映画『長崎―閃光の影で―』で深めた絆と自分らしさへの理解
菊池日菜子×小野花梨×川床明日香が振り返る“支え合い”の日々 重なる人生観に3人が思うことは
2025.08.05 17:30
2025.08.05 17:30
一生懸命だった過去の自分を腐すのはやめようと決めた
──原爆を落とした敵国を許せるか許せないか、アツ子とミサヲが言い合いになる場面は、本作の中でも大きな芝居場でした。ぜひこのシーンについて振り返っていただけますか。
小野 この松本組の特徴として、リハやテストをほとんどやらないんですね。なので、あのシーンもやったのは確か本番1回きり。だから、正直あんまり覚えてなくて。
川床 集中しすぎていて覚えてないよね。ただ、あのときのあっちゃんの目はすごい脳裏に焼きついています。
菊池 私は言い合いになる二人を止めながらも見守るというお芝居だったから、逆に結構覚えていて。とにかく二人の熱量がすごかったです。
小野 そうなんだ。もう一瞬で過ぎ去った台風みたいな時間だった(笑)。

菊池 あのシーンが終わった直後に、企画の中村(佳代)さんが号泣しながら私たちのところに駆け寄ってきてくれて。
小野 あ〜! そうだそうだ。
菊池 頑張ってよかったなと。とても救われました。
川床 自信にもなったよね。
──あのシーンで「まっすぐに生きる」というワードが出てきました。「まっすぐに生きる」ってどういうことだと思いますか。
菊池 実はそのことについて結構最近考えたんです。
小野 すごい!
菊池 一つのことに対して多方面から考えた結果、自分自身を見失っちゃうようなことが何度もあって。そんな自分に落ち込むことも多かったんですが、でもその紆余曲折自体が、まっすぐ生きたくてやっていることなんだと思うんです。蛇行しているように見えても、その努力はきっとまっすぐ生きることにつながっているんじゃないかなと認められるようになってからは、少し気持ちが楽になりました。

小野 まっすぐに生きるかあ……私は選択に迷ったら、将来自分の子どもにエピソードトークをするときに、どっちがお母さんカッコいいねって言ってもらえるかという視点で考えるようにしていて。そんなふうに自分の信じているものや愛している人にちゃんと胸を張れるか否かが、私にとってまっすぐに生きるってことなのかなと今思いました。
川床 私は迷ったとき、やらない後悔より、やった後悔を選ぼうというふうに決めていて。それが私にとってのまっすぐに生きることなんです。そこはちゃんと貫けていると思うので、今の自分はまっすぐに生きられているんじゃないかなという気がします。
──こういうことはしないと決めていることから、その人の生き方って見える気がしていて。みなさん、これはしないって自分の中で決めているルールはありますか。
菊池 できているかどうかは別として。座右の銘を決めないとか。
小野 あ〜。同じ同じ。
菊池 昔はよくオーディションで座右の銘を聞かれたら「“雨垂れ石を穿つ”です」と言っていたのですが、なんか違うなと。人はどんどん変わっていくので、変化を認めてあまり決めつけすぎず、正解を設けないように心がけています。

──なぜそう考えるようになったんでしょう。
菊池 過去の自分が憎らしく感じる瞬間があって。けど、当時の自分は一生懸命まっすぐ生きていたはずで、そんな自分を腐すことってすごく悲しいなと。どんな自分も肯定できるようになりたいという想いから、座右の銘を決めないようになりました。
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