本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第15回
「音楽を突き詰めたい」乃紫と考える、長く活躍し続けるために必要なこと
2024.10.16 19:00
2024.10.16 19:00
日本を代表する音楽プロデューサー本間昭光と現代のセルフプロデュースに長けたアーティストとの対談を送る「本間昭光のMUSIC HOSPITAL」。
今回のゲストは代表曲「全方向美少女」が現在まで総再生数19億回を突破するなどバイラルチャートを席巻し、TikTok上半期トレンド大賞2024のMUSIC部門も受賞したシンガーソングライター、乃紫。活動開始から2年にして「ROCK IN JAPAN 2024」や「SUMMER SONIC 2024」などの大型フェスにも出演を果たし、9月には韓国公演も成功させるなど、今もなお著しいスピードで成長を続けている。
そんな令和を象徴するアーティストである乃紫には本間も興味津々。対談はいつもより長尺に、そして濃密な時間となった。
毎回さまざまなジャンルの曲を作る理由
本間 活動はじめて何年くらいですか?
乃紫 この夏で2年ですね。
本間 2年でここまで! セルフプロデュースでほぼほぼやってるじゃないですか? それは元々「2年後こんなふうにやりたい」っていう思いを持ってやってた感じなんですか?
乃紫 徐々にですね、やっていくうちに。それで言うと全然達成してなくて、「これを解決しなきゃいけないんだ」みたいな問題がどんどん出てきますよね。
本間 やっていくと次から次から出てくるよね。昔のインタビューとか見てると、「どうやればうけるか?」とか「どうやれば撮影されやすいか?」とかすごく考えてやってらっしゃる。子供の頃からそんな感じだったんですか?
乃紫 音楽始めてからいろいろ考えるようになりましたね。性格はずっと変わらないけど……。
本間 自分も同じような感じだったんですよ。例えば90年代のカラオケ文化全盛の時だったら、TikTokでこう撮られたいと思うのと一緒のように、カラオケで女の子と一緒に行って男がワーッと歌った時にかっこいいって言われるような曲を書こうとかね。そういう「うけを狙う」って言ったら軽い言い方なんですけど、そういう意識を持ってて。だからその時代に応じて狙いを持ってやってるのがかっこいいなと思って。何よりもサウンドがかっこいい。
乃紫 ありがとうございます。
本間 毎回違うアプローチするじゃないですか。ルーツとしてどういうものがあるのかなって。
乃紫 一つのジャンルに固執しないっていうのはありますね。今まで広く浅くいろんなジャンルを聴いてきたんですよね。それこそピアノ・バイオリンを習ってた時はクラシックを聴いていたし、中学生くらいの時は邦ロックを聴いてたし、最近はK-POPもヒップホップも聴くし。「これ同じ人なんだ」「違う人の曲かと思ったらまた乃紫だった」みたいなことにしたくて、いろんなアプローチをしたいと思ってます。
本間 アーティスト自身がそういう考えを持つっていうのが本当に今っぽいというか、かっこいいなって思っていて。1曲目から聴いてて「あれ、また変わってる」っていうのがある。けど全部のフレーズに嘘がないから、すごい研究してんだろうなって。広く浅くって言うけど、僕はめちゃめちゃ深いと思ってて。ギターを中心に作るんですか?
乃紫 コードとか音楽理論が全くわからないので、ギターと内臓の音源、キーボードをいじりながらとか、何を最初に持ってくるかは曲次第ですね。コードなのか歌詞なのかメロディーなのか、曲のコンセプトなのか。それによって変えていきます。
本間 完全にプロデューサーですね。本当の意味のセルフプロデュースって感じがする。最新曲の「踊れる街」のギターの音色なんかね、よくこれ選ぶなっていうのがいっぱい入ってて。ギターリフもそうだし。これ全部自分でやってんのかな?って思ったりしてたわけ(笑)。
乃紫 ありがとうございます(笑)。今まで13曲ぐらい作ってきて、編曲の方とかプロデューサーを入れたことはほとんどなくて。1回だけ「ホットレモン」っていうR&B系の曲で打ち込みの人を入れたんですけど、あとの曲はいなくて、基本的にギターのリフとかは私が打ち込んだものをギタリストの方がお願いして弾いてもらう。だからギタリストの方には「やってない人だから思いつくリフなのかな」と言われます。
本間 ああ、そうだね。
乃紫 キーボードで弾くから、制限がないというか。キーボードで作って、それをただ上手い人に弾いてもらう。楽器は全然下手なんですけど。
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