2026.03.03 18:00
2026.03.03 18:00
子役期にキャリアをスタートさせ、俳優として、芸能の世界で生きてきた山谷花純。特殊な世界に身を置いている自覚はあるが、自分は特別な人間ではない。そう口にする彼女の佇まいは自然体で、とてもフラットだ。
そんな山谷が出演した映画『#拡散』は、“ワクチンの是非”をめぐって人々が分断・対立し、真偽不明の情報に誰もが翻弄される、この社会の実像をスリリングに描いた作品だ。山谷はこの作品世界に観客を誘う、非常に重要なポジションを担っている。
私たちの多くが身に覚えのある事象を捉えたこの映画に、山谷はどのように向き合ったのか。等身大の言葉で語ってもらった。

オーディションには何も怖いものはないと思って挑みました
──すごい映画に出演されましたね。
言葉で説明するのが難しい作品ですよね。
──どのポイントをどう言語化するのかで、受け手の捉え方も変わってきそうです。本作とはどのようにして出会ったんですか?
オーディションなんですよ。
──そうだったんですね。
年々、オーディションを受ける機会は減ってきています。年齢が上がってきたというのもあるし、私のこれまでの活動を知ってくださって、お声がけくださる方も増えてきましたから。久しぶりのオーディションだったので、ワクワクしながら会場に向かいました。事務所の先輩で、ずっと大ファンの沢尻エリカさんが出演されることは決まっていましたし、私もこのチャンスを掴みたい。そう思っていました。
──そして掴んだわけですね。
幸運なことに、明希という役が私の元にやってきてくれました。
──オーディションでは何を求められていると感じていましたか?
映画を観ていただいたらすぐ分かると思うのですが、簡単な言葉で説明すると、明希は尖ったキャラクターで、すごくインパクトのある役どころなんですよね。そして、この『#拡散』という作品の主軸となるようなテーマを、一番最初にお客様に届ける使命を持っている存在でもある。
──彼女の存在によって、この物語の世界に誘われ、やがてテーマに触れることとなりました。
だからとにかく、インパクトが必要だと思って。オーディション時点でいただいていた台本から、明希は破天荒なところがありながらも、芯の強さのある女性だというイメージがありました。相手役をスタッフさんが演じてくださったのですが、もみくちゃになりながら挑んでいきましたね。

──それはご自身でコントロールしつつ演じるんですか。それとも、明希として振り切れる感じでしょうか。
もしここで明希役に決まらなかったら、彼女を演じることはもう二度とないわけじゃないですか。するとこのオーディションの30分だけしか、私は明希として生きることができないわけです。この審査の様子が世に出るわけもないですし、何も怖いものはないんですよね。後悔がないように、自分が準備してきたものをお披露目するのがオーディション。そう思っています。だからもう全力です。
──なるほど。
すごく緊張もしたけど、楽しかったですよ。ただ、相手役のスタッフさんには申し訳ない気持ちもあります……。
──その方からすると、山谷さんから何が飛んでくるのか想像もつかないわけですもんね。
そうなんです。

──これはワクチンをめぐる問題を起点とした物語が展開していくもので、真偽の分からない情報に人々が翻弄され、分断・対立していくさまを描いています。2020年にコロナ禍がやってきたとき、まさにこのようなことが現実世界で起きました。じっくりと台本と向き合ってみていかがでしたか?
私たちが見て見ぬフリをしてきた問題を、いま改めて真っ直ぐに提示する作品ですよね。当たり前とされている常識というものに対して、疑いを持ちましょうよと。いまのこの世の中に、そういう呼びかけや、人々に気づきをもたらすような挑戦的な作品だと感じました。
──挑戦的?
はい。中途半端な気持ちではやれない。そう思っていました。
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