特別対談「日比谷音楽祭が目指す音楽の新しい循環」 #2
鍵はバーチャルとリアルのつながりに、亀田誠治×Ovall関口シンゴが語る変化と普遍性
2023.10.10 18:00
2023.10.10 18:00
11月5日に開催される日比谷野音の100周年クロージングイベントを前に、日比谷音楽祭の実行委員長である亀田誠治が今年の出演者と「音楽の新しい循環の形」について大いに語る対談第2弾。ゲストはOvallのメンバーとして今年初出演した関口シンゴ。プレイヤーであると同時に、J-POPシーンにブラックミュージックのグルーヴを吹き込む新世代のプロデューサーでもある関口と亀田によるプロデューサー論や、リアルとバーチャル両面の融合を今年の日比谷音楽祭で実際に体感することになったオーディエンスとのエピソードなど、まさに新しい循環のヒントになりそうなトピック満載でお届けする。
Ovallが象徴する新しい音楽の循環
亀田 Ovallには第二花壇の方に出ていただいてどうでした?
関口 僕、東京の端っこのほう出身なんですけど、東京すごい好きなんですよ。街と融合している自然がすごい美しいなって昔から思っていて。日比谷公園って大好きで、子供が生まれた時も散歩をさせに行ったりしていたところなので、野音はあったんですけど、普通に公園の中でのライブは初めてだったんで、演奏しててめちゃくちゃアガりました。
亀田 Ovallの音楽とグルーヴがあの空間に響いたのは今年の大収穫だと思っていて。で、コロナ禍を抜けて久しぶりにお客様の制限のない開催になったなかで、日比谷音楽祭が次の時代に向かっていくために新しい才能の人達、今回特にZ世代のアーティストにもお声がけさせていただきました。本当に多様で素晴らしいアーティストがたくさんいて、そのアーティストたちから絶大な信頼を得ているのがOvall。メンバー全員が今の音楽シーンを牽引しているクリエーターで、しかもそれぞれが素晴らしいプロデュースワークをされている、ここに世代の新しい循環があるような気がしていたんですね。だからOvallが今回出演してくれることも、Ovallが今のミュージックシーンに存在してくれていることも新しい音楽の循環になっているんじゃないのかなっていう。
関口 いやあ、恐縮しちゃいますね。
──確かにJ-POPの中での新しいプロデューサーの形というか存在であることは間違いないですね。
亀田 Ovallの皆さんはいわゆるトラックメイカー、トラックをより研ぎ澄まして行くっていう洋楽の音楽プロデューサーのような、そこに徹してるというか、そこを自らの居場所として突き進んでいると思うんですね。その姿がたぶん若いアーティストにとってみたら一緒に作りやすいと思うし。なんか重たさがないんですよね。重たいものを持ってこない人みたいな、それは僕はOvallのみんなに対して感じる。
──関口さんにしろmabanuaさん、Suzukiさんもプロデューサーかくあるべしみたいなものは別になかったんじゃないですか?
関口 ああ、その通りだと思いますね。本当にプロデュースの仕事を始めてまだ10年ぐらいだと思うんですけど、どうやってやるのかがわかんなくて、自分で考えて(笑)やってったらこうなったって感じなんで、プロデューサーってこうあるべきだよねみたいなのは本当にないかもしれない。
──最初の頃はどんな感じだったんですか?
関口 2曲目ぐらいがあいみょんのインディー最後のシングルだったんですけど、当時自分がやってたのは、かなり簡単に言うとブラックミュージックという枠のものだったんですけど、全然対極のめちゃくちゃ激しいロックの曲がきて。「これアレンジって俺何やればいいんだろう?」って考えて。僕、最初のギターの入りがX JAPANだったので、とにかく激しいギターのリフを中心に作って。でもちょっとシンセとか入れたいよなと思って、キーボード苦手なんですけど、シンセを頑張って入れてみたいな。で、当日初めて本人に会うんですけど、どう接すればいいか全然わかんなくて(笑)。プロデューサーってどう接するものなんですか?
亀田 ははは!
関口 何もわかんなくて。でも幸いに本人がフレンドリーですごく話してくれる子なんで助かったんですね。でも僕、これ初めて言うんですけど、コーラスのハモリを本当は僕が作んなきゃいけないと思うんですけど作ってなかったんです。そういうことするんだって知らなくて、「ハモリどうします?」って言われて、「え?」と思って「ハモリってなんですか?」みたいな(笑)。
亀田 ははは!
関口 なんですけど、その時のエンジニアの方がすごく親切な人で、「あ、じゃあなんとなくちょっと三度とかで今ライン作っちゃいますよ」とかって作ってもらったんですよ。そこでもう赤面して、ちょっとこれ勉強しないとダメだと。さすがにそこからYouTubeとかいろんな人のインタビューとかを見たりするようになりました。
亀田 でもそこであいみょんと出会うっていうのがやっぱり、運ではなく、センスを持たれているんだなって。そうじゃなかったらお話こないと思うので、そこが今の関口さんに繋がるっていうか、今の音楽シーンを突き進んでいる、力になっている人たちのヒントがあるような気がしました。
関口 当時、自分のソロがギリギリ最初に出たぐらいで、音源的には結構ブラックミュージックのビート感だったりそういうものなんですけど、いただくアレンジのお話がもっとロック寄りな人が多かったりして。でもその中にちょっとブラックミュージックのエッセンスだったりとかを求められてるのかな? みたいな。自分なりに考えてその間を狙って作っていったような気がしますね、今思い返してみると。
亀田 いい話ですね。まず気がつくっていうのもすごいし、明確な色を持った本丸の関口サウンドがあるから、今の関口さんたちが一緒に作られている世代のアーティストから信頼を得るんだと思うんですよ。あとはシンプルに一緒にやりたいんだと思うんです。やりやすいっていうか。そこがお人柄はもちろんだけれども……人柄だけじゃ、俺もね? 人から相当良いって言われてる方なんだけど(笑)。
関口 間違いない(笑)。
亀田 人柄だけじゃやっぱできないんで。
関口 大事ですけどね(笑)。
亀田 大事。めちゃくちゃ大事だけど、そこだけではずっと仕事が続けられないから、やっぱりしっかりとした音楽のバックグラウンドとセンスと、あとは包容力。
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