2025.03.09 17:00
2025.03.09 17:00
密度がどんどん濃くなっている今が楽しい
──そして最後は舞台『球体の球体』の本島幸司。
本島幸司に関しては、脚本・演出・美術の池田亮さんが僕に充てて書いてくださった役で。「ハンサムライブ」で僕がダンスをしているところを、池田さんが見てコンテンポラリーダンスを踊る芸術家の役にしたいと言ってくださったんですよ。だから本当に、僕だからやらせていただけたという自覚もある役。それに、池田さんに伝えていないはずの僕の心が、セリフにも詰まっていて。本島幸司という役を通して、自分の中に刺さり続けていたトゲみたいなものが抜けたような感覚もあります。

──初主演舞台でもあったと思いますが、主演を務めたことでご自身に何か変化はありますか?
“主演”という感じはあんまりしなかったんですよね。キャストが4人ということもあって、本当にみんなで助け合って作り上げていった感じで。座長らしいことは何もしていないので、よく言う「座長としての責任感」みたいなものも重くのしかかることもなく。ただ、『球体の球体』に出演したことで、度胸がついたような気がします。あの作品はアドリブ祭りだったんです。アドリブ以外のセリフも公演ごとにどんどん変わっていったし。それに対応しているうちに度胸がつきました。「こっちはずっとエンジン吹かしている状態だからどんとこい」みたいな。舞台『インヘリタンス-継承-』では、マインドの軸となる「勇敢に」という言葉をもらい、「球体」では技術としての度胸を得たという感じです。
──マインド的にも、スキル的にも大きなものを手に入れた1年だったんですね。
はい。心身共にスキルアップしたし、目まぐるしい1年でした。そういう意味での“激動の1年”です。

──さらに、知名度や人気が広がった1年でもあったと思います。
はい。ありがたいことに皆さんに見つけていただいて、Xも知らぬ間に公式マークが付きました(笑)。5年前には想像もつかなかったことがたくさん起きていて、カレンダーも昨年度よりも多くの方に予約していただいていてうれしい限りです。2025年もこうしてカレンダーを発売させていただいていることも、ファンの皆さんが僕を応援してくれていることも当たり前じゃないということは自覚しているので、感謝の気持ちも込めて、芝居をし続けたいなと思っています。
──「始めたときはこんな5年後を想像していなかった」とおっしゃっていましたが、このお仕事を始めたときはどのような想いがあったのでしょうか?
当初は「ダンスをしながらお芝居もやりたい」くらいのテンションでした。自分の中では「ダンスの自主公演をしたい」というのが大きな目標で、アミューズに入ったときに「ダンスの自主公演がしたいです」って言ったら、「じゃあ、まずは頑張って、公演に来てくださるたくさんのファンの方々を作らないとだね」って言われて。「その通りだ」と思って芝居を始めました。

──そこはすんなり受け入れられたんですね。
はい。現実的に、集客とかを考えたら「そうだよな」って。「だったらまずはお芝居を頑張ろう」と素直に思える自分がいました。そこからお芝居をやっていくうちにどんどんと、……先程の2024年の3作品なども経て、お芝居を好きになっていきました。
──最初はダンスのために始めたお芝居だったかと思いますが、今はお芝居の面白さや魅力をどのように感じていますか?
何にでもなれること、違う人の人生を歩ませていただけること、ですかね。言ってもフィクションですよ。もちろん事実をもとにしたお話もありますけど、僕が演じている時点でフィクションなわけじゃないですか。だけど自分じゃない他人の人生を請け負って、僕の手で、その人の人生を全うできるわけです。「生まれてから死ぬまでを任せていただけるんだったら、代わりに全うします」みたいな、そういう気持ちになるんですよね。それが役者の魅力だなと思います。

──お芝居、面白いですか?
はい、面白いです。というか、やっと最近、面白さに気付きました。苦しかったときもありますし、お芝居を辞めたいと思うほど苦しいこともありますけど、いい作品に出会って、一つずつが自分の糧になっていって。僕はずっとダンスをやっていたから、芝居をするということに関しては空っぽな瓶みたいな状態で。作品を重ねることによって、その瓶がどんどん詰まっていく感覚なんです。そうやって密度がどんどん濃くなっている今は、すごく楽しいし、面白いなと感じています。
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