2023.08.31 20:00
2023.08.31 20:00
実家みたいなバンドになれたらいい
──ポートフォリオ的なことで言うと(笑)、ハンブレッダーズのプレゼンテーションをするときに、今だったらどういうところを一番観てほしいって思っていますか?
ムツムロ 自分たちではあまり分からないんですけど……。
でらし でも総合力勝負ではあるんだろうなっていう。それこそ歌で勝つだけのバンドじゃないし、演奏もちゃんとやれば、パフォーマンスもちゃんとやるしなとか。
ムツムロ 俺は自分の中では、ハンブレッダーズというのは「持たざるもの」やと思ってて。生まれもってカリスマとか、生まれもってクラスの中心とかじゃない人が集まってるんで、なんて言うんだろう、「コツコツやってけば」っていうところ(笑)。自分たちも1回もバズというか大ヒットみたいなことを経験してないんで、本当に身の回りのことをやってたら今ここにいるっていう気がするし、それはフェスに出演してる他のバンドよりもあるんじゃないかなと思っていて。お客さんもだいたいそうじゃないですか。大半の人はたぶん、めちゃめちゃイケてる青春時代を送ってきたわけじゃないと思うんです。そういう人には共感してもらえるというか、「そうだよね」ってうなずいてもらえる音楽をやってるつもりではいます。
でらし フェスのラインナップを見てると、やっぱりどのバンドもみんなヒーローだなっていう感じがするんですよ。ただうちって、なんかちょうどいい距離感というか、近所の兄ちゃん的な感じなんじゃないかなって。わからないですけどね。お客さんから見たら、もしかしたらうちもそういうヒーロー的な扱いになってるのかもしれないですけど、うちとしてはどっちかっていうと近所の兄ちゃんぐらいの感じで思ってくれたほうが嬉しいよね。
ムツムロ 本当にそう。よく小さなライブハウスでライブをしたときに「ハンブレッダーズはもうこれぐらいのライブハウスでは観れないんじゃないか」みたいなことをよく言われるんですけど、「いや、一生やりますけどね」っていう。点じゃなくて面で見てほしいっていうか、連れ添ってほしいっていうか。家庭持って音楽聴かない、ライブにもいっぱい行けないってなっても全然いいから、ふとしたときに帰ってこれる実家みたいなバンドになれたらいいなって思ってるって感じですかね。
──そのスタンスがブレないのが、逆に言うと外側から見てるとまさにヒーローというか、追いかけたいって思わせる何かなのかもしれないですね。
でらし もちろん、他のバンドと比べたら全然ないですけど、たぶん「持たざるもの」の中でもひとつ、ムツムロ アキラの中に光る場所があるから、それがライブの中でもハイライトになるんだろうなっていう感じはすごくします。
──向き合うものがでかくなればなるほど、歌うことだとか、ライブでどう見せるのかとか、無意識にしろ影響を受けるじゃないですか。それによって緩やかに変わってきてる部分もあるんだろうなと思いますし。
ムツムロ 変わってきたところでいうと何にも憧れなくなってきたのかもしれないですね。30歳近くなってきたからというのもあるかもしれないけど、甲本ヒロトさんとか宮本浩次さんとか、憧れの人にも会えたし、「そういう人たちと仲良くなりたい」とか「自分がそうなりたい」みたいなことも今は思わなくなったので。本当に自分がちゃんとやっていかなきゃいけないっていう意識になってきました。ちゃんと自分は自分の、持ってなかった青春時代みたいなものとか境遇をちゃんと受け入れられるようになったっていう感じですね。
──なるほど。そんな中で、さっき「お祭り」っていう話もありましたけども、今回ハンブレッダーズも出演する「NARUTO THE LIVE」が9月に幕張メッセイベントホールで開催されます。これはまさに「お祭り」だと思うんですよ。
ムツムロ いや、すごいですよね。
──すごいメンツが集まって2日間、しかもそれが『NARUTO』シリーズという作品だけで繋がっているっていう。ハンブレッターズは「またね」で『BORUTO』第1期の最後を飾ったわけですが、改めて、みなさんにとって『NARUTO』シリーズとコラボするというのはどういう経験でしたか?
ムツムロ 僕ら世代は本当にど真ん中なんで、みんな読んでましたからね。夏目漱石の『こころ』ぐらい、読んでるのが当たり前みたいな。
──『こころ』って読んでるの当たり前ですかね(笑)。
でらし 『坊っちゃん』でもなくて?
木島 確かに『こころ』持ってるけど、そこいくんや(笑)。
ムツムロ あるいは金子みすゞの『私と小鳥と鈴と』ぐらい、みんな読んでるようなマンガだったので、「嬉しい」が一番ですかね。
でらし 僕はアニメ『NARUTO』の第1話をリアルタイムで観ていたんですよ。すごい鮮明に覚えてて。実家のテレビがどこにあったかとか、どういう状況で観たかとか、なぜか覚えてるんです。だから最初はあまり実感が湧かなかったんですよね。
ムツムロ デカすぎて、俺はまだ実感湧いてないかもしれない。逆にあんまり実感がないっていうか。
木島 昨日たまたまテレビ観てたらイベントのCMをやってて、自分の顔が映って「あ、え?」って(笑)。
ムツムロ すごいわかる。もちろんエンディングで流れたときは嬉しかったんですけど、なんていうんだろう、『NARUTO』は『NARUTO』のままあるって感じやんね。
──でも「またね」は本当にいい曲で、今回のツアーでも重要な位置で披露されていましたけれども、あの曲はどういうことを思いながら作っていったんですか?
ムツムロ いっぱいあるんですけど、『NARUTO』って、主人公サイドが自分たちより強い相手に立ち向かっていくんですよね。それは少年マンガのセオリーでもあると思うんですけど、それってロックンロールに通ずるものがあるなと思って。『BORUTO』を読んで、たとえ意味がないと分かっていてもそれをする姿勢っていうか、大きなものに対して抗う姿勢っていうのは、やっぱりロックだな、パンクだなって思ったんですよね。そこに着想を得て作りました。
次のページ