公開稽古から見えた話題作の注目ポイントをレポート
“コメディ”は“悲劇”から生まれる?劇団四季『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が狙う新たな観客層
2025.03.03 17:30
2025.03.03 17:30
劇団四季を未見の人にはこの上ない作品
さて、これで公開稽古、3つの場面が終了したわけだが、この後の合同取材会でドク役候補、野中万寿夫が語った「この作品はコメディですが、登場人物に起きていることは“悲劇”以外の何物でもない。俳優がその“悲劇”を真剣に演じることで笑いが起きるんです」との言葉が強く刺さった。30年前にタイムスリップしてしまうことも、父親が酷い目にあう姿を見ることも、自身の“死”を知ってしまうこともすべて“悲劇”だが、その状況を変えようと必死にもがく登場人物たちの姿が私たち観客には“コメディ”に映るのだ。まさに人生における悲劇と喜劇は背中合わせなのである。

場所を移しての合同取材会には劇団四季代表取締役社長の吉田智誉樹氏、本作の演出家、ジョン・ランド氏、マーティー・マクフライ役候補の立崇なおと、笠松哲朗、ドク・ブラウン役候補の野中万寿夫、阿久津陽一郎の6名が登壇。
もし、タイムマシンがあったら過去と未来どちらに行きたいか?との問いに立崇は「過去は変えられないので未来に行きたい」笠松は「今、マーティーを演じる上で本当に苦戦しているので高校生の頃に戻ってギターを練習したい」と報道陣の笑いを誘い、野中は「過去に戻れないことがロマンかな、と思う」、阿久津が「今の自分の行動の先に未来があるのでそれを見てみたい」とそれぞれの想いを語っていた。

また、今この作品を上演する意味を問われたジョン・ランド氏は「バック・トゥ・ザ・フューチャーは楽しく、癒しを得られるミュージカル。観劇中は難しいことを考えず目の前で起きることに没頭でき、観劇後は近しい人に思いを寄せたくなる作品だと思う」と自信を見せる。
吉田社長は「四季での上演を決める前に(映画版の)リサーチしたところ、本当に多くの人に愛されており、特に男性ファンが多いこともわかった。新たなお客さまに劇場に足を運んでいただくにはこの上ないミュージカル。ぜひ、お父さんも含めたご家族で観ていただきたい」とコメント。

さらにこの合同取材会で本作の音楽が生演奏であることが立崇から明かされ、野中は四季作品では珍しくアドリブを入れる演出があると即興での台詞に苦心していることを告白。阿久津はデロリアンとのやり取りが面白くなりそうと語り、笠松は登場人物が上演時間中に見せる変化と、ミュージカルそのものに対するセルフパロディも見どころのひとつだと笑顔を見せる。
本作が上演される四季劇場[秋]でも初日に向けて着々と準備が進んでいる模様。2025年を生きる私たちに1955年と1985年の世界がどう映るのか、あの大ヒット映画がミュージカルとしてどんな姿を現すのか、開幕を楽しみに待ちたい。
