黒羽麻璃央、蓮佛美沙子らと浮き彫りにする現代人の苦悩とは
髙木雄也が全身全霊で体現する“叫び”にあなたは何を思う?舞台『ジン・ロック・ライム』開幕
2026.03.12 20:00
2026.03.12 20:00
芸術を生み出すのも、人間であるという本質
目の前で起こっているのはフィクションだ。しかし観劇中、登場人物たちとその演じ手とが何度もダブる。ジンたちが抱えているような苦悩を、この作品の出演者たちも抱えているのではないか。そう観客に気づかせるのが、本作のひとつの狙いなのだろう。もちろん、各キャラクターと俳優がイコールで結ばれているわけではない。本作が描いていることに関して、髙木は会見で「ほとんど共感できてしまった」と答えたが、「これが僕の気持ちだと受け止められてしまうんじゃないか。そういう怖さがあります」とも述べていた。

共感はできるが、自分とジンはまた違う。髙木はこう明言していた。非常に重要なポイントだ。芸能界に入って一番良かったことは何かと会見で聞かれた彼は、「Hey! Say! JUMPのメンバーと同じ時代に出会えたこと。彼らがいなければ、この作品だってできなかったかもしれない」と答えていた。この発言は、芸能界で闘い続けてきた髙木個人の本音だろう。
芸能界という華やかな世界を描いているものとあって、特別な世界のお話のように感じる観客もいるかもしれない。たしかに芸能界は特殊だが、そこに生きる人々は決して特別ではない。私たちと同じく現代社会を生きる人間であり、その内面を本作は赤裸々に描いているのだ。彼らのことを自分たちとは違う人間なのだと決めつけてしまっては、この作品と観客の関係を、「表現」と「消費」の関係性に終始させてしまう。それでは本作に据えられたテーマにもうまく触れられない。


髙木たちが表現しているのは、この演劇作品が描こうとしているのは、アーティストの苦悩ではなく人間の生きる姿だ。苦しみながら、もがきながら。リアルタイムでドラマが紡ぎ出されていく演劇だからこそ、オーディエンスに訴求できることがある。改めてそう感じられる作品だ。私たちに夢や希望を与え、愛と平和について考えさせてくれるのが、アートやエンターテインメントの力。これらを生み出しているのもまた、私たちと同じく人間なのだ。
会見時に蓮佛が語った「幸せそうに見えている人は、果たして本当に幸せなのか。その内実は違うのではないか。そのことを生々しく描いた作品だと思います」という言葉が響いてくる。山本の作劇と白井の演出、曽我部の音楽、そして俳優たちの力演によって、現代人の内なる苦悩がスリリングに浮かび上がる。そんな2時間だ。
カーテンコール後、再び髙木がステージ上に姿を現した。そして「お忙しい中、ありがとうございました」と謝意を述べたうえで彼は、「じつはみんないろんなことを考えています。それを分かっていただけたら」と自身の想いを口にした。そこにあったのは劇中のジンでもなければ、会見時に笑顔を見せた俳優・髙木雄也でもなく、いまを生きるひとりの人間・髙木雄也の姿だった。表現することに対する彼の誠実な態度とその切実さを、会場にいる誰もがたしかに受け取ったことと思う。しかし、彼のこの態度と想いは、十二分に作品に表れている。ぜひ覚悟して受け止めていただきたい。



