2024.12.07 18:00
2024.12.07 18:00
音源を聴いて何が必要か、すごく詰めることができた
──サウンド的には今回のアルバムを通してのイメージはあったんですか？
宮崎 サウンドは……こだわってはいるんですけど、各楽曲にいちばんいいものをっていう。でも粗くは絶対ならないようにっていうのはメンバーにはそれとなく意識させてたかもしれないですね。各楽器のプレイに関しては必ずそのときのいちばんいいものをごまかさずに入れる。で、その上に乗っかっていくキラキラっとした電子的な音みたいなのは入れすぎ注意。やっぱりどんどん音を足していってしまうとバンドのコアな部分や歌詞の部分が隠れていっちゃうので。そこは大事にしていたかもしれない。
──それこそ青盤は本当に緻密に作った感じがあったじゃないですか。あれを聴いて今回アルバム聴くと1曲目にガツンとバンドサウンドが来る「SHUJINKO」が聞こえてくるのが新鮮だし、意外でした。
宮崎 絶対意外ですよね。青盤に続いてどうなっていくんだろうっていうので、いちばん意外なのを1曲目にしてみたいなって。だったら逆にバンドの王道をぶつければいいんじゃないかって。それによって他の楽曲たちの異質さも際立つし。ああいうノリがいい曲も僕は大好きなんで。素直にかっこいいと思えるような楽曲は好きなので、これもちゃんと嘘なくバンドのいちばんいいところ、「おいしいなあ」と感じる部分を全部入れていきました。
※12月13日(金)21:00プレミア公開
──しかもそのバンドサウンドも、以前のクジラ夜の街とは違うものになったと思うんですよね。おっしゃったようなきめ細やかさというか、目が行き届いている感じっていうか。
山本 音作りとかをするときに音色を選ぶときのマインドが変わりましたね。今まではわりと自分が出したい音を出すみたいなことが多かったんですけど、今回はベーシックを録ってからギターを録るまでにちょっと時間が空いたりして。そこで音源を聴いて何が必要か、どの辺の帯域が空いてるかを確認できたり、レコーディングブース入ってからも最初に作って弾いて確認してみたいな時間を作れたんです。そこで自分の中でも妥協しなかったというか、すごく詰めることができたっていうのは大きかったですね。あと、時期によってなんとなく自分のブームというか、影響を受けるものがちょっとずつ変わってくるんですけど、今回はソロギタリストとかっていうよりも、スタジオミュージシャンみたいな人たちに影響を受けている部分が多くて。バンドになじむようにとか、一晴が表現したいものの助けになれるようにっていう気持ちがすごい強かった。でも、それより前に録っていた「Saisei」のときとかは「自分を出していきたい」みたいな気持ちがあったから、そこのバランスがおもしろいのかなと思います。
──うん、「SHUJINKO」のバンド感と「Saisei」のバンド感って全然違うんですよね。「Saisei」はみんなの見せ場がちゃんとあるし、それぞれ主張している感じがするんだけど、「SHUJINKO」はもっと曲ありきで構築されている感じがする。
山本 そうですね。「星に願わない」とかもバンドを大事にしているようなギターができたかなと思います。
──うん。秦くんのドラムについてはいかがですか？
秦 1個、自分的に「この曲のドラムの音めっちゃいいな」っていうのがあって、それが「せいかつかん」なんですけど。このアルバムはテックさんが入ってくださっている曲と自分ひとりで音を作った曲があって、「せいかつかん」はひとりで作ったんです。すごいデッドな感じの音にしたんですけど、こういう曲って、生で出そうとすると「こういう音やるんだったら打ち込みの方がいいよね」ってなりがちなんですけど、この曲は生のよさは残りつつも、めちゃくちゃデッドにできたんで、自分で聴いても気持ちいいって思います。
──「せいかつかん」は音的な意味でもバンドとして1個階段を登った感じがありますよね。
秦 これをバンドでこういう感じでやってる人は結構いないんじゃないかなと思っています。いたとしてもこの絶妙なバランス感はあんまりやってない。デッドなんだけど、ドライなんだけど、99%ドライで1%、ちょっとウェットなところがある、みたいな。そのウェット感っていうのはバンドでしか出せない成分だったりするので。
──うん。この曲を最後に持ってこれたっていうのがバンドにとってめちゃくちゃでかいんじゃないかな、と思います。「それだけ」から「せいかつかん」に至る流れがアルバムのクライマックスになっていますが。
宮崎 「それだけ」を最後にするかなと思ったんですけど、それだとちょっとつまんないなというか、きれいにいきすぎているなって。結局「思いは包み隠さずに言いましょう」みたいな、すごく嫌なハッピーエンドだなって（笑）。俺、そういうの嫌いっていうか、やっぱりちょっと皮肉で終わりたいじゃないですか。皮肉とはいえすごく聞き応えがあって、聞き心地が良くて、っていうところで終わりたいなと思って。
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