2022.10.05 18:00
2022.10.05 18:00
「幸せすぎて、終わりたくない」
「じゃあ俺の作った新曲を聴いてください」と言った柳沢が自らリード・ボーカルを取り、代わりに牧がギター・ソロを弾いた新曲以降の4曲は、バニラズが持つR&Bの魅力をたっぷりと楽しませる。早口のボーカルがラップを思わせるファンキーな「雑食」、井上のピアノとともに「バイリンガール」「アダムとイヴ」「ロールプレイ」をセッション風にメドレーで聴かせてから繋げた「Do You Wanna」、そして、R&Bのエッセンスをポップ・ソングに落とし込んだ「倫敦」。ロックンロールを掲げながら、彼らが狭義にとらわれずに意欲的に曲作りに取り組んできたことを今一度、アピールするという意味で、じっくりと聴かせた、この中盤の4曲は大きな見どころだったと言ってもいい。
そして、そこから一転、突然、噴き出した煙に加え、ファイヤーボール、爆裂音も使ったショッキングな演出とともに観客の度肝を抜いたのが、「one shot kill」のモダンなパンク・サウンドだ。
きっと観客が目を白黒させているところが見えたに違いない。「どうよ、楽しんでる?」と牧がニヤリと笑った。
「俺達のようなロックンロール・バンドにとって、武道館ってやっぱり聖地だから、心が清らかになる。みなさんに問いたいです。俺は今、清らかな顔をしていますか?(笑)」
「ほんとに、ほんとにありがとう! ラ~ブ、ラ~ブ、ラ~ブ(と歌う)。ばりばりフライデーにスーパー・ワーカーのみんな、スーパー・スチューデントのみんな、全国のみんな、全世界のみんな、ありがとう!」
プリティとセイヤが2度目の武道館のステージに立つ歓びを語ってからの後半戦は、サポートの3人を迎え、ラストスパートを掛けるように「エマ」「平成ペイン」「アメーイジングレース」とバニラズのアンセムの数々を一気に披露して、アリーナ席はもちろん、スタンド席も上から下まで揺らしていく。そして──。
「辛くなったら、苦しくなったら、俺達のライブに遊びにこいよ! みんながもっともっと音楽を、ロックンロールを好きになれるように最後に俺達の特大のロックンロールの魔法を思いっきりくらってけ!」(牧)そんな思いを込め、本編の最後に演奏した「マジック」では、放たれた無数の金テープがきらきらと輝きながら舞う中、観客が一心不乱に踊ったのだった。
「My favorite thing is Rock ‘n’ Roll!!」(セイヤ)
もちろん、それで終わりじゃない。アンコールに応え、バニラズはさらに3曲を披露したのだが、荘厳なハーモニーで圧倒したフォーク調の新曲、続けてサプライズ・ゲストの林萌々子(Hump Back)と牧がデュエットしたピアノが跳ねるポップ・ソング「Two of Us」を初披露。アンコールと言うにはあまりにも贅沢じゃないか。「Two of Us」の最後に柳沢がキメたカントリー風のリックとセイヤが加えたクラッシュ風のフィルが気になった……なんてことはさておき、12月14日にリリースされるニュー・アルバム『FLOWERS』ががぜん楽しみになったのは、筆者だけではないだろう。来年1月からアルバムのリリース・ツアーを開催することを発表したことも含め、この日のステージにはとことん観客を楽しませたい、びっくりさせたい、わくわくさせたいというメンバー達の気持ちが溢れていた。その中でも一番わくわくさせられたのが、「コロナにかかっちゃってフジロックに出られなかったから、大阪城ホールもそうなんだけど、みんなと演奏できるのがうれしくて、みんなと会えるのもうれしい。ほんとに来てくれてありがとう。幸せです!」と柳沢が語った後に牧が言ったこの言葉だった。
「この齢になって、がむしゃらに進んできた道がなんだか楽しく旅をするような感覚になってきました。いろいろなアクシデントもあるけど、それも今日みたいな日が来るためにあったことだと思います。今日、そして、大阪城ホールもそうだけど、(サポートを含めた)7人が集まってやれてることが幸せだと思います。こんなにたくさんの人達に見てもらえることが幸せすぎて、終わりたくない! あと1日足してちょうだい。武道館! これはみんなとの次の約束だ。日本武道館で2デイズやろうぜ!」
その約束を果たすためにバニラズは、ここから一歩一歩、歩みを進めていくのだろう。その日が来ることを楽しみにしている。この日、ここにいる全員にそう思わせたことに意味がある。
「まだまだ夢を見て、旅を続けて、いい人生にしようよ!」(牧)
最後に演奏したのは、バニラズの転機になったという「LIFE IS BEAUTIFUL」。持ち前のポップ・センスとオプティミズムがバニラズのロックンロールに溶け込んだ人生讃歌を、牧曰く“バニラズ・セブン”が演奏するリッチでエネルギッシュなアンサンブルが胸に染みる。大団円を印象づけるように紙吹雪が舞い上がる中、観客の手拍子が鳴りやまなかった。
セットリスト
1. RUN RUN RUN
2. Hey My Bro.
3. カウンターアクション
4. クライベイビー
5. お子さまプレート
6. サイシンサイコウ
7. 青いの。
8. ペンペン
9. ラッキースター
10. 新曲
11. 雑食
12. Do You Wanna
13. 倫敦
14. one shot kill
15. エマ
16. 平成ペイン
17. アメイジングレース
18. マジック
EN1. 新曲
EN2. Two of Us feat. 林萌々子
EN3. LIFE IS BEAUTIFUL