「何でもないような事が 幸せだったと思う」
何処かで聴いたことのあるフレーズ……
30代以上の人には伝わるのでしょうか?
THE虎舞竜(ザ・トラ・ブリュー)の大ヒット曲「ロード」の歌詞です。
今回のコラムでは、僕がここまで歩んできた「ロード」を振り返る訳ではなく、「四星球」という日本一泣けるコミックバンドと歩んできた道を振り返ってみたいと思います。
まずは一番近いところでいうと、2023年2月23日(木・祝)の話。このコラムを書いている現段階では未来の話です。この日、四星球は日比谷公園大音楽堂(通称:日比谷野音)でワンマンライブを行います。
四星球は結成20周年を記念してさまざまなライブを行ってきましたが、20周年企画の締めくくりとして彼らは、この日比谷野音ライブと、大阪城音楽堂(通称:大阪城野音)での単独公演に挑みます。
毎年四星球のライブは10本以上観ているのですが、日比谷野音で観るのは初めてです。このライブが発表された瞬間に「これは絶対に行くしかない!」と決め、日程をスケジュールに入れようとしたら、まさかの2月。。。2月に屋外でライブを観るのは人生で初めてかもしれません。
野音は大好きな会場で、毎年ライブを観に何回か足を運んでいますが、4月や5月のライブだと昼間は比較的暖かく、ライブを観るにはとても気持ち良いシチュエーションですが、日が暮れると一気に気温が下がり、コートを羽織らないと非常に寒い印象でした。
4月でさえ、そのくらいの寒さなのに、2月の野音はどうなることか……?
四星球らしい野音になることは間違いないでしょう。
そして、野音の3日後(2月26日)の深夜に放送される『Love music』という音楽番組に、四星球がトークゲストで出演します。四星球は何度かライブアーティストとして番組に出演していますが、トークゲストとしては初。番組司会者の森高千里さんとも初対面です!
四星球は1年くらい前に、森高千里さんの名曲「私がオバさんになっても」のアンサーソングとして「君はオバさんにならない」という曲を(勝手に)作っているのですが、この日はその曲を森高さん司会の番組で披露するという記念すべき放送になります。
四星球というバンドの20周年のお祝いを、地上波の音楽番組で特集するのは、もしかしたら『Love music』くらいかもしれません。そのくらい四星球とうちのチームは濃い関係を築いてきました。
四星球と最初に絡んだ大きな仕事は2017年に放送した『ど夜中フェス』という特番でした。ど夜中(深夜)にフジテレビでオールナイトフェスを開催する、という至ってシンプルな番組でしたが、その時のラインナップが今見ても最高でした!
この番組に出演してもらったアーティストは、みんなライブパフォーマンスが熱くて、格好良くて、面白くて、フェスやイベントでめちゃくちゃ盛り上がるのに、CDが飛ぶように売れる訳ではないし、サブスクの再生回数が物凄いということはなく(当時はサブスクがそこまで主流ではなかったと思いますが)、とにかくこういうアーティストを知ってライブやフェスに足を運んで欲しい、という思いでこの番組を制作しました。
また、この番組に出演しているアーティストの魅力は通常の音楽番組のように、テレビ局のスタジオで、最新曲を「テレビサイズ」と呼ばれる短いサイズで歌唱するだけでは伝えるのが難しく…そこでこの番組では出演者に、7〜8分のパフォーマンス時間を預けて、その時間は自由に使っていいとお願いしました。持ち時間の中で何曲やってもいいし、1曲もやらないでトークだけでもいいし、とにかく1番ライブ感溢れるステージをやって欲しいと、アーティストにお願いしました。
さらに、スタジオには各アーティストのファンをパンパンに入れて、いつものライブと同じようにパフォーマンスできる環境を用意しました。
四星球はライブやフェスで、初見のお客さんでも全員が盛り上がることができる「運動会やりたい」という曲をパフォーマンスしてもらいました。 曲の途中でお客さんを半分(紅白)に分け、「ももあげ対決」のようなシンプルな競技から「YMCA対決」、「高田純次のモノマネ対決」など、「新しい競技」で紅組と白組を対決させるのですが、毎回お客さん全員を巻き込んで、身体を動かして楽しませる、という唯一無二なエンターテイメント満載のライブパフォーマンスを展開する曲です。彼らのライブを経験したことない方には、文章で説明しても伝わらないですよね(笑)。
この日も「運動会やりたい」でスタジオ中が大盛り上がり、この放送で四星球は「ライブが面白そうなバンド」「めちゃくちゃなバンド」という爪痕は確実に残してくれたと思います。ライブでは通常3種目で対決するのですが、最後の「競技」として彼らが用意したのは「HEY! HEY! HEY!に出たかった」という種目、というか楽曲でした。
ボーカルの康雄はダウンタウンの大ファンで、「いつかHEY! HEY! HEY!に出たい」という強い思いを抱いていましたが、残念ながら2012年に『HEY! HEY! HEY! MUSIC CHAMP』は最終回を迎え、彼らの夢は叶いませんでした。その直後、彼らは「HEY! HEY! HEY!に出たかった」という曲を作り、その番組への憧れや悔しい思いを歌で表現しました。
それから3年後の2015年、『HEY!HEY!HEY!』はスピンオフ番組『HEY!HEY!NEO!』として再び動き始めました。その番組には僕を含む、今の『Love music』のスタッフも参加していて、今の『Love music』の礎のようなブッキングをしていました。
