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INTERVIEW

10代から育む演劇愛で復興祈念舞台『まつとおね』に挑む

演者として、人として。吉岡里帆が手にした信念と手放した完璧さ

2025.01.28 18:00

2025.01.28 18:00

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「なんでも完璧にしようとするのはやめました」──吉岡里帆ははにかむようにそう答えた。

自分で立てた目標を達成するために、ガチガチのTo Doリストに雁字搦めになっていた20代。でもそんなに完璧になんでもできっこない。そう気づいたおかげで、できない自分を責める気持ちを手放せた。だからだろうか。30代になった吉岡里帆は、20代の頃よりもずっと軽やかで、のびのびとしていて、美しい。

第49回報知映画賞で助演女優賞に輝くなど、俳優としてますます評価を高める吉岡がこの春挑むのは、令和6年能登半島地震復興祈念公演『まつとおね』。大河ドラマのヒロインにも選ばれた前田利家の妻・まつを演じる。

きっとそこには、32歳になった吉岡だから演じられる温かくてたくましいヒロインがいるはずだ。

吉岡里帆

子どもの頃からずっと演劇を好きな理由

──吉岡さんは、まつという女性にどんな印象をお持ちでしたか。

みんなに愛された人、という印象がありました。包容力と母性に溢れ、困難に立ち向かう人の背中をそっと押せる魅力もあれば、たくましさから生まれる語彙力もある。その両方を持っているから、いろんな人から愛されたんだろうなと感じています。

──今回、能登にも行かれたそうですね。

震災以降、能登をニュースで目にする機会はありましたが、地震や土砂崩れもあって大変な場所という印象が先行していたんですね。もちろんその側面から目を逸らすことはできませんが、それと同時に震災以前の能登について知ることも大事だなと思って。

石川県って、お祭りが盛んなんです。私はお祭り会館というところに伺ったのですが、街のみなさんの祭りに対する想いが熱くて。1年で稼いだお金を年に1回の祭りにつぎ込むくらい、お祭りの期間は街全体が盛り上がっているという話を聞いて、すごく活気のある街なんだなとイメージが変わりました。

今回の作品は地震で大きな被害を受けた能登の復興祈念公演であり、たくさんの方に被災地を思いながら足を運んでいただくことも大切です。だけどそれと同じくらい、能登という街がとても素晴らしい街なので遊びに来てほしいという想いを持って演じることが大切だと今は考えています。

──祭りが盛んという意味では、吉岡さんの故郷である京都と共通点がありそうですね。

そうなんです。京都も毎日のようにお祭りがあるので(笑)。お祈りのときも祭りをするし、収穫のお祝いでも祭りをする。いろんな感情をエンターテインメントに落とし込むという点では通じるものがあるなと思いました。

みんなで頑張ろうという気持ちを共有しようとしても、真面目に語るだけでは伝わりきらない。豪快に盛り上がることでしか分かち合えない感情というのがあって。祭りってそのためにあるんだなと京都で過ごしながら感じていました。

石川のお祭り会館で過去の祭りの映像を観させていただいたのですが、このお祭りにはこんな意味があるんですという説明のテロップがついていて。それを見ていると、祈りだとか、一つ一つにちゃんと意味が込められているんですね。今回の祈念公演もそんな昔からの祭りの一つに並べるような、祈りと娯楽の二つの面を出せればいいなと思っています。

──演出を務めるのは、歌舞伎俳優の中村歌昇さん。この布陣から見ても、なんとなく通常の舞台より古典芸能のエッセンスも強めなのかななんて想像しています。

私自身、子どもの頃からよく親に歌舞伎に連れて行ってもらったり、バイトを始めてからは時間を見つけて自分のお金でもよく観に行っていたので、中村歌昇さんとご一緒できるのが楽しみです。

──当時の吉岡さんは、歌舞伎のどんなところに惹かれていたんでしょう。

そもそも私が演劇や映画を好きなのも、非日常のものに対して、いろんな人がすごく工夫を凝らしているところなんです。客席に着いて、これから物語が始まるぞって待ってるだけでワクワクするというか。歌舞伎も、あの頃の私ではちゃんと理解できない演目もあったと思うんですけど、それでもただただ美しいものを見て心が動いたり、底知れないパワーに圧倒されたり。その感動を浴びたくて、よく観に行っていました。

──今も多忙な中、よく観劇に行かれていますよね。演劇というカルチャーへの吉岡さんの愛を感じます。

今演じる側として人前に立たせていただいていますが、元来はただのファンなので(笑)。演劇の手づくり感が大好きなんです。この間、ロンドンで『千と千尋の神隠しSpirited Away』を観たんですけど、いろんな神様をすべてパペットのように手で動かして表現していて。たとえ言葉はわからなくても、人の手でやっているさまを見て人が感動するのは万国共通なんだなと実感しました。きっと舞台に携わるみなさんがどうやったらこのシーンが成立するだろうといろいろ考えて、工夫の末に生まれた表現だと思うんです。それって愛情がないとできない。だから、私は演劇が好きです。

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吉岡里帆をずっと救い続けている一曲

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作品情報

令和6年能登半島地震復興祈念公演『まつとおね』

令和6年能登半島地震復興祈念公演『まつとおね』

2025年3月5日(水)~3月23日(日) 全20回
会場:石川県 能登演劇堂
チケット:一般¥7,700(税込)/障がい者¥5,500(税込)

チケットはこちら

キャスト&スタッフ

キャスト:

吉岡里帆(まつ役) 蓮佛美沙子(おね役)

 

ナレーション:加藤登紀子

原作・脚本:小松江里子

演出:中村歌昇

音楽:大島ミチル

企画・プロデューサー: 近藤由紀子

主催:公益財団法人演劇のまち振興事業団

1993年1月15日生まれ。京都府出身。2015年、『あさが来た』でNHK連続テレビ小説に初出演を果たす。第46回 日本アカデミー賞主演女優賞、第49回報知映画賞助演女優賞を受賞。現在映画、ドラマ、舞台などジャンルを問わず活躍している。近作に映画『怪物の木こり』(2023)、『まる』(2024)、『正体』(2024)、ドラマ『ガンニバル』(2022)、『時をかけるな、恋人たち』(2023)、『忍びの家 House of Ninjas』(2024)など。待機作に1月19日より放送開始のTBS日曜劇場「御上先生」、2月7日公開の映画『ファーストキス 1ST KISS』、3月19日配信開始の『ガンニバル』シーズン2など。

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