映画をこよなく愛する2人が映画の素晴らしさや影響を語る
岡奈なな子&テラシマユウカが振り返る2023年の“シネ活” 一緒に観たい作品と個人的ベスト5は?
2023.12.19 19:00
2023.12.19 19:00
今年観て面白かった作品を5つ選ぶなら
テラシマ 私が選んだ1つ目は『ヴァチカンのエクソシスト』です。
岡奈 それ、私も選んでる! やばいですよね。演出が男の子の好きなゲームみたいな感じがしません?
テラシマ ずっと派手じゃないですか? 悪魔ものは最初地味だったり、ちょっとずつ力を増していくものが多かったりするけど、最初から容赦ないんでありがたかったです(笑)。
岡奈 今まで悪魔系の映画を観て土台を作っておいてよかったなって思いました。いきなり悪魔デビューが『ヴァチカンのエクソシスト』だったらまた印象は変わっていたんだろうなって。
テラシマ ここしばらくの悪魔系で断トツよかったです。
岡奈 私の1つ目はクエンティン・タランティーノの『ジャンゴ 繋がれざる者』です。
テラシマ まだ観たことなくて! でもタランティーノは好きです。『レザボア・ドッグス』が一番好きですね。
岡奈 いいですね! 『ジャンゴ 繋がれざる者』はタランティーノの中で一番観やすくて。西部劇の映画で165分あるんですけど、体感1時間ぐらいで難しいこともなくて、とんとん拍子に話が進んでいくので、タランティーノ初心者の人も勧められる作品だと思いました。
テラシマ 私の2つ目は『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』です。長いんですけど(笑)早稲田松竹のミニシアターで観ました。ずっと頭の片隅にあったので行ったんですけど、198分ある映画で、ドキュメンタリーみたいだけど映画なんです。ある1人の女性の生活を見ていくんですけど、今年一番衝撃だった作品です。フェミニズム要素もありつつ、何も起きないところがいい。198分も苦じゃない映画でした。
岡奈 ポスターがいいですね! あと私は『バトル・ロワイアル』を観返しました。子供の頃に観た時に「北野武さん、すごい嫌な役だな」と思ってたんですけど、大人になって観返すと、北野さん側になるんですよ。「なんて生意気な子どもたちなんだ」って思ってしまう。大人になっちゃったんだなって感じる、今観るととてもいい映画でした。
テラシマ 私も小さい頃に感じた北野武さんへの謎の怖さがあって観られてないんですよね。今観たら変わっているかも……。
岡奈 幼さのある栗山千明さんも可愛くて、それだけでお腹いっぱいになります。
テラシマ それで言うと、私はまだ『スパイダーマン』が観れなくて。スパイダーマンの悪役って、他の映画に比べてめっちゃ悪い奴に見えていたんです。「さすがにそこを通らずして映画を語るのは……」っていうのもあるので、観なきゃとは思ってるんですが。
岡奈 全然大丈夫ですよ。私は『アベンジャーズ』を老後の楽しみにしてるんで(笑)。
テラシマ (笑)今年観た中で『バビロン』もよかったです。観る人を選ぶ映画ではあるんですけど、サイレント映画からトーキーに移り変わる時代を描いていて、めっちゃ味濃いものを食べた感覚になりました。同じ時期に『エンパイア・オブ・ライト』とか、映画好きが観るような映画を続けて観ていた中で、ハリウッドの酒池肉林な感じを観られて「なんだかんだこういうの好き」って改めて思いましたね。
岡奈 色んな映画を観たからこそ、こういう映画にグッとくるというか。
テラシマ 映画が好きな理由がちゃんと詰まっていました。
岡奈 今年のTOP5ではないんですが、それで言うと私は『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』っていうドキュメンタリーが好きな映画TOP5に入りますね。キアヌ・リーヴスが色んな監督にフィルムからデジタルに切り替わることについてインタビューをしていくんです。配信で観て、感動してDVD買いました。
テラシマ こういう映画をちゃんと観なきゃ!って最近思っていました。
岡奈 いいですよ。教材みたいな感じで。あとは今年観た中だと、クライムアクション映画の『ブルータル・ジャスティス』もよかったですね。メル・ギブソンとヴィンス・ヴォーン、犯人たちもずっと会話をしていて、静かなんですけどいきなり銃撃戦が始まったりして、結構渋めの映画です。画がめっちゃ綺麗なんです。
テラシマ 4つ目は、また映画についての話なんですけど『フェイブルマンズ』もよかったです。
岡奈 あー! スティーブン・スピルバーグですよね。自分の映画を自分で撮るの変だなって避けてたんですけど観ます。
テラシマ なんでこんなに観られてないだろう?って思いました(笑)。スピルバーグが今まで撮ってきたエンターテインメントが詰め込まれていて、『バビロン』と一緒なんですけど、映画が好きでよかったなって思いました。
岡奈 いいですよね。元気な時に自分の映画を撮って記録に残せて。普通、監督が亡くなってからそういうのって出るじゃないですか。
テラシマ 自分のいつの時代を描くんだろう?って思っていたんですけど、その描き方がめっちゃよかったです。
岡奈 映画のお仕事をさせていただいていると、日常でも「好きな映画なに?」ってめっちゃ聞かれません?
テラシマ めっちゃ聞かれます。すぐ出てこないんですけど、自分の中にはちゃんとあるんですよね。私はグザヴィエ・ドランの『Mommy/マミー』がめっちゃ好きで。中学生の時に母親とけんかして家出して、おばあちゃん家に逃げ込んだ時に連れて行ってくれた映画なんです。親とけんかしてきた子に『Mommy/マミー』を観せるなんて、なんて嫌味なんだって思ってたんですけど、大人になって効いてくる気がして、自分の中で変わらない1位です。
岡奈 私もグザヴィエ・ドランが好きで、『わたしはロランス』のタトゥーが入ってます。 あと今年のアニャ・テイラー=ジョイのハロウィンコスプレを見て思い出したんですけど、『ザ・メニュー』と『ノースマン 導かれし復讐者』も今年の中でよかった作品に入りますね。どっちもいいですね!
テラシマ 『ノースマン 導かれし復讐者』は、私ってこういう系の映画が好きなんだって思いました。
岡奈 『ノースマン 導かれし復讐者』を観て『ウィッチ』をめっちゃ思い出して、この女優さんいいなって思いましたね。
テラシマ 私は最後にウェス・アンダーソンの『アステロイド・シティ』ですね。ウェス・アンダーソンが好きなんですけど、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』はあまり刺さらなくて。『アステロイド・シティ』は珍しく予告を観たんです。でもちゃんと裏切ってくれたというか、嘘の予告だと思いました。思ってもない話が始まって、脳みそぐちゃぐちゃにされて終わるみたいな。
岡奈 ウェス・アンダーソンって観返したくなりますよね。画もいいからどこ見てもいいし。
テラシマ リズム感もいいし。「よくわからなかったね」が一番似合う映画かもしれないです。
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