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INTERVIEW

『八犬伝』で初共演、二人はどう表現と向き合っているのか

磯村勇斗×黒木華が思う才能の支え方 転機をくれた恩人の言葉とは

2024.10.28 18:00

2024.10.28 18:00

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映画『八犬伝』で初共演を果たした磯村勇斗と黒木華。役所広司演じる『南総里見八犬伝』の生みの親・滝沢馬琴を父に持つ宗伯と、その妻・お路を演じている。

のちの作品に多大な影響を与えた名作を書き上げた一方で、妻・お百からは気の滅入るような嫌味と愚痴をぶつけられていた馬琴。そこには、アーティストとその家族のあり方の難しさが垣間見える。

表現の道を歩む磯村と黒木は、馬琴とお百の関係に何を思っただろうか。

黒木華、磯村勇斗

嫁いできたという覚悟がお路の原動力だった

──お二人は本作が初共演ですが、お互いに対してどんな印象をお持ちでしたか。

磯村 いろんな作品を拝見していて、魅力的な女優さんだなという印象があったので、クランクインする前からご一緒できるのが楽しみでした。

黒木 私もです。本当にいろんな役をされていらっしゃるじゃないですか。すごく引き出しの多い役者さんだなという印象があって。だからこそ、ご本人がどういう方か見えてこないというか。

磯村 そう言ってもらえるのはうれしいですね。

黒木 私自身、そういった役者さんが好きなので、ご一緒するのが楽しみでした。ただ、残念ながらあまり一緒のシーンはなかったんですけど。

『八犬伝』本予告

磯村 そうなんですよね。今回、二人で同じ場面に出ていることがほとんどなくて。

黒木 だから、あんまり現場でお話しもできなかったですよね。

磯村 何かのときに、黒木さんがお菓子を食べいらっしゃって、これ美味しいっておっしゃっていませんでした?

黒木 そんなことありましたか(笑)。

磯村 そのとき、僕にも美味しいですよと声をかけてくださって。それはすごく覚えています(笑)。

黒木 本当ですか。どうやらそんなことがあったみたいです(笑)。

──偏屈な父・馬琴と、ヒステリックな母・お百に挟まれて育った宗伯。磯村さんは宗伯をどう演じようと考えながら現場に入りましたか。

磯村 いちばんは、父の馬琴に対し、どれだけ忠誠心と敬意を持っていられるかですね。特に青年期の最初の頃はそこが大事だったので、現場では役所(広司)さんの言葉をしっかり受けて、ピシピシペコペコしていようと。

磯村勇斗

──父にいろいろと無茶を言われて、「だったらご自分でおっしゃってください」と半泣きで反論するところが、実にキャラクターが出ていました。

磯村 あれは、彼が頑張って言えた唯一の反論なんじゃないですかね(笑)。

黒木 可愛い(笑)。

磯村 きっとドキドキしながら言ったんでしょうね。そこから年齢を重ねていくにつれて、宗伯は病に冒され、体が弱っていく。そこのニュアンスをしっかり立てることができれば、この物語における宗伯というものは見えてくるんじゃないかなと考えていました。

『八犬伝』より ©︎2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.

──そんな宗伯に代わり、失明した馬琴の執筆を手伝うのが、宗伯の妻・お路です。控えめそうに見えたお路ですが、馬琴の厳しい言葉にも負けずに喰らいついていきます。彼女の原動力は何だったと思いますか。

黒木 まずは嫁いできたという覚悟ですよね。今とは時代が違いますから、夫の家に入る重みも全然違っていたんだと思います。それに、お路はずっと馬琴さんや宗伯さんが命を懸けて物語を書き続ける姿を見てきた。この物語を完結させることが、この家に嫁いできた私がするべきことなんだという想いがあったんだと思います。

──そう考えると、あまり感情を表に出す人ではないですが、お路はとても強い女性だった気がします。

黒木 芯の強さがありますよね。愚痴も文句も言わず、粛々とやるべきことをやっていますし。

磯村 内心ではすごい溜めていたんだろうなと思います(笑)。だから、夫としてはちょっと申し訳ないです。アクの強い義理の両親に挟まれて。宗伯が元気だったら、もっといろいろ変わっていたんでしょうけど。

黒木華

──劇中では、二人の夫婦生活が描かれることはほとんどありませんでした。お二人は、宗伯とお路はどんな夫婦だったと思いますか。

黒木 お路は性格的にもそんなに前に出る人間ではないので、馬琴さんのお手伝いをする宗伯さんの邪魔をしないようにしていたんじゃないかなとは思いました。

磯村 宗伯としても妻への愛情はちゃんと持っていたとは思うんですけど、それ以上に父親との関係性が濃くて。馬琴の手伝いをすることに気持ちが傾きすぎて、どこか家庭を忘れてしまう瞬間はあったんじゃないかという気がしますね。

黒木 それはあるかもしれません。でもきっとお互いそばにはいたと思うんですよね。そして、お路はそれが妻の自分にできることだと考えていたんじゃないでしょうか。

磯村 そうだとありがたいですね。家族の時間はなかなかとれなかったかもしれないですけど、しっかり愛はあったし、いつも支えてくれるお路の優しさは宗伯もちゃんと感じていたと思います。

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もし仕事とどっちが大事?と聞かれたら

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作品情報

八犬伝

©︎2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.

©︎2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.

八犬伝

2024年10月25日(金)より全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
2023/日本/G

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

原作:『八犬伝 上・下』山田風太郎(角川文庫刊)
監督・脚本:曽利文彦
出演:役所広司、内野聖陽、土屋太鳳、渡邊圭祐、鈴木 仁、板垣李光人、水上恒司、松岡広大、佳久 創、藤岡真威人、上杉柊平、河合優実、栗山千明、中村獅童、尾上右近、磯村勇斗、大貫勇輔、立川談春、黒木華、寺島しのぶ
製作:木下グループ
制作プロダクション:unfilm

1992年、静岡県出身。高校時代から地元の劇団に入団し、2014年に俳優デビュー。2017年の連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)でお茶の間に広く知られると、「今日から俺は!!」(NTV)、「サ道」シリーズ(TX)、大河ドラマ「青天を衝け」(NHK)、「恋する母たち」(TBS)など話題のドラマに続々と出演。2022年には映画『ヤクザと家族 The Family』(21)『劇場版 きのう何食べた?』(21)で第45回アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。『ビリーバーズ』(22)で映画初主演。『PLAN 75』(22)ではカンヌ国際映画祭のレッドカーペットも踏んだ。2023年は『最後まで行く』『波紋』『渇水』『月』『正欲』と5本の出演作が公開され、『月』で第47回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。今年はドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS)の一人二役も記憶に新しく、秋には映画『八犬伝』(24)の公開も控える。

1990年3月14日、大阪府出身。10年にNODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」でデビュー。14年にベルリン国際映画祭にて『小さいおうち』で日本人女優最年少での銀熊賞、『浅田家!』(20)で第44回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。主な出演作は、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)、『日々是好日』(18)、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(21)、『せかいのおきく』(23)、『ほつれる』(23)、『キリエのうた』(23)、『ゴールド・ボーイ』(24)、『青春18×2 君へと続く道』(24)など。待機作には主演作『アイミタガイ』がある。

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