宮崎大祐監督の新ノワール映画『#ミトヤマネ』が公開中
玉城ティナ×稲葉友が語る表現者としての喜び、柔軟性を持った“ピース”であることのこだわり
2023.09.07 17:00
2023.09.07 17:00
ネット社会ならではの職業・インフルエンサーを生業にする女性を主人公した映画『#ミトヤマネ』が8月25日より全国順次公開を迎えた。「ディープ・フェイク」アプリとのコラボ案件を持ちかけられたカリスマインフルエンサー・ミトヤマネ。アプリは大人気となり、世界中の至るところにミトの顔が拡散されていく。そんな状況をミトと、ミトを支える妹のミホはどう見るのか──。
メガホンを取ったのは『VIDEOPHOBIA』で国内外の話題となった宮崎大祐監督。鮮やかな色彩と音楽がポップに彩る新しいノワール映画の誕生だ。本作でミトヤマネを演じる玉城ティナと、ミトのマネージャー・田辺キヨシを演じる稲葉友に話を聞いた。
こういう役をやるのは最初で最後になるかも(玉城)
──お二人は今作が初共演ですが、共演前のお互いの印象を教えてください。また、共演してその印象に変化はありましたか?
玉城ティナ(以下、玉城) 私は共演前と後でイメージは変わらなかったです。いい意味で。
稲葉友(以下、稲葉) 本当? 共演前から「ポップなお兄さん」だった?(笑)
玉城 言われ慣れてます?(笑) でもそうですね。ポップなお兄さんというか、優しいお兄さんという感じでした。
稲葉 あまりしゃべらなそうに見られるんだよね。実際はよくしゃべるんだけど(笑)。玉城さんは、ミステリアスな印象もあるけど、ちゃんと話せるし、でも世界観も持っているというイメージで。実際にお会いしてみると、とっても気さくで話しやすかったな。
玉城 そう、割と気さくなの。これからは、割と気さくっていうことを押し出していきたい。「ミステリアス」はもういい(笑)。
稲葉 勝手にこっちがそういうフィルターをかけてしまっていたんだなと思う。何でも拾ってくれるし、言葉も通りやすくて、つつがなくコミュニケーションが取れる素敵な女優さんでした。
玉城 ありがとうございます。
──お芝居の印象はいかがでしたか?
玉城 今回の稲葉さんの役は結構独特で。ミトヤマネのマネージャーなんだけど、“THEマネージャー”というタイプではない。ミトと田辺は気持ちが通い過ぎていなくていいというか、仕事上のお付き合いだけどお互いに信頼しているところがあるという感じだったので、役について話し合うみたいなことは特になかったですよね。
稲葉 そうだね。やりとりっていうよりも、“こういうふうにしていきますんで”というものをお互いに置いて、それを見て芝居をするみたいな感じだったよね。
玉城 そうそう。
稲葉 ミトヤマネの役って、いろいろやりたくなると思うんですけど、でも玉城さんのミトヤマネはすごくバランスが良いというか。たぶん撮影に入る前にいろいろ探って試行錯誤した上でのバランスだろうなと感じましたし、それを実現させる足腰の強さみたいなものを感じて、俳優としてすごく強い人だなと思いました。
玉城 ありがとうございます。稲葉さんは、何でもできる人だなという感じ。
稲葉 何でもやります!(笑)
玉城 田辺ってチャラ過ぎてもダメだし、地に足がつきながらも、ちょっと遊び心が必要という、それこそバランスが大事な役だと思うのですが、気をつけていて。でも気をつけている感じももちろんないですし。
──確かにミトも田辺も、誇張しても良さそうな役なのに、お二人ともフラットですごく良いバランスだなと感じました。
稲葉 実は、最初はちょっとそういう方向でいこうかなと思っていたんですよ。田辺はギアが入りやすい人間なのかなと想定をしていたんですが、蓋を開けてみたら全然フラットで良くて。さらに完成した映画を見て、マジでフラットにしてよかったなって思いました。各要素で行ききっているから。
玉城 今、稲葉さんのお話を聞いて思い出しましたけど、そういえば私も最初に監督と行ききるかどうかを相談しました。
稲葉 どっちでもできるような脚本だったような気はするし、求められるのはそっちかなという気もしていたんですが、監督の頭の中には、音楽も含めたこういう使い方があったんだろうなと。
玉城 うん、そうですね。監督の調理のままという感じでした。
──インフルエンサーを主人公にSNS社会の光と闇を描く本作。俳優として活躍するお二人にとっては、身近だからこそ、出演するうえで共感できる反面、難しさもあったかと思います。そんな中で本作に出演を決めた理由や本作から感じた魅力を教えてください。
玉城 私はいい意味で、絵が想像できないなと思って出演を決めました。あと、こういう役をやるのは最初で最後になるのかなと思っていて。問題点も含めて現代を面白おかしく描くというのが、監督のやりたいことなんだろうなというのが理解できたので、演じてみたいなと思いました。私的には、この映画で問題を提起したいわけではなく、単純に映像として楽しんでもらえたらいいのかなと思っています。この映画は、本当に監督の頭の中をそのまま脚本や映像で出していて、私はそのサポートメンバーみたいな感覚でいるんです。だからミトヤマネが最新のインフルエンサー像かと言われたら、それはまた違うと思う。そこはあくまでもインフルエンサーというものから私たちが勝手に感じ取っているイメージでしょうし。だからこそ、結果的に見たことのないものになったなという印象があります。
稲葉 そうですね。玉城さんがおっしゃったように、そこまで考えなくてもいい、長いショート動画みたいな感覚で見られる疾走感もあるので、あまり難しく考えずに観に来てもらえたらと思います。どういう印象を受けるかは人によって違うと思いますし。ただ僕自身は、脚本を読んだときにめちゃめちゃ2022年な感じがするなと思いました。でも出来上がった作品を観たら想像を超えてきたので、「宮崎さん、すげー!」と思いました。
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