注目作である理由を3つのポイントで解説
360度舞台で体感できる、かつてない歌舞伎!『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』開幕
2023.03.04 21:00
2023.03.04 21:00
木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』が本日3月4日に開幕。その初日前会見と公開フォトコールが3月2日、公演会場である東京・IHIステージアラウンド東京で行われた。
この作品はタイトルの通り、2001年に「ファイナルファンタジー」シリーズの第10弾として発売された「ファイナルファンタジーX」を歌舞伎化したもの。大いなる脅威「シン」に人々がおびえて暮らす、死の螺旋にとらわれた世界スピラ。そんなスピラへと迷いこんだ少年ティーダ(尾上菊之助)は、可憐で気丈な召喚士ユウナ(中村米吉)と出会う。「シン」を倒すため「召喚士として究極の力を手に入れる」というユウナの決意に胸をうたれるティーダは仲間たちと共に旅にでるが、そこにグアド族の族長・シーモア(尾上松也)が立ちはだかる……。「FFX」の壮大な物語を、前・後編に渡って描く壮大なプロジェクトだ。
この日の記者会見には尾上菊之助、中村獅童、尾上松也、中村梅枝、中村萬太郎、中村米吉、中村橋之助、上村吉太朗、中村芝のぶ、坂東彦三郎、中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六と出演者が役柄の衣装で勢揃い。近年多くなっている「異ジャンルエンタメ×歌舞伎」のコラボの中でも、色々な意味で注目作である今作。そのポイントを3つに分けてご紹介しよう。
①尾上菊之助自らのオファーで実現にこぎつけた異例の経緯
今作、主演を務める尾上菊之助自らがスクウェア・エニックスに自ら企画書とビデオレターを送るという熱烈なオファーを行い、わずか2年と少しで上演までこぎつけたという異例の経緯で成立している。新型コロナウィルス流行下で軒並み公演が中止となり、不安な思いを抱えた中でたまたまプレイした「FFX」に感銘を受けたという菊之助。会見では企画意図をこう熱く語った。
「2020年のコロナ禍のなか、不安な気持ちを前向きにしてくれたのが『FFX』の世界観。パーティーのさまざまな葛藤を描きつつ、一丸となってシンという巨大な敵に立ち向かう。その姿が落ち込んでいた私に元気をくれました。今、だいぶコロナ(の流行)はおさまって明るい希望は見えてきていますが、その中で元気のない方、痛手を追ってしまった方、そしてまだ苦境にあえいでいる方はいる。『前向きになって元気に進んでいこう』という『FFX』に含まれているメッセージを私たち人間が演じることにより、より深く伝えられるのではと思いました」
また、アーロン役を務める中村獅童は出演の経緯と作品への思い入れを会見でこのように語った。
「一番初めにお電話をいただいて『FF』と聞いたときはすごいところに挑戦するなと思った。でも菊之助さんが企画を立てて役者一人ひとりに電話をかけ、自分の思いを語ってくださった、そのことが僕はとても嬉しかった。今回の企画には役者一人ひとりの思いがつまっていて、それが今回の作品を成功へ導き、そして歌舞伎の未来へとつながるものだと思っています」
この企画には、コロナ禍以降苦しい状況が続く歌舞伎界やエンタメ界をどうにかしたい……そんな思いも詰まっているのだ。
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