2024.04.21 17:00
多彩な作品に出演するたびに記憶に残る好演を見せる遠藤雄弥と森田想。奇しくもともに12歳から13歳にかけて映画デビューした両者は、いまや日本映画界に欠かせない存在となった。
二人が共演する映画『辰巳』が、4月20日(土)に渋谷ユーロスペースほかで公開を迎えた。『ケンとカズ』の⼩路紘史監督が8年ぶりに生んだ新作は、希望を捨て裏稼業に生きる男・辰巳(遠藤雄弥)と最愛の家族を失った少女・葵(森田想)が復讐の旅を突き進む、日本映画の枠を超越せんとするノワール作品だ。小路監督が完成に5年を懸けた本作。飾らない二人の会話に、「全員優しかった」という撮影の雰囲気を垣間見れた。
冗談抜きで大傑作が生まれた
──とにかく緊張感のある作品でした。オン・オフの切り替えはできていましたか?
森田想(以下、森田) みんなバッて集中するタイプでした。
遠藤雄弥(以下、遠藤) それぞれのペースで現場に向き合っていたね。
森田 すごい集中しなきゃいけないシーンは、各々のペースで作って本番に臨んでいたと思うんですけど、基本的にはめちゃくちゃ平和でした(笑)。
遠藤 平和だった(笑)。作風とは相反するように平和。みんないまだに仲良いしね。
──資料でも兄貴役の佐藤五郎さんのおうちで食事もされていたとありました。
遠藤 集まる会があったりとか、みんなで温泉に行ったり。現場では仲良くご飯食べたりとかしました。
森田 現場ではスタッフさんも少ない人数でやっていて、それに伴う待ち時間があったので、その時間でお菓子食べて、喋って。全員で協力して作っている感が強い現場で、それとは似つかない緊張感はなぜ流れていたのか……っていう感じですね。
遠藤 撮影のこと覚えてる? 5年も前じゃない。
森田 途切れ途切れには覚えてるんだけど、「あのシーンのときどうだった」とかはあんまり。結構経ちましたね。
──完成作を見返してみてどうでしたか?
遠藤 僕は最初に観たとき、手前味噌ですが、大感動しました。めっちゃいい映画だって。
森田 自分イケてた?
遠藤 イケてたし(笑)、大傑作が生まれたなって息をのみましたね、冗談抜きに。どうだった?
森田 めちゃくちゃ面白いなあと思いました。仲良くなったみなさんと一緒にやった作品がこんなに完成度高く、凝縮された感じになっていて。上映時間的には長い方かもしれないですけど、話がわかってる側からしても早く駆け抜けていった感じがありました。とはいえいろんな人が観てくれてどう思うかは気になるんですけど、自分的にはすごく面白い作品に参加できたなっていう興奮がありました。
──体感時間があっという間だったのは、説明的ではないシーンが多かったからですかね。お互いに目と表情でいろんなことを交わすシーンが印象に残っています。さすがにここまで顔同士が近づくこともないじゃないですか。
遠藤 ないですね。
森田 これ近いって思ってました?
遠藤 あんまり思ってないね。
森田 ですよね。人がキレたらこれくらい近づくよなっていうくらいで……。
遠藤 確かにね(笑)。
──お二人はこれまで幅広い役柄を演じてこられましたが、本作への出演は決まったときのお気持ちはいかがでしたか? 過去の足跡があったからたどり着いた感覚だったのか、それとも作品に呼ばれたような感覚だったのか。
遠藤 オーディションを受けたんですが、そのきっかけが小路監督の一作目の『ケンとカズ』という映画のケン役を演じていたカトウシンスケさんだったんです。『ONODA 一万夜を越えて』という映画で共演させていただいたんですけど、その際に『ケンとカズ』の話を聞かせていただいて、「遠藤くん、きっと小路さんと合うから次のオーディション行ってみたら?」と。その撮影はカンボジアでしていたのですが、帰国してすぐオーディションあるという話で、オーディションのリンクを送ってくださって。実際にオーディションを受けて、そこからの縁で今回辰巳を演じることになったという経緯なんです。
森田 私もオーディションなんですけど、オーディションで選んでいただいた作品って、名前を挙げていただいて受ける作品とは違う幅の役をやれることが多いんです。当時は10代だったので学生ものとかを頑張ってる途中で、大きな代表作はない状態だったんですが、いろんな現場を経験してきて、いろんな人にアドバイスをもらって受けたオーディションが『辰巳』で、そのときに自分が持てる力で受けたら選んでいただいて……自分の中ではそういう流れです。自分が頑張って得た役だなと思います。
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