2023.10.27 17:00
今、再び大相撲が注目を集めている。
その一因となっているのが今年Netflixで配信された『サンクチュアリ』という相撲を題材とした作品なのはご存知の方も多いだろう。
かつて30年程前にも大ブームが起きていた。いわゆる若貴ブームである。兄弟である2人の力士が並みいる強者たちや当時台頭し始めた外国人力士を倒し出世して行く様はお茶の間を大いに沸かせた。当時小学生だった私も夢中でブラウン管にかじりついていたのを覚えている。
地域柄、道行く数多の相模(さがみ)ナンバーを全部相撲(すもう)ナンバーと読んでしまうくらいには夢中だった。あの頃の多くの平塚市の子供たちは混乱したことであろう。テストすれば三分の一くらい相撲を相模と書いていたし、相模を「すもう」と読んでいたはずだ。
実証はありませんので悪しからず。
そんな当時を知る人や根っからの相撲好き、サンクチュアリから少しでも興味を持った方々、そんな人達に是非観てほしい漫画がある。
『バチバチ』
佐藤タカヒロ先生の作品である。
相撲人気回復の一貫として地方巡業でファンとの交流イベントとして土俵で相撲を取る力士たち。力自慢の素人を子供扱いし軽々と倒す。
そんなイベントの最中、突如力士にぶちかまし張り手で打ちのめす制服姿の高校生が現れる。
彼の名は鮫島鯉太郎。
どうみても手のつけられない不良少年。
この物語の主人公である。
その後もこんなヤツじゃ相手にならない横綱を出せと大口を叩き取り押さえにきた力士2人もぶん投げそのポテンシャルを存分に感じ期待させてくれる大暴れ。
何を隠そう彼の父親もまた大相撲史上最悪と言われた悪たれ者、大関・火竜だったのだ。
そして部屋の面目躍如とばかりに更に強い力士を出してくる虎城親方。かつて父・火竜の因縁の相手でもあった。
そして出てきたのが元学生横綱であるエリート力士の猛虎。
そして激突する2人。
竜と虎を受け継ぐ2人。
生涯の因縁ライバルとなる2人である。
力士とは神の化身である。
鯉太郎は言う。
ならば俺は悪神修羅だと。
大相撲を通して成長していく鯉太郎。実はこの物語、3部作なのである。
『バチバチ』
『バチバチBURST』
『鮫島、最後の十五日』
負けん気の強い不良少年の相撲の物語と言うは容易い。
しかし、佐藤タカヒロ先生がその生涯をもって描いているのである。
残念ながらこの作品は作者の佐藤先生の急逝のため未完として終わっている。
紙面から伝わる凄まじい取組の迫力、話を重ねる毎に増していくエネルギーは圧巻である。
『鮫島、最後の十五日』とは奇しくもまさに佐藤先生の生き様なのである。
未完ではある。
しかしそのラストシーンの巡り合わせと完成度は間違いなく奇跡と軌跡の賜物であると思う。
こんなにも胸熱く気持ち昂ぶる作品を遺してくださりありがとうございます。
この感動はいつまでも多くの人々の心に生き続けている。