2023.02.05 12:00
2023.02.05 12:00
『新聞記者』の藤井道人が企画・プロデュース、ドラマ『アバランチ』の山口健人が監督を務めた映画『生きててごめんなさい』が2月3日に公開を迎えた。主演に黒羽麻璃央を迎え、現代の日本の若者たちが抱える“病み”を描く本作で、ヒロイン・清川莉奈役に抜擢された穂志もえか。
映画『少女邂逅』(2018年)で初主演を務め、『街の上で』(2021年)での好演も話題を呼ぶなどステップアップを続ける彼女だが、何をやっても上手くいかない莉奈には自身を重ねることが多かったそう。そんな穂志が、丁寧に作り上げた“莉奈”に込めた思いとは。アメリカテレビシリーズ『SHOGUN』に出演するため、2021年9月から約8ヵ月間にわたって滞在したカナダでの生活も振り返りながら語ってくれた。
想像を裏切ることをどんどんしたい
──脚本の印象はいかがでしたか?
最初に(脚)本を読んだ時、「ぜひ私にやらせてほしい」と思ったので、オーディションに受かった時はめちゃくちゃ嬉しかったです。莉奈が理不尽に嫌な思いをしていたり、どこにいても浮いてしまったり、白い目で見られるような描写を見た時に「私、この気持ち知ってる」と思って。みんなと同じことをしているのに、なぜかいつも私だけ変なことになってしまい、そのせいで排斥されるような経験があったので、私がやるべき役だと思いました。
──共感できる部分が多かったんですね。
“何年か前に違う選択をしていたら、そうであったかもしれない自分像”みたいに思えて。正直、あそこまで発散的にはなれないですけど。私にも、そういった可能性があったのかな、なんて思いながら読んでいました。ただ、オーディションの時にいただいた本は、最終的に完成した(脚)本とはだいぶ印象が違っていたんです。
──印象が違う、というのは?
構成が大きく変わって、決定稿では最初の(脚)本の結末の“その先”まで描かれていました。監督は「その後のことを実は一番描きたい」とおっしゃっていて。監督と撮影前に最初から最後まで全シーンをすり合わせることができたので、現場ではカメラの前に立っていればいいだけの状態でした。
──莉奈を演じる際、芯にしたことも聞かせてください。
監督の中に「莉奈みたいな子が認められてもいいじゃないか」という強い思いがあったので、激しい感情も監督を信じて思いっきり表現しました。「私が莉奈の一番の味方でいたい」という気持ちが強かったです。
──莉奈が涙を流して彼氏の修一に感情ぶつけるシーンには心を揺さぶられますが、そういった撮影にはどのような思いで臨んでいるのでしょうか。
それが、よくわからないんです(笑)。ただ、2人の関係性や、今までに起きた事柄の数が多ければ多いほど気持ちを持っていきやすいので、自分なりに2人の過去をいろいろと重ねているのかもしれません。あとは、ちゃんと相手の言葉を受け取れる状態にしておくこと。「泣こう」とは思わずに、初めて聞く言葉として受け取れるように、あえてプランニングはしないようにしています。
──あくまで感情に素直に演じて、あとから涙がついてくる感覚?
そうですね。その感覚に近いと思います。
──ふだんから、役作りについて何か決めていることはありますか?
もちろん演じるのは私自身なんですけど、自分から離れた役柄の方が面白いと思うので、その役としてエピソードや背景を考えていきます。監督と一緒に考えることもあります。その時に穂志もえかだったらしないチョイスをあえてしていく。どうしてもベースの感情は自分になりがちなんですけど、最近は、その反対を選択するように意識しています。
──そのあたりは、俳優の醍醐味でもありそうです。
みなさんの想像を裏切ることはどんどんしていきたいと思っているし、それを面白いと言っていただけた時は本当に嬉しいです。一番のやりがいは、やっぱり見てくださった方からの声ですね。莉奈はSNSという発散の場を持っているけれど、それすらもなく、自分の中で鬱々としている方からメッセージが届いたりすると、少しでも救いになっているのかなと感じます。
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