そして忘れもしない2018年4月。『HEY!HEY!NEO!』3回目となる放送に、四星球の出演が決まりました。ついに四星球がダウンタウンと共演するのです。曲はもちろん「HEY!HEY!HEY!に出たかった」。彼らの「叶わなかった夢」が叶う瞬間でした。
「人生諦められたのに 夢は諦められないの」
この歌詞がとにかく胸に刺さる放送でした。放送直後にメンバーのU太に電話をして、2人で泣きながら話しました。その間、U太のLINEにはお祝いのメッセージや電話がバンバン入ってきたそうです。日本中のバンドマンがお祝いしているんじゃないか、というくらい伝説の放送になった、と僕は自負しています。
『HEY!HEY!NEO!』の収録日、ライターの鈴木くんが四星球に同行し、大阪からお台場まで来て、収録の裏側を密着リポートしてくれました。
舞台裏レポート
http://su-xing-cyu.com/180409heyheyneo/
たまに、この日の放送を見直すのですが、今観ても泣いてしまいますし、いまだに四星球が「HEY! HEY! HEY!に出たかった」をライブでやると、涙腺が緩くなります。
彼らと出会ってから6年、フェスやイベント、ワンマンなどで毎年コンスタントに10本以上のライブを見てきました。さらに『Love music』にも何度か出演してもらったり、番組主催フェスや、僕のフェスには毎回出演してもらったり、良い付き合いを続させてもらっています。
僕は基本的にミュージシャンと飲みに行く事もほとんどないし、連絡先も知らないけれど、四星球とはフェスやイベントの時、一緒にご飯を食べたり飲んだり、着替え中の楽屋にも遠慮なく入ったり、今ではスタバの新作が出るたびに連絡をするような関係になりました。
結成から20年。僕が知り合ってから6年のうちに、四星球は爆発的な大ヒット曲を作ったわけでもないし、超話題のドラマやCMのタイアップが付いたわけでもありません。
「クラーク博士と僕」という、四星球が結成当初からライブで欠かしたことがない代表曲があります。
♪
知らぬ間に始まった人生が
知らぬ間に終わっていく
コロナ前は、ボーカルの康雄がこの歌詞を歌い始めると同時にお客さんの上にあがり、モッシュ・ダイブが起こります。頭の上に誰かが落ちてきたり、転がってきた人を支えたり、これまでの人生で経験したことなかったようのことが、40代を過ぎてから日常になりました。そんな日常を奪ったのが「コロナ」でした。2020年の春先に新型コロナウイルスが現れてから2〜3ヵ月の間、ほぼライブがゼロになりました。この頃、仕事も学校も「リモート」が導入され、僕らの日常もどんどん変わっていきました。まさに「クラーク博士と僕」の歌詞のように「知らぬ間にはじまった人生が 知らぬ間に終わっていく」のではないか?という不安な気持ちでいっぱいでした。
そんな中、四星球は「薬草」という曲を作りました。この曲はガンで闘病生活を送っていたイノマーさんというミュージシャンへのメッセージソングです。この曲は「薬草」を「訳そう」に変換する、といったダジャレを筆頭に、1曲2分22秒の中に、とにかくダジャレや謎かけが散りばめられています。この曲は当時ガンで闘病生活を送っていたイノマーさんというミュージシャンへのメッセージソングのような曲なのですが、17年目のバンドがこれを作るか!?と言うくらいストレートな青春パンクソングです。
これを聴いて「僕の青春はまだ終わっていない」と確信しました。コロナが終わってパンパンのライブハウスで、この曲で思い切り拳を上げて、飛び跳ねて、歌える日がくるまで、僕も待ち続けよう、という目標ができました。
その歌詞を調べようとネットを見ていたら、たまたま康雄がこの曲の解説というか紹介をしているブログ(note)を発見しました。
北島康雄「薬草」
https://note.com/yasuokitajima/n/n8b29a3d25aa9
このブログを読んで、この曲で康雄が「薬」と「クスリと笑う」を引っ掛けていたことが発覚しました。僕の連載しているコラムのタイトル「あなたに届けたい音と薬」の「薬」も「クスリと笑う」からつけたので、発想が一緒だったことがわかり嬉しくなりました。
そんな四星球はコミックバンドとして、毎回お客さんを笑わせていますが、彼らだって毎日楽しいことばかりではないはずです。辛い時、悲しい時、怒っている時、体調が悪い時もあるでしょう。それでも「コミックバンド」という人生を選んだ彼らは、どんな日でも笑顔でステージに上がり、目の前にいるお客さんを楽しませ続けています。
いつもの「ブリーフに法被」というほぼ裸の状態で、2月に野音でパフォーマンスをすることも、普通のアーティストでは考えられないことですが、彼らはそんな状況ですら「おいしい」と捉えて、ピンチをチャンスに変えてくれるはずです。
そんなコミックバンドという「ロード」を歩み続けてきたことは、決して楽な道ではなかったと思いますが、「何でもないような事が 幸せだったと思う」そんな20年だったに違いないと思います。
なんで四星球と僕の歩んできた道を語ってきたのに、最初と最後にTHE虎舞竜の「ロード」の歌詞を引用しているかって?
実は四星球の野音の前日の夜中、仕事でトラブル(虎舞竜)が発生しまして……いまだにバタバタしています😱
・
・
・
僕のオチではクスリとしてくれなくて構いませんが、四星球のライブは「クスリ」どころか「爆笑」連発だと思います!とりあえずトラブルを解決し、大急ぎで野音へ向かわないと!
♪今日のオススメ
「ロード」THE虎舞竜
「私がオバさんになっても」森高千里
「君はオバさんにならない」四星球
「運動会やりたい」四星球
「HEY! HEY! HEY!に出たかった」四星球
「クラーク博士と僕」四星球
「薬草」四星球