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INTERVIEW

映画『フロントライン』の報道記者役で重要だった視点とは

「誰かの心の支えになりたい」桜井ユキが演じ続ける理由と“演じられる日常”に思うこと

2025.06.23 18:00

2025.06.23 18:00

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一人旅での“未知との遭遇”が大好き

──コロナ禍がやってきたばかりのあの頃、桜井さんご自身の心境がどんなものだったのか、もう少しお聞きしたいです。

最初のうちはどこか他人事で、まるで何かのイベントのように感じていたのはお話ししたとおりです。でも姉が現場に立つことになり、緊急事態宣言の発令によって行動制限が出てきたあたりで、これはもしかしたらとんでもないことが起きているのかもしれないと考えるようになりました。それから仕事が無くなり、会いたい人にも会えなくなった。少しずつ日常が壊れていくのを実感していました。それまでの“当たり前”をひとつずつ失っていく感覚。恐怖でしたね。でも幸いなことに、私には寝食ができる家があり、姉のように第一線に出ていかなければならないわけでもない。やっぱり姉の存在は大きいですね。彼女のような存在が身近なところにあるからこそ、私は自分の日常に感謝する事が出来たのだと思います。

──映画やドラマの撮影がストップしてしまったときの心境はどのようなものだったのでしょう?

このまま完全に仕事が無くなってしまうかもしれないと思いました。「不要不急」という言葉が頻繁に使われていたように、役者やエンターテインメント業界って極端なことを言えば、別に無くても困らないんですよね。人間の生死がかかっている事態では、一番最初に排除される分野だと思います。だから仕事が止まってひと月が経つ頃には、心から危機感を抱いていました。

──それは相当な不安があったということですね。

ええ。いままで感じたことのない、自分にはどうすることもできない得体の知れないものに対する恐怖心がありました。いずれ終わるだろうと当時は到底思えませんでしたからね。新しいことに挑戦してみたりもしました。

──どんなことに挑戦されたんですか?

楽器だったり、英語の勉強をはじめてみたり。結果としてどれも中途半端なところで終わってしまったのですが。あと、過去に准看学校に通うことを考えていた時期があった事もあり、久しぶりにホームページを調べて回ったりもしていました。役者の仕事が完全に無くなってしまったとき、身動きが取れない状況になるのだけは避けたかったんです。だから何もせずに過ごすことに耐えられなくて、毎日4時間か5時間くらいは学びの時間にあてていました。

──当時の桜井さんが抱えていた危機感の大きさが伝わってきます。

仕事が止まってから1ヵ月が経過し、参加していたドラマの撮影がさらに延期になると連絡が来たときのことは忘れられません。最大の危機感を覚えたのはあのタイミングですね。コロナ禍は終わらないし、仕事は再開しない。会いたい人に会うこともできない。そしてこの状況は、まだまだ続くのかもしれない。そう感じていました。

──コロナ禍という“非日常”がやがて“日常”になっていったわけですが、気持ちをクリーンに保つために桜井さんが心がけていたことはありますか?

やっぱり運動ですね。外出自粛によって家にこもっていると、しだいに気が滅入ってきました。人間って身体を動かさないとメンタルに影響が出るのだと、あのときはじめて実感したものです。先ほどお話しした“学びの時間”を過ごしても、まだまだ時間は余っていました。ジムなどにも通えなかったので、私はよくウォーキングをしていましたね。公園とか、あてもなくぐるぐる歩き回ってみたり。自然の偉大さを改めて知りました。緑って偉大だなあって。

──すごく共感します。

身近にあるものでどうにか気分転換をしようと、試行錯誤していました。紙粘土もやっていましたよ。野菜をつくったり、こけしをつくったり(笑)。

──それは日常の楽しみ方が増えたということでもありますね。

そうとも言えますね。“学びの時間”は学校の授業のようにルーティン化させて、やらなきゃいけないことを課していました。集中力を維持させるのが大変でしたが、そのほうが気持ち的に楽だったんです。

──劇中で上野の価値観が変化していくように、コロナ禍では社会や個人の価値観が一変しました。桜井さんは価値観が大きく揺さぶられるような経験をされたことはありますか?

それはやはりコロナ禍ですね。あれ以上の大きな経験は無い気がします。

──やはりそうなりますか。

私たちの仕事って、一人では成立しません。それぞれの部署のプロフェッショナルが揃ってこそ、ようやく実現するものです。5年という時間が経ったいま、当たり前に撮影ができていることのありがたみを痛感しています。撮影後にみんなでご飯に行けなかったことや、控え室の人数制限があったことなど、つい最近のことのようです。コロナ禍がやってきたことによって、日常の尊さに気づくことができた。私の中のあらゆる価値観が変化した、大きな大きなきっかけになったと感じています。

──当たり前の日常生活が戻ってきたいま、桜井さんが大切にされていることはありますか?

俳優業以外のことでいえば、一人旅ですね。とにかく旅が好きなんですよ。でも長いこと、どこにも行けませんでした。日本国内には、まだ訪れたことのない素晴らしいところがたくさんあるのに。縁もゆかりもない土地を訪れ、そこで出会った人々と同じ時を過ごす。そういう未知との遭遇が大好きなんです。

──思いがけぬ出会いが。

そうです。元をたどれば、人と人の触れ合う時間や場が好きなんでしょうね。旅先で誰かと出会い、それまで知らなかった何かに触れる。そこではポジティブな価値観の変化が生まれます。思いがけない出会いというのは、プライベートにおいても、役者の仕事をやっていくうえでも、すごく大切なんです。

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作品情報

フロントライン

©︎ 2025「フロントライン」製作委員会

©︎ 2025「フロントライン」製作委員会

フロントライン

2025年6月13日(金)全国公開
配給: ワーナー・ブラザース映画

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

監督: 関根光才
企画・脚本・プロデュース: 増本淳
出演: 小栗旬
松坂桃李 池松壮亮
森七菜 桜井ユキ
美村里江 吹越満 光石研 滝藤賢一
窪塚洋介

1987年生まれ、福岡県出身。『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』(17)で映画初主演を果たし、NHK主演ドラマ「だから私は推しました」(19)では、第46回「放送文化基金賞」演技賞を受賞する。
主な出演作は、『スマホを落としただけなのに』(18)、『コンフィデンスマンJP』(19)、『マチネの終わりに』(19)、『さんかく窓の外側は夜』(21)、『鳩の撃退法』(21)、『桜のような僕の恋人』(22)、『この子は邪悪』(22)、『映画 イチケイのカラス』(23)、『君は放課後インソムニア』(23)、「虎に翼」(24)、『連続ドラマW ゴールデンカムイ ─北海道刺青囚人争奪編─』(24)、『ライオンの隠れ家』(24)、『#真相をお話しします』(25)、『しあわせは食べて寝て待て』(25)がある。

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