2023.12.08 17:00
秘密の花園。
なんとも想像を掻き立てられる響き。
いつ覚えた言葉なのかもわからない。
作品自体なのか比喩として耳にしてきたのか、メディアを通してなのか、はたまた誰かから伝え聴いたのか。
いずれにせよ、どことなくいつかこの禁じられた男子禁制的なものに覗き見触れるような時があるならばひとつ大人の階段を昇るのではないかと、思春期真っ只中、男子校出身まさに男子高校生の私は思っていた。
そしてそれはある日突然訪れた。家庭科の実習授業を姉妹校である近隣女子校にて実施するため選ばれし者が行けることになったのだ。
この時ばかりは担任の先生がオビ=ワン・ケノービに見えた。
そして見事選ばれし者だった私の道中の足どりは軽くまさにスカイウォーカーだった。
訪れた刹那、目を疑った。窓から多くの女生徒達による英雄凱旋のようなお手振りの雨あられ。
いまだかつて踏み入れたことのない楽園とはこのことなのか。
汗の匂いなど毛頭せず、なんなら毛頭からはシャンプーの香りすら漂うように感じられた。思春期真っ只中の男子校生に夢を見させてくれた女の園……
そう本日の作品は『女の園の星』。
作者は以前『カラオケ行こ!』でもこちらでお世話になった和山やま先生。
舞台は女子校。そしてそこに勤務する星先生がこの物語の主人公だ。
あーよくある禁断の恋の話ね。
違います。全く持って違います。
記念すべき第1話の根幹を成すのは学級日誌。
その日の日直が書き記すあれです。そしてその日誌の備考欄に生徒達が絵でしりとりを始めており、突然星先生が理解できない絵との出会う所からこの物語は始まる。
ちなみに謎解きとかの類ではありません。星先生にとってはそうかもしれませんが。
こんな些細な日常の片隅にスポットを当ててるだけなのに、個性派キャラクター達の多種多様の秀逸な例えや爆発するワードセンスに気がつけば声出して笑います。
普段ほぼ動じず表情もあまりかわらない星先生。スタンドカラーのシャツを身にまといお酒が入ったときだけは感情が右往左往。
その姿が一番好きな職員室隣の机の数学・小林先生。
同じくいつもポロシャツを身にまとう。
この2人の先生を中心として、良い意味で程よく先生達をなめてる女子校生達のずけずけと心地のよい物言い。嫌悪ではなく好感からでる特有のいじり。
数々の認識のすれ違いから生まれるコントのような学校生活。
全員大真面目で誰も傷つけない優しさがまた抱腹絶倒。
センス大爆発。
公共の場で読むことはおすすめしません。
かくいう私は何度も吹き出して変な人になりました。
じんわりとくすぐりチリツモで腹抱えます。
ちょっと可笑しな女子校の物語。
あの頃想像してた秘密の花園とは違うけど、あの頃は夢見る少年だったと思う日が来た。
そんな想い出もいっぱい溢れ出てくる。
ある意味秘密の園の現実を知り、大人の階段を昇る。