関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第8回
自分もこういう男になりたい!永遠の憧れ『イコライザー』
2022.12.04 12:00
2022.12.04 12:00
関根勤が偏愛するマニアックな映画な語る連載「関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ!」。第8回目は2014年に公開された映画『イコライザー』。
ボストンに住むロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、ホームセンターで働くごく普通の中年男性。職場では誰からも慕われるし、深夜に行きつけのダイナーで読書をするのが趣味な静かな男だ。そんな彼は、ダイナーの常連でもある少女娼婦のテリー(クロエ・グレース・モレッツ)と会話をしていくうちに、友情が芽生えていった。しかし、ある日客に暴力を受けたテリーは反撃してしまい、元締めのマフィアに激しい暴行を加えられてICU送りにされてしまった。見るにも耐えない悲惨な彼女の姿を見つめながら、マッコールは怒りを募らせ、誰にも見せてこなかった力でマフィアの元へ向かう……。
『マグニフィセント・セブン』(2016年)や、ハリウッドで映画化された『THE GUILTY/ギルティ』(2021年)の監督で知られるアントワーン・フークアが手がける本作。デンジゼル・ワシントン演じる主人公が実はもと正体は凄腕の特殊工作員だったというストーリーや、彼の“仕事シーン”の斬新さが話題となり、多くのアクション映画ファンから愛され続けている映画である。今回はそんな本作の魅力について語ってもらった。
第8回『イコライザー』
『イコライザー』はね、僕がマッコールみたいな人間になりたいんですよ。悩んでいる人を助けてあげたい。彼はもはや、『必殺仕置人』みたいなことですよね。僕、デンゼル・ワシントンと年齢がほぼ同じなんですよ。確か彼が一つ年下かな。(ワシントンは今年68歳になる現在67歳)少し老けていて、普通の人なんだけどカフェで知り合った女の子を助ける。彼は小さな親切心から大きいことをするじゃないですか。そして実は強い、っていうその二面性がすごく好きです。あと、同僚のラルフィを痩せさせるために色々手伝ってあげるでしょ? しかも、彼の母親の店にお金を取り立てに来る悪い刑事のことも合法的に始末するわけじゃないですか。ああいう人間になりたいんですよね。裏でこっそり、静かに悪い奴をやっつける人に。そう、彼の場合は頼まれてやっていなくて、勝手にやっているのが良い。
夜のカフェでのテリーとおしゃべりするシーンも見どころです。テリーを演じるクロエちゃんも魅力的で、『キック・アス』の時からかなり大人になりましたよね。彼女が可愛いから、余計彼女の置かれている立場がかわいそうに見えてくる。『イコライザー』は何度も見ている作品ですが、何回見てもマッコールに憧れます。実はめちゃくちゃ強くて、頭が良くて、鍵も開けられるし、傷も治せるし、コンピューターもお手のものだし、要するに彼は特殊部隊にいたから、もう何でもできるわけです。アクションシーンももちろん良いけど、彼が戦いに備えるシーンのディテールが好きです。
なかでも印象的なのは、「彼女の自由を買い取りたい」って言って敵陣地に乗り込むシーン。バカにされて、ドアから出て行こうとするが、そう見せかけてカチャッて鍵をかけるあそこ、良いですよね。「おっ、はじまるぞ!」ってワクワクする(笑)。しかも、現役の時は16秒でできたのに、それが「……ちょっとタイムオーバーしたな」っていうのがかっこいいし、リアルで良い。バリバリの現役時代はあの倍くらい強かったってわけですよね。最強じゃないのが良いというか、もちろん今だってすごく強いんだけど、人間として衰えているってことがわかるのが素晴らしいんですよね。ホームセンターでのシーンも、特殊部隊にいたから何でも作れるのが面白いんだけど、一番ごついやつと戦った時に少し負けそうになるのが逆に良くて。スティーブン・セガールの映画とかだと、一方的に全員やっつけちゃうから(笑)。そういうのじゃなくて、食らった分だけちゃんとダメージを受けているのがリアルなんです。
歳のいった孤独な男が少女を救う、というプロットは割とよくあるものだけど、そういう物語の魅力はやはり「慈愛」と「滅私奉公」、辛い人を助けてあげたいという気持ちで、そこに共感します。そして、悪い奴をやっつけるっていうのが最高! もう本当に悪い奴をやっつけたい! こういう映画に出てくるやつって、本当に生きている価値ないくらい悪いやつらなので(笑)。動機が人助けだからこそ、彼は“ヒーロー”になっている。やっていることを考えると、法律では罰せられちゃうんですけどね。ある意味、彼が法律で罰せられない奴らを彼なりの方法でやっつけていて、少しバットマンに重なる部分がある。しかし、バットマンはコスチュームを着ていてかっこいいのに対し、マッコールは別にかっこよくない。普通のおじさんなんです。そこが、良い。やっぱりと男ってね、強い自分に憧れる。そして女性を守ってあげたいものなんですよ。
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