観終わった後に、「あれ……?何も勉強してないかも……」と思っちゃうタイプです(笑)。

──では、感覚の部分を磨くために心がけていることはありますか。
普段の生活を大切にすることですね。今まではお仕事が忙しくても、わりとずっと気持ちがフラットだったんです。だけど、高校を卒業して、毎日学校に行くことがなくなり、友達と会わなくなった途端、アップダウンが激しくなっちゃって。学校に行って、自分の席に着けば、強制的に役と離れられる。だから気持ちがリセットできていたんだということに気づいて。最近はなるべく友達と会ったり、外に出る機会を持つように心がけています。
──ということは、わりと役を引きずりやすいタイプなんですか。
引きずりやすいです。
──どちらかというと、何か重いものを背負った役が多いイメージなので、役を引きずりやすいとなると大変ですね。
重い役をやっていると気持ちが暗くなったり、逆にハイテンションになりすぎることもあるみたいで。一緒に暮らしている母から「面倒くさい」と言われることがよくあります(笑)。
──素顔の伊東蒼さんは、どういう性格だと言われることが多いですか。
友達からは「うるさい」ってよく言われます(笑)。
──全然重いものは背負っていない?
何も背負ってないです(笑)。むしろ「何も考えていなさそう」と言われることのほうが多いです。

──伊東さんは6歳のときに子役としてデビューしました。お芝居が好きだと自覚したのはいつ頃ですか。
お芝居が好きだなと気づかせてもらったのは、『湯を沸かすほどの熱い愛』のときだったんですけど、その後、中学生のときに一度お芝居をやめた時期があったんですね。そしたら、周りの友達が何人かモデル事務所に入ったりすることが続いて。おめでとうという気持ちの裏で、どこか「自分も……」という気持ちがあって。やっぱり自分はきっぱりとあきらめきれていないんだ。だったら一生懸命やってみようと思って、そこからもう一度真剣にお芝居と向き合うことを決めました。
──一度お芝居から身を引いた時期があったんですね。
中学生になったら勉強や部活をもっと一生懸命やりたいなというのがあって、一旦仕事でお芝居することをやめました。
──で、またお芝居をやろうと思って今の事務所に入られたわけですね。そのときにはもう役者を一生の仕事にするんだという覚悟は固まっていましたか。
やりたいという気持ちはありましたが、母も今の事務所も、お芝居だけじゃなく、他に学びたいことがあるなら、それも一緒に頑張ればいいという考えなんですね。なので、お芝居のために他のものは全部捨てて……みたいなことはなく。高校に入ってからも部活はしていましたし、お仕事も学校のスケジュールに合わせて組んでいただいて。お芝居も学校生活もどっちも100:100で楽しめた3年間でした。
──高校3年間の中で特に青春したなという思い出はなんですか。
やっぱり体育祭と文化祭ですね。わりと全力で競技を頑張る学校で、みんなでリレーの練習とか本気でやるんです。それがすごく楽しくて。
──伊東さんもリレーに出たんですか。
出ました。そんなに速くないんですけど(笑)。1回くらい出てみたいなというのもあったので、やる気を買われて選んでもらいました。
──ちなみにリレーの結果はどうでした?
1位でした!
──よかったです! 高校卒業後の進路はどんなふうに決めたんですか。
母から「大学は行ったほうがいい」と言われていて。私も中高と勉強を頑張ってきて、勉強が一種のリフレッシュになっているなという実感があったので、今はお仕事をしながら通信制の大学に行っています。

──これまで出会ってきた中で特に影響を受けた先輩は誰ですか。
『湯を沸かすほどの熱い愛』で共演した宮沢りえさん、杉咲花さんからはお芝居に対する姿勢だったり現場での過ごし方だったり、大切なことをたくさん教えていただきました。『ビニールの城』を観たのも、りえさんが出ていたからなんです。今、自分にストップをかけることなく稽古に打ち込めているのも、『ビニールの城』を観たときの感覚が焼きついているからで。『湯を沸かすほどの熱い愛』がなければ、今の自分はないと言っていいくらい今でも大切な作品です。あとは映画『島々清しゃ』でご一緒した安藤サクラさんと山田真歩さんはお芝居を再開するきっかけになった先輩なので、出会いという意味ですごく大きかったです。
──今でも伊東さんの出演作を観て先輩が連絡をくれることはありますか。
りえさんはよく「観てるよ」とおっしゃってくださいますし、花さんともよく連絡をとって会ったりしているんですけど、そのたびに「この作品良かったよ」と感想をいただけます。なんだか家族みたいというか、母のような、姉のような、心強い存在ですね。
──じゃあ、伊東さんの中でもそんな先輩たちに恥ずかしくない仕事をしなければという思いがあるのでしょうか。
「いいお芝居をしなきゃ」というより、私がどんなお芝居をしても「大丈夫だよ」と受け止めていただけるような感じがするんですね。お二人が見守ってくれているから、私も安心して自分のお芝居ができている気がします。
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