2026.04.13 18:00
2026.04.13 18:00
役にはビジュアルから入るタイプなんです
──でも、花梨って単純な悪役でもない気がしたんです。たとえば、瑶太が柚子を燃やそうとするときも、すごく怯えていますよね。悪役なら一緒に面白がっていた気がして。
そこは監督とも相談したところでした。いい気味だと笑っているほうがいいのか、怖がっているほうがいいのか考えてみたんですけど、やっぱり実の姉なので、死んでしまったらどうしようという不安がよぎると思ったんです。それで、思わず瑶太を止めに行くというお芝居になりました。
あやかしの花嫁になったと言っても、花梨自身はただの人間なんですよね。あやかしがどれほど強大な力を持っているかもよくわかっていなかった。きっと瑶太があれだけ強い力を使っているところを花梨は見たことがなかったと思うんです。あそこは、あやかしとしての瑶太を見て、瑶太に恐れを抱くという表現になればいいなと考えました。

──花梨のインパクトあるビジュアルは、瑶太に花嫁として見初められてからああなったという解釈ですか。
そうです。あやかしは普通の人間とはちょっと違うビジュアルをしているので、花梨が花嫁としてそっちに寄せていったというイメージです。
──強めのアイメイクだったり、真っ赤なリップだったり、ああいうビジュアルが役を膨らませてくれたところはありますか。
ありますね。もともと私はその役になった自分の姿を鏡で見て、そこから役に入るタイプなんです。花梨は、あやかしのお嫁さんであることにプライドを持っている。その自信の強さを表したビジュアルをスタッフのみなさんがつくってくださいました。だから私もこのビジュアルに負けない強い目力と、人に媚びない表情のつくり方を研究していました。
──花梨って、髪型も瑶太の好みに合わせていたり。一生懸命瑶太の求める自分になろうとしているんだなというのが、ちょっと物悲しくも映りました。
花梨の家は、花梨が瑶太の花嫁であることで回っている。彼女は、家族を養わなければいけない立場であり、その状況から逃れることはできない。だからこそ、本来の自分ではなく、瑶太の好きな自分になろうと努力しているんです。本編でそこまで詳しく描かれているわけではありませんが、そこが花梨のいちばん苦しい部分なんですよね。

──柚子のカバンの中身をぶちまけるときも、「ずるいよ好きな服着て好きなことして」と言うじゃないですか。そういう花梨の胸中を慮ると、あの台詞も結構辛いものがあるというか。
たぶんそこは花嫁としての抑圧もありますが、やっぱり二人きりの姉妹ということで、きっと花嫁になる前から花梨はお姉ちゃんに対して強い嫉妬心があったと思います。この作品における花梨は、嫉妬の象徴。私はこれだけ我慢しているのに、お姉ちゃんはなんでも自由にできる。そういう怒りと嫉妬が、彼女の中に渦巻いていたのかなって。
──以前、悪役を演じるときは、役の中にある正義を見つけることを大事しているとおっしゃっているのを読みました。と考えると、花梨という一見悪役のようで彼女なりの筋がある役どころは、片岡さんのポリシーに合った役だったんじゃないかなと思いました。
普段は役なりの正義を見つけるようにしているんですけど、今回に関しては彼女の持っている正義すらも悪に見える役づくりを意識していました。
──というのは、なぜでしょう。
作品全体を見たときに、花梨ってやっぱりめちゃくちゃヒールじゃないですか。それを悪に徹するのではなく、彼女なりの正義があることもわかってほしいというふうに演じることはできますが、このお話の主人公は、玲夜であり柚子。花梨が悪役をまっとうしたほうが、二人の愛が美しく見えると思ったんです。だから今回はヒールという彼女のあるべき立ち位置に寄せていったほうがいいんじゃないかと監督と事前にお話をさせていただきました。

──瑶太は瑶太でちゃんと花梨を大切に思っている気がしました。瑶太と花梨の愛と、玲夜と柚子の愛。同じ愛でも何が違ったんだと片岡さんは解釈しましたか。
そこについては、この2組のカップルを180度違うカップルとして描きたいと監督もおっしゃっていて。玲夜と柚子は、一緒にいることでお互いがポジティブになれる二人。瑶太と花梨は一緒にいることで、もう自分たちしかいないと思い込んでどんどん破滅に向かっていく。二人の愛は本物なんだけど、ちょっと歪んでいる。そこが大きな違いなのかなと思います。
──なるほど。本来愛とは利他的なものであるはずなのに、瑶太と花梨の愛は利己的なんですね。
そうですね。あやかしの頂点に立たないといけないという気持ちが強すぎて、逆方向に進んでしまっているような二人なのかなと思いました。
──ただ、物語全体を通して最低だなと思ったのは両親ですけど(笑)。
私も台本を読んだときに、いちばん悪いのは両親じゃないかなと正直思いました(笑)。ちょっとひどいですよね。撮影中も両親と対峙しているシーンで、許せないなって怒りがこみ上げてきました。
──それこそ、両親はこの作品における欲望の象徴なのかなと。
ただ、私はあの両親を見て人間だなと感じました。まだ22歳なので、人間とはどういうものかを語れるような立場ではありませんが、人間って欲深くて身勝手という印象があります。だから、あっという間に態度を変える両親を見て、そういうものだと思ったし、私はああなりたくないとも思いました。
──ただ、そういう欲深さこそが人間臭さであり、人間の魅力という見方もできます。
そうですね。あの両親はちょっと違いますけど(笑)。欲深くて身勝手なところがあるのは花梨も同じ。そして、彼女は自分自身でそれを制御ができていない。そんな不安定なところが魅力でもあるなと、台本を読んだときに感じました。

──片岡さんは、ご自分のことを欲深いと思いますか。
あんまり思わないかもしれないです。もちろんお仕事に対する欲はあります。ただ、じゃあ具体的に何がほしいかと言われたら、まだ自分でも明らかになっていなくて。
──たとえば、表現者としてどうなりたいという欲はどうですか。
うーん……唯一無二の表現者になりたいです。それはずっとありますね。あとは異次元な人間でいたい(笑)。異次元って言葉で説明すると異次元じゃなくなる。だから、そうなれる日まであえてそれがどういうものかは言葉にはしないでおこうと思います。
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