2023.03.20 18:00
2023.03.20 18:00
オーディション「2016声優アーティスト育成プログラム・セレクション」でグランプリを獲得し、以降声優として『ウマ娘 プリティーダービー』のナイスネイチャ役や、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の桜坂しずく役など様々な場面で活躍してきた前田佳織里。彼女がこの春、4曲入りの1st EP『未完成STAR』でアーティストデビューを果たす。今作のテーマは「今は未完成であるもののいつかはスターとして輝いていく」という決意表明と、「ありのままの自分で輝いていく」という存在証明。一つひとつ着実に夢を叶え続けてきた彼女の姿がここにある。彼女の歩んだ軌跡をたどりながら、同作に込めた思いを語ってもらった。
自分の存在証明になる作品を出したかった
──1st EP『未完成STAR』、とてもコンセプチュアルな作品だと感じました。どんなスターもみんな最初は未完成だが、しっかりと情熱を注いでその結晶として強く輝いていく意思と、存在証明として今ありのままの自分で輝いていく決意をベースに、様々な思いを込めたそうですね。
お仕事に対して自分の意見を伝えることを大事にしているので、このテーマもわたしからお伝えしました。ありのままの自分を愛してあげていいし、未完成な今の自分でも想いを届けることができるんだということをこの作品で証明したかった。今は未完成だけど、完成していないということは可能性が無限大だし、そんな自分もいつかはスターになりたい、という願掛けもありますね。高校時代にバンド活動をしていたからこそ表舞台に立つ仕事がしたいと思って、そこからいろんな縁があって今のお仕事に就かせてもらって今があるので、今回アーティストデビューをさせていただけるのは原点回帰みたいな感覚もあって。
──新しいスタートを切ったことで、夢を追いかけようと心に決めたときのご自分の気持ちが蘇ってきた。
そうなんです。次のステージの第1歩でありつつも、どこか自分のホームに戻ってきたような気がしています。だからそんな自分の存在証明になるような作品を出したかったんですよね。4曲すべてにメッセージが込められているので、聴いてくださった人の背中を押すことができるようなEPになっていたらと思います。
──『未完成STAR』には「夢」をテーマにした楽曲が多いですが、実際に前田さんが声優という夢を掴んだのは、幼少期からお持ちの「度胸」が理由のひとつなのではないかと感じました。
確かに小さい頃からガキ大将気質でしたね(笑)。野山を駆け回ったり、人前に出ることも臆せず、教科書の朗読や劇の主役とかも進んで手を挙げていました。そういう物怖じしない性格になったのは、父親の育て方もあるのかなと思っています。一人っ子だったので、寂しくないようによく父が一緒に遊んでくれたんですよね。こんなにアクティブすぎる子が社会に出られるのかちょっと心配したらしいんですけど(笑)、そこで父は「もしかすると将来この子はタレントになるかも」と思ったらしくて。
──へええ。お父様の先見の明が。
弁護士かタレントになるだろうなと思ったらしいんです。父の言うことによく反論していて、それを面白がった父が「こう言ったらどんな反論をしてくるかな?」と意地悪な言葉を吹っ掛けるんです(笑)。でも子どもだから勝てなくて、悔しくて駄々こねて何度も口喧嘩を挑んでましたね。父は「表舞台に立つ仕事をするならば、こういうところも個性になるかも」と思ったらしくて、縛り付けずに自由に育ててくれました。父でありながら兄のように見守ってくれたことが、今の自分を形作っているところは大きいと思います。
──前田さんが表舞台に立つ第1歩というと、高校時代にガールズバンドを組んだことではないでしょうか。どんな経緯で結成に至ったのでしょう?
高校1年生の体験入部ですね。ダンス同好会に入るつもりで見学に行ったんですけど、なんかしっくり来なくて。そしたらそこにたまたまいた同学年の女の子も居心地が悪そうにしていて、話していくうちにその子が「兄貴がギターをやってるからバンドが組みたいなとも思ってて。もしよかったら一緒にやらない?」と誘ってくれたんですよね。当時わたしもカラオケにハマってたり、歌うのがすごく好きな時期だったので、二つ返事で結成を決めました。
──青春漫画みたいなストーリー。
『BECK』みたいな、本当に不思議な縁でしたね。そのギターの子がガールズバンドを組みたかったみたいで、他のクラスで中学時代に吹奏楽をやってた子がドラマーとして入ってくれて、ベースには他校の軽音部に所属していた子を誘って4ピースバンドを組んで、チャットモンチーさんのカバーをしたり、オリジナルソングも作ってました。
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