世界で支持される人気作曲家が語る、活動で最も大事なこと
澤野弘之が「自分だからこそ」の道で目指す境地 20周年を迎えなお走り続ける原動力とは
2025.05.27 18:30
2025.05.27 18:30
アニメ『進撃の巨人』や『機動戦士ガンダムUC』シリーズ、ドラマ『医龍』シリーズの劇伴を担当し、国内外で支持される作曲家・澤野弘之。現在放送中のアニメ『TO BE HERO X』のメインテーマ、オープニングテーマ、エンディングテーマ、ナイス編の劇中歌を手がけている。
宮野真守、花澤香菜、内山昂輝、中村悠一、松岡禎丞、佐倉綾音、水瀬いのり、山寺宏一、島﨑信長、花江夏樹という超豪華な声優陣が一同に会したスーパーヒーロー活劇の音楽を作るにあたり、澤野がこだわったこととは? また2024年にボーカルプロジェクト・SawanoHiroyuki[nZk]の活動が10周年を迎え、2025年には作家20周年を迎えたことに対してどんな想いがあるのかも聞いた。

作品のエンタメ性を上げる音楽を作りたい
──アニメ『TO BE HERO X』のメインテーマをはじめ、いくつもの楽曲を手がけていますが、どんな内容のオファーだったのでしょう?
最初にオファーをいただいた際に、「オープニングとエンディングとメインテーマに関わらせていただけるのなら是非」とお答えして話が進んでいきました。プロジェクトが進んでいく中で10名のヒーローそれぞれにテーマ曲が付き、1曲ごとに違う作曲家が手がけるということを聞き、ナイスというキャラクターのテーマ曲も作ることになりました。
──アニメの内容に関しては、どんなところに惹かれましたか?
初めに見せてもらった映像の世界観に惹かれました。というのも、僕がNetflixで配信されている『アーケイン』というアニメがすごく好きで、『TO BE HERO X』は『アーケイン』に通じるようなアプローチを感じて、こういう作品に関われるならやってみたいなと思ったんです。また、bilibiliとアニプレックスが組んで全世界展開するという試みも面白いと思いました。
──オープニング曲はボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]名義での「INERTIA」です。NewspeakのReiさんがボーカルを務めたパワフルなエレクトロチューンですが、どんなイメージがあったんでしょう?
『TO BE HERO X』のHaolin監督とは以前『League of Legends』というゲーム作品のPVでご一緒したことがあって僕の音楽を聴いてくださっているそうなのですが、監督がオープニング曲はある程度のテンポ感が欲しいとおっしゃっていたので、アニメの未来的な世界観を踏まえてサイバーでデジタル感のあるダンサブルな曲にしようと思って制作しました。曲を作る時は割とテンションに任せて作っちゃうんですよね。サビになった瞬間にバーンって弾ける展開にしたいなと思っていて、サビの前に少し落ちるような展開にしてより抑揚が強調される作りにしていきました。スムーズに進みましたね。曲ができた後、ボーカルをどうしようという話の中でReiさんを紹介してもらいました。
──Reiさんと今回初めてご一緒してどんなボーカリストだと感じましたか?
Newspeakの曲を聴かせてもらって、バンドサウンドがメインではありますが、曲によってはシンセがフィーチャーされていたり、ダンサブルなアプローチやポップなアプローチだったり、さまざまなことを試みていて、Reiさんはその都度いろいろな歌声を乗せてかっこよく表現していると感じました。「INERTIA」は英詞のデジタル色が強い曲ですが、Reiさんは英語を得意としている方でもありますし、サウンドの勢いやグルーヴを最大限に引き伸ばしていただけたと感じています。
──歌唱に関して何かリクエストはしましたか?
Reiさんに限らず、基本的にはボーカリストの方のアプローチを楽しもうと思っていて、今回は「サビは少しがなってみたらどうでしょう」ってお願いしたぐらいですね。Reiさんから出てくる歌が素晴らしくて、単純に良いテイクを繋いで制作していきました。
──作詞は澤野さんの楽曲はお馴染みのBenjaminさんが手がけていますが、事前に何かイメージは伝えたのでしょうか?
『TO BE HERO X』のシナリオを預けた上で、オープニング曲であるということ、最終的には前向きな気持ちを表現したいっていうこと、あと僕はサウンドの響きを重視するタイプなので、響きの良い言葉をはめ込んでほしいと伝えたぐらいでしたね。そこからBenjaminが思う言葉でうまく作品とリンクする形で書いてくれれば良いと思いました。

──アニメのオープニング曲を作る際に一貫して意識していることはありますか?
劇伴やエンディングもそうなんですが、作品のエンタメ性を上げる音楽を作りたいと思っています。オープニングは作品がスタートする曲なので、視聴者がワクワクするようなサウンドになればいいなと思って作っています。
──メインテーマの「JEOPARDY」は勇ましく壮大な楽曲ですが、どんなイメージがあったんでしょう?
監督から物語の展開を踏まえて後半はEDM感のあるリズムが入ってくると良いですね、というリクエストがあったのでそれを踏まえて作りました。サントラなどを作る海外の作家がエピックなボーカル曲を作るケースが多くて、さっきお話しした『アーケイン』の原作になっているゲーム『League of Legends』の曲にもそういうアプローチの曲があるんですよね。そうした部分にも影響を受けて、弦の響きが印象的だったり、太鼓や壮大なパーカッションが入った歌ものの曲をイメージしながら作って、後半にEDM的な要素を足していきました。

──Benjaminさんとmpiさんのツインボーカルですが、この座組にしたのはどうしてだったんですか?
ボーカリストは誰がいいかを考えていく中で、これまでも二人にはいろいろな曲に参加してもらっていて、「JEOPARDY」のような方向性の曲に彼らの歌が乗った時の響きがすごく好きなので、やっぱり彼らに歌ってもらうのがベストかなと思いました。
──お二人のツインボーカルの魅力をどう捉えていますか?
それぞれソロで歌っても成立するボーカリストではありますが、以前『プロメア』の「Inferno」という曲に二人で参加してもらった時、二人の声が混ざり合うことでより魅力的なエッジや力強さを感じました。それもあって最近は二人で歌ってもらうことが多いですね。
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