世界が注目する5人組バンドが傑作アルバムを完成させ来日
Fontaines D.C.が語る変化の背景、日本に感じる“ロマンス”とは
2024.08.27 18:30
2024.08.27 18:30
アイルランド・ダブリン出身の5人組バンド、Fontaines D.C.が4thアルバム『Romance』を8月23日にリリース。先行リリースされていた2曲(「Starburster」「Favourite」)の時点で世界中から大きな期待を寄せられていたが、その全貌がとうとう明らかになった。
次世代のポストパンクバンドとしてシーンに登場した彼らだが、最新作から漂う空気は退廃的で多層的。英米におけるロック復権を牽引する存在として評価された初期作のイメージを大きく覆す転化、または進化をしながらも、今作に触れた誰もが手放しで賛辞を送る大傑作となっている。
現在はロンドンを中心に活動するフォンテインズは、来年7月にキャパ4万人規模のフィンズベリー・パークでの単独公演も決定。今回はフジロックフェスティバル出演のため2度目の来日を果たした5人を東京でキャッチし、コナー・カーリー(Gt)とトム・コール(Dr)の2人に話を聞いた。
やっと頭の中の理想に追いついてきた
──昨年の来日ツアーも大盛況でしたが、今回はフジロックに出るための来日ですね。日本の夏はすごく暑くて大変じゃないですか?
トム・コール(Dr) やっぱりすごく暑くて。地球の温暖化を直に感じるよ。
──YouTubeでグラストンベリー・フェスティバルのライブも拝見しました。新曲の盛り上がりがすごかったです。
コナー・カーリー(Gt) 新しい曲に対して、自分たちもすごくエネルギーを感じているので、すごく楽しく演奏してるよ。
トム 新しい曲を聴いて覚えてきてくれているというのをすごく感じるから、やりがいがあるよ。
──前作はブリッド・アワードで「インターナショナル・グループ・オブ・ザ・イヤー」を受賞。今すごく上り調子ですが、世界のどこに行っても、ステージに立っていて「どんどん大きくなってるな」という実感はありますか?
トム 賞を取ったことによって自分たちが大きなバンドになったっていうよりも、もっとより幅広いオーディエンスに聴いてもらえるようになったことの方が大きいかなと思う。長くやっているのでもちろん観客数が増えてるんだけど、大きくなったというよりは、自分たちがずっとやってきたことが少しずつ身になっているのかな。
カーリー 僕たちは始めた時からビッグなバンドだと思っていたから、やっと自分たちの頭の中で考えていた理想みたいなものに追いついてきたかなと思うよ。
──地元ダブリンの仲間同士で組んだバンドだと思うのですが、過去のインタビューではずっと「俺たちはダブリンのことを愛しているし、ダブリンを見ているし……」と答えていました。どんどん世界を見ていかないといけなくなった今もそれは変わりませんか?
トム もうロンドンに長いこと住んでいて、ダブリンの生活からはかなり距離を置いているので、ダブリンに対してはもう少しフラットな見方をするようになってきているかな。でもロンドンに住んでいても外国人だっていう気持ちはあるね。
カーリー ダブリンというよりアイルランドという国そのものは自分たちにとってはすごく大事なもので、その意識はすごく大きいけど、ダブリン自体は実家があるところという感じで、今住みたいかと言われたら住みたくはないかな(笑)。帰る場所という感じだね。
──ニューアルバム『Romance』のリリースタイミングで〈XL RECORDINGS〉にレーベルを移籍されましたが、それはやはり、よりワールドワイドに自分たちの音楽を届けるために?
カーリー ちょうど前のレーベルとの契約が切れたところで、新しいレーベルを探そうとしていた時に契約に至ったので、このアルバムのために今契約し直したというわけではなくて、単純にタイミングが合ったという感じだね。
トム 〈XL RECORDINGS〉からオファーがあったんだけど、とても歴史が長く90年代からシーンを支え続けてきて、ビッグなミュージシャンを沢山輩出しているようなレーベルなので、そこと契約することにはこちらも積極的というか、嬉しかったね。
──今作『Romance』は今まで以上に深みと広がりがあって、サウンドスケープが気持ちいいアルバムだと思いました。特にシンセサイザー、ストリングス、あとアコースティックギターと多重コーラスなどはこれまでなかった要素ですよね。
カーリー 曲を書いた時はライブで再現できるものにしようという考えがあったんだけど、もうちょっと自由な感じで音を足してみようとだんだん変わっていってね。前にやったことないようなストリングスとかを重ねていくうちに楽しくなって、そういう作り方になったんだ。
──もう世界中で何度も聞かれてると思いますが、「Starburster」のあのダミ声──(声真似をしながら)どこから生まれたんでしょう。
2人 ハハハ!(笑)
トム 実はあれはグリアン(Vo)がロンドンの駅で過呼吸になった時の声を再現しているんだ。あの声については、自分たちは想像してなかったくらいいろんな人が興味を持ってくれて、いろんな解釈をしてくれているのがびっくりしてるよ。
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