映画『ストリート・キングダム』と共鳴した生き方と矜持とは
「信念を貫き通すのは、俳優の道を外れないため」若葉竜也が最新出演作で肯定できた過去の選択
2026.03.28 18:00
2026.03.28 18:00
心の底からピュアな人なんだと思う。商業主義的な芸能界で生きるには、あまりにも純粋で。その美しい魂を誰にも売り渡すことなく戦い続けているから、彼を見ていると胸の奥がきゅっと震えるのだろう。
俳優・若葉竜也。多くのシネフィルが愛する才能が、初めて台本を読まずにやりたいと熱望した映画が公開された。それが『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』だ。
00年代の傑作音楽映画『アイデン&ティティ』を手がけた監督・田口トモロヲ×脚本・宮藤官九郎のタッグが再結成。1978年、“東京ロッカーズ”と呼ばれるムーブメントを起こした若者たちの熱狂と蹉跌を描いた、新たなる青春音楽映画がここに誕生した。
若葉が演じるのは、“東京ロッカーズ”の一角を担うTOKAGEのボーカル・モモ。売れ線に乗ることを嫌がり、ただ自分の好きな音楽を追い求める姿が、若葉竜也の生き様と交差する。
一見すると、ぶっきらぼう。でも本当は誰よりも愛情深く優しい。そんな若葉竜也の言葉が、今、鳴り響く。

ファイティングポーズをとれと『アイデン&ティティ』に言われた気がした
──若葉さんは本作のどんなところに惹かれて出演を決めたのでしょうか。
僕にとって『アイデン&ティティ』は、10代のときに観て衝撃を受けた映画でした。その『アイデン&ティティ』チームと一緒に映画をつくれるということが、何よりも大きかったです。
お話をいただいて即答でした。たぶん初めてじゃないかな、台本も読まずにやりたいと言ったのは。
──『アイデン&ティティ』の何にそんなに衝撃を受けたのでしょうか。
僕が『アイデン&ティティ』を観たのは、吉祥寺バウスシアターという劇場でした。当時チャリで行ける範囲に住んでいたので、チャリで駆けつけて。その頃は、これからも俳優を続けるのか続けないのか、迷っていた時期。そういった自分の憂鬱やフラストレーションが、映画に全部昇華されていた。
観終わった後、帰り道の景色が全然違ったんですよね。こんな映画だったら出てみたいと思った。いつかどんな形でもいいからこういう映画に携わりたいと思って走り続けてきて、ようやく叶ったのが、この『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』なんです。

──若葉さんといえば大衆演劇の一座に生まれ、演じることが日常の生活に溶け込んでいたと思います。その中で、俳優ではない道を模索する瞬間があったということでしょうか。
俳優以外だったらなんでも良かったんですよ。ただ、俳優になりたくなかった。ずっと変な仕事だな、やりたくないなと思っていて。テレビドラマに出てみても、そこが自己顕示欲を満たす場に見えた。あいつは誰よりも売れているとか、誰々は売れていないとか、そんな価値観のほじくり合いしかないなら自分はいいやって興味がなくなったんです。
ただ、映画は好きで、映画に関しては特別な意識を抱いていたから、よく吉祥寺バウスシアターには通っていました。その中で『アイデン&ティティ』が今度上映するよというのを見て。僕はゴイステ(GOING STEADY)とか銀杏BOYZを聴いて育った世代なんで、峯田(和伸)さんが出るなら観に行くしかないなと思ったんです。
──『アイデン&ティティ』は、俳優という仕事に希望を見出せなかった若葉さんの心の何を変えたのでしょう。
好きなことだけを追求すればいいんだと、戦っていいんだということを教えてくれたのが、『アイデン&ティティ』でした。ファイティングポーズをとれ、好きな事だけをやる覚悟を持て、と言われた気がしました。
──若葉さんが演じたモモは、実在するバンド・LIZARDのモモヨをモデルとしています。ライブパフォーマンスであったり、モデルに寄せている印象を受けましたが、この役にどうアプローチしていったのか聞かせてもらえますか。
あくまでモモとモモヨさんは別人だと切り分けていました。ただ、モモヨさんのライブ映像はもちろん拝見しましたし、音楽もめちゃくちゃ聴き込みました。その中でインプットされたものが自然発生的に出てきたというか。モモヨさんに寄せようと計算していたわけではなく、練習しているうちにああなりました。
ライブ映像も全部が残っているわけではなくて。モモヨさんが映ったと思ったら、カメラが別の方向に向いていってモモヨさんがいなくなったり。だからそこから先は自分で想像するしかない。残されたものを指針にしたところで、答えはカメラの前に立ってる今この瞬間しかないから。結局は、1から自分で人物造形しなきゃいけないよなという点では、他の役と違いはなかった気がします。
──記録として残されているモモヨさんを見て、どういう人だという印象を受けましたか。
笑顔の写真もいっぱい残っているんですけど、ちょっとどこか寂しいムードがする人なんですよね。その寂しさは台本を読んだときにモモにも感じたことで、そこは二人の共通項として持っておこうというのはありました。

──モモヨさんご本人にはお会いになっていない?
会ってないんです。今、入院されていて(取材は1月中旬に実施)。会いたいですけどね。モモヨさんも会いたいと言ってくださっているみたいで。
──Xでモモヨさんが「TOKAGEのモモとの出会いが一番の楽しみ」とつぶやかれていました。
うれしいですね。照れくさいですけど(笑)。きっと撮影中にお話を聞いていたら影響を受けていたと思うので、今だから話せる話みたいなのを聞いてみたいです。
次のページ




