崖っぷちバンドの奮闘を描く映画『ザ・ゲスイドウズ』で主演
「ようやく俳優をやっていく準備が整った」夏子が迎えた新章、畑違いの仲間と手にしたものとは
2025.03.07 18:30
2025.03.07 18:30
モデルから芸能活動をスタートし、近年多くのドラマや映画に出演する俳優の夏子と、多国籍バンドALIのボーカル今村怜央、ゴールデンボンバーのギターであり俳優活動も行う喜矢武豊、アメリカで映画監督を生業とするRocko Zevenbergen。それぞれ違う分野で活躍中の4人が、崖っぷちのパンクバンドを演じる映画『ザ・ゲスイドウズ』。
2月28日より全国公開中の本作は、マネージャーからの命令により田舎への強制移住を余儀なくされるも、不器用ながら村人たちと心を通わせていく様、そしてとある出来事を境に神がかった作曲ができるようになったバンドを取り巻く世界を描いた作品だ。
バンド“ザ・ゲスイドウズ”のボーカルである主人公・ハナコを演じた夏子。無二の演技と歌声で物語に大きな説得力をもたらした彼女は、この奇想天外な作品に何を思ったのか。これからの人生において大きな存在になったと語る所以を聞いた。

26歳はすごく追い詰められる年齢だった
──いろんな要素が組み合わさっていて、あまり観たことがないような作品でした。最初に台本を読んだ時の感想はいかがでしたか。
「面白い」「やりたい」と思ったのが最初の印象でした。
──不思議なシーンがたくさん散りばめられていますよね。
初めて台本を読んだ時に、全然想像がつかなかった部分もあったので、初めて観たときは「おぉ、こうなるんだ」と思いました。
──キャストの皆さんが自分なりに解釈して、それぞれ自由に演じたものを現場で調整していくという形で撮影が進んだそうですね。
どのくらいの芝居のテンション感で臨めばいいのか、どういったものが監督の求めているハナコ像なのかというのは、正直撮影に入るまで分からず、探っていた部分がありました。ですが、最初のカットで監督がオッケーをくださったことで、ハナコが始まりました。
台本を読んで自分なりのハナコ像を固めて撮影に臨んだというよりは、キャストの皆さんと一緒にバンド練習や撮影を進めていくなかで、ハナコの人物像がさらに出来上がっていきました。なので自分で作っていったというよりは、皆さんが作ってくれたような感覚もあります。
──資料によると撮影ではその場のアイデアも多く反映されたとか。そういった自由さのある現場はいかがでしたか。
そうですね、色々と任せてもらっていました。「これでいいのだろうか?」と思いながらやっていました。“良い”か“無し”かは、やってみて監督に委ねるしかなかったのですが、なかなかノーが出ることがなくて。むしろ私たちが「もう一回やった方がいいんじゃないの?」と思うところにもオッケーが出ていました(笑)。

──それは他の撮影現場に比べて緊張感が逆に高まりそうですね。
そうですね。「失敗してもこれが使われてしまう」というある意味ライブに似た緊張感がずっとありました。それこそ演奏シーンで間違えてしまった時に「これが使われるのか〜」みたいなこともありました。
──バンドの練習期間って大体どれくらいだったんですか。
キャストの皆さんと一度顔合わせをした後、スタジオに入って3日間の練習をして、撮影に入ったので、みんなギリギリでした。演奏に関しては皆さんプロなので、支えてもらって乗り越えました。
──歌声も曲ごとに少しずつ違っていたり、これまで夏子さんが演じられてきた役柄に比べて話し声が低かったりと、声の使い分けが印象的だったのですが、意識していたことはありましたか。
「ハナコの声は低いだろう」と思っていたので、意識してずっと低くしていたのですが、出来上がったものを観てみると、「こんなに声を低くして喋っていたんだな」と自分でも思うくらいに低かったです。演奏シーンでは、演奏を繰り返すうちに声がだんだん低くなっていました(笑)。
喉が強い方だと自負していたのですが、歌う時は演技する時と全然違うところを使うんだと勉強になりました。歌のプロである怜央さんに「こういう声はこういう気持ちで歌うといいよ」など、アドバイスをたくさんしてもらって、他にも演奏シーンの前にするストレッチの方法やケアの仕方も教えてもらいました。
レコーディングでは、音楽を作ってくださったKYONOさんと監督と一緒に行ったのですが、KYONOさんに色々とアドバイスをもらいつつ、とにかく一生懸命歌いました。

©︎2024「ザ・ゲスイドウズ」製作委員会
──演じていて、ハナコとシンパシーを感じる部分はありましたか。
台本をもらった当時は私も26歳で、ハナコとちょうど同い年でした。最初に台本を読んだ時、やっぱり26歳という年齢はすごく追い詰められるような、先がないような気持ちになるのだなと思いました。自分自身もその時そういった気持ちのなかにいたからこそ、すごくハナコのことが分かりました。
